株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:此本 臣吾、以下「NRI」)のグループ会社であるNRI社会情報システム株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役社長:小松 隆、以下「NRI社会情報システム」)は、本年3月に、全国の50歳~79歳の男女3,000人を対象としたインターネット・アンケート調査を行いました。シニア世代(ここでは50歳~79歳の層を指す)が抱く「社会のデジタル化」に対する期待や不安、生活の満足度(Well-being)との関係性、マイナンバーカードやさまざまな情報源の利用の実態と今後の意向を調査し、分析しました。
主な結果は、以下のとおりです。
1.「社会のデジタル化」への期待は、シニア世代の中でも大きな差が開く結果に
- 「社会のデジタル化」に期待していると回答したシニア世代は57.9%でした。対して、期待していないと回答したのは32.7%でした(図1参照)。
- 「貯蓄が1億円以上」の世帯の67.3%が社会のデジタル化へ期待していると回答する一方、「貯蓄がない」世帯では43.4%にとどまりました(図2参照)。
- 仕事をしている人の61.4%が社会のデジタル化へ期待しているのに比べ、仕事をしていない人では55.0%と低く、特に、過去に就労経験のない人では、39.2%と大きく下がりました。仕事を通じた社会との接点が、デジタル化への意識に影響を及ぼしていると考えられます(図3参照)。
- 生活や仕事の満足度が高い人(7~8点以上)、反対に満足度が低い人(2~3点以下)は、満足度が中程度の人よりも、デジタル化への期待が強い傾向が見られました(図4参照)。
2.「社会のデジタル化」に期待しない理由に見られるシニアの「不安」と期待分野
- 「社会のデジタル化」に期待しないと回答した人のうち49.6%は、「個人情報が漏洩されるリスクが高くなると思う」を理由に挙げており、「今の生活に不自由はない(37.7%)」、「監視社会になることが不安(31.7%)」、「新しい技術や機器を使いこなせる自信がない(29.6%)」が、それに続きます(図5参照、複数回答)。
- 社会のデジタル化で期待する分野は、「行政サービス(60.5%)」を筆頭に、「医療・ヘルスケア(43.8%)」が続きました。コロナ禍により、行政手続きの電子化、新型コロナウィルス接触確認アプリ、オンライン診療などが、シニア世代の意識に影響を与えたと考えられます(図6参照、複数回答)。
3.マイナンバーカードの取得状況と普及に向けた課題
- シニア世代のうち、55.3%がマイナンバーカードを「取得している(申請中を含む)」と回答しました。今後取得する予定の人を含めると67.2%に及びますが、一方では「取得する予定がない」人も29.1%いました(図7参照)。
- マイナンバーカードの取得の意向と、社会のデジタル化への期待は、強い相関関係があります。社会のデジタル化に「非常に期待している」人のうち、マイナンバーカードを「取得している(申請中、取得予定を含む)」人の割合は、87.3%に及びますが、「全く期待していない」人では41.3%に過ぎません。「全く期待していない」人のうち、マイナンバーカードを「取得する予定がない」人は53.8%に上ります(図8参照)。
- マイナンバーカードを取得する予定がない人の58.2%は、「個人情報の漏洩が心配」を、また48.7%は、「マイナンバーカードのメリットがわからない」を、取得しない理由として挙げています(図9参照、複数回答)。不安を取り除くための意識啓蒙と、効果を実感してもらうための利便性向上の両方の重要性が裏付けられます。
4.シニア世代が利用する情報源の多様性と、SNSの急速な普及
- シニア世代が利用する情報源は、テレビ番組(74.1%)、WEBサイト(62.6%)、新聞(58.3%)を筆頭に、行政の広報誌(45.3%)、知人からの口コミ(38.5%)、家族からの口コミ(31.9%)、新聞折込み広告(31.4%)と続きます。家計の状況に余裕がない人は、余裕がある人に比べて、情報媒体へのアクセスが全体的に少ないですが、WEBサイトは家計状況とは関係なく利用されており、経済的視点ではシニア世代全体に平等に浸透しつつある情報媒体となっています(図10参照、複数回答)。
- SNSの利用はシニア世代に着実に普及しています。特にLINEの利用率は、2015年の12.8%から59.0%へと増加しています。70歳以上の利用率も半数を超え(52.6%)、世代間の格差は縮小傾向にあります(図11参照)。コロナ禍により非対面の情報伝達の必要性が増加したことが、シニア世代へのLINE普及を後押ししたと考えられます。また、LINEの利用は、50歳~70歳代の全ての年齢層で、生活の満足度を0.3~0.6点ほど、引き上げていることもわかりました(図12参照)。
今回の調査から、シニア世代が抱く「社会のデジタル化」への意識は、一人ひとり大きな差があり、利便性を享受できる人とそうでない人の間の格差拡大の可能性が確認できました。「社会のデジタル化」が本来もたらす価値は生活者のWell-beingの達成であり、デジタル化の進展は、生活者の満足度の尺度で測っていくことが今後重要となります。NRIおよびNRI社会情報システムは、デジタル化のあるべき姿を洞察するため、更なる調査研究を行い、豊かな超高齢社会の実現に貢献します。
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図表の出所は、図11の過去データ(2015年~2020年)を除き「変わるシニア世代の就業意識・行動調査 2021年」(NRI社会情報システム)。図11の過去データの出所は、図11に注釈として記載しています。
ご参考(調査概要)
目的: | シニア世代の就業状況や働く意識、さらにはライフスタイル、価値観など行動実態を把握し、今後のシニア就業機会拡大に向けた考察、提言を行う |
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調査名: | 「変わるシニア世代の就業意識・行動調査 2021年」(NRI社会情報システム) |
調査方法: | 野村総合研究所が提供するインターネット調査サービス「TrueNavi」によるアンケート |
調査時期: | 2021年3月(19日配信、24日回収) |
調査対象: | 日本全国の50歳~79歳の男女個人 |
回答者数: | 3000人(2020年に回答した方は今回の対象外)
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注意事項: | 本調査はインターネットを利用しているため、シニア世代の中で相対的にデジタル機器やITサービスを使い慣れた人々が回答していることにご留意ください。 |
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