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野村総合研究所グループ、障がい者雇用に関する8回目の実態調査を実施

2022/12/19

株式会社野村総合研究所
NRIみらい株式会社

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)と、NRI みらい株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:足立興治、以下「NRI みらい」)は、2022年8月から9月にかけて、上場企業1と特例子会社2を対象に「障がい者雇用に関する実態調査」と「障がい者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」をそれぞれ実施しました3, 4(回収数:上場企業151社、特例子会社 207 社)。

これらの調査は、2015 年度から毎年実施しており、8回目の今回は「過去の振り返りと今後の取り組み課題・対応方策」をメインテーマとしています。主な結果とそこから導かれる提言は以下の通りです。

特例子会社は親会社からの関心が希薄になったのではないかという不安や、生産性向上へのプレッシャーを感じている

  • 特例子会社に「5年前と比較して、親会社は特例子会社に対して関心を持っているか」と尋ねたところ、「とてもそう思う」の値は2020年(51.6%)を境に減少に転じ、2022年は44.9%となりました(図1)。また、「親会社とは、特例子会社のビジョン・目標を共有できているか」に対する回答のうちの、「とてもそう思う」の値は2019年(47.6%)から2022年(42.4%)にかけて全体として減少傾向にありました。著しい変化ではないとはいえ、特例子会社は親会社からの積極性の低下を感じ取り、不安を抱えている可能性があります。
  • 法定雇用率の引き上げ5や、民間企業に対する合理的配慮の義務化6など、障がい者雇用を取り巻く環境の変化を間近に控え、障がい者雇用の現場において、従来よりも生産性向上を追求するプレッシャーがかかっていることがうかがえます。特例子会社に「障がい者を採用する際に重視していること」を尋ねたところ、「本人の職務遂行能力」を挙げる割合は、2016年(34.4%)から上昇傾向をたどり、2022年には49.5%に至っています(図2)。そのほか、「障がい者の特性に合わせて、仕事の内容を調整することに努めているか」に対して「とてもそう思う」と答えた割合は2020年(63.8%)から2022年(54.1%)にかけて減少するとともに(図3)、「障がい者の雇用管理についての課題」として「障がい者の作業能力の向上」を挙げる割合も2017年(33.9%)から2022年(19.2%)へと減少しました(図4)。「障がい者の作業能力の向上」は課題意識において上位から9番目と低い位置づけになっています。障がい者の能力が高い水準となったために業務の調整や課題意識は必要なくなったとも考えられますが、反対に、採用や育成に対するスタンスを変え、生産性を高める志向を強めたと見ることもできるでしょう。

特例子会社は、「親会社に支えられる立場」から「親会社と支えあう立場」を志向

  • そのような中で、特例子会社の姿勢に変化の兆しが表れてきています。経営的にも、業務内容や機能の面でも、親会社に支えられてきたこれまでと異なり、特例子会社がより主体的に活動することを志向している様子がうかがえました。
  • 例えば、「新規事業・サービス・商品の開発」や「売上拡大に向けた社外・グループ外営業」を経営課題として挙げる割合が増加している点に変化が見えます(図5)。また、親会社やグループ会社から受注する業務として、「親会社グループの方針のもと、親会社と一緒に企画、創造する業務」を挙げる割合は25.4%となり、特例子会社が企画機能を発揮していることがうかがえます。現状、親会社・グループ会社からの売上が全体の75%以上を占める特例子会社が8割を占めているものの、親会社と特例子会社の関係性を、親子からパートナーへと変え、親会社への新たな貢献の仕方を模索する姿がうかがえます。

特例子会社には、合理的配慮の義務化を見据え、親(グループ)会社へのリーダーシップの発揮が求められる

  • これまで特例子会社や障がい者雇用部門は、障がい者の受け入れや担当業務の開拓などに注力するとともに、勤務スタイルなどの多様化に取り組んできました。これらの取り組みを通じて、障がい者雇用に関するノウハウ・経験を蓄積してきた特例子会社では、グループ全体に対して、障がい者の雇用面でリーダーシップを発揮したいという機運が高まっています。具体的には、「障がい者の働き方・制度などに関する合理的配慮の提供ノウハウを、親会社あるいはグループ会社に浸透させるため、積極的にリーダーシップを発揮している」という姿について、59.6%の特例子会社が「ありたい姿」として回答しており、上場企業の回答を約20ポイントも上回っています(図6)。2024年には、全事業者を対象に合理的配慮の義務化が控えているため、特例子会社が合理的配慮の提供に関してリーダーシップを発揮することは、親会社やグループ会社への貢献機会となります。
  • 労働力人口の減少や、SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりなど、企業を取り巻く社会環境が変化し、企業は経済価値だけではなく社会価値も求められています。これまで特例子会社等で培ってきた障がい者雇用に関わる能力や経験が、合理的配慮の提供義務化への対応を契機として、企業グループが外部環境変化に柔軟に対応し、企業価値を高めるための主要な原動力の一部となることを示唆していると考えられます。

NRIとNRIみらいでは、これからも障がい者雇用の実態や課題とあるべき姿に関して、継続的な調査を実施し、結果の公表と提言を行っていきます。

図1 5年前と比較して、親会社は特例子会社に関心を持っているか(単一回答)

出所:
「障がい者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」
(NRI、NRI みらい実施、2022 年)
注)設立5年未満の企業は、「5年前」を「設立時」と読み替えて回答

図2 特例子会社が障がい者を採用する際に重視していること(複数回答、抜粋)

出所:
「障がい者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」
(NRI、NRI みらい実施、2022 年)
注)「協調性をもって周囲と交流することができること」は、2015年のデータに欠損があったため描画せず

図3 障がい者の特性に合わせて、仕事の内容を調整することに努めているか(単一回答)

出所:
「障がい者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」
(NRI、NRI みらい実施、2022 年)

図4 障がい者の雇用管理についての課題(複数回答、抜粋)

出所:
「障がい者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」
(NRI、NRI みらい実施、2022 年)

図5 特例子会社の経営についての課題(複数回答、抜粋)

出所:
「障がい者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」
(NRI、NRI みらい実施、2022 年)

図6 親会社やグループ会社への障がい者雇用支援・ノウハウ提供に関する取り組み(複数回答)

出所:
「障がい者雇用に関する実態調査(「上場企業向け調査」)」、
「障がい者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」
(NRI、NRI みらい実施、2022 年)
注)「現状あてはまること」と「今後取り組みたいものや、ありたい姿として、あてはまるもの」は任意回答のため、
サンプル数は一致しない

調査概要

<調査の概要> 上場企業向け調査 特例子会社向け調査
調査名 障がい者雇用に関する実態調査 障がい者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査
調査期間 2022年8月10日~9月16日 2022年8月10日~9月16日
調査方法 配布・回収ともに、郵送ならびにメールで実施 配布・回収ともに、郵送ならびにメールで実施
調査対象 日本取引所グループに上場している企業 3,641社 特例子会社 555社
有効回答数(回答率) 151社(4.1%) 207社(37.3%)
  • 1  

    日本取引所グループのプライム市場、スタンダード市場、グロース市場、Tokyo Pro Marketのいずれかに上場している全企業をさします。ただし、東証外国部、REIT(投資法人)、日本銀行、野村総合研究所、および2022年7月15日時点で上場廃止となっている企業を除きます。そのため、毎年の調査で対象企業は一致しません。

  • 2  

    障がい者の雇用に特別な配慮をし、法律が定める一定の要件を満たした上で、障がい者雇用率の算定の際に、親会社の一事業所と見なされるような「特例」の認可を受けた子会社を指します。特例子会社は別法人のため、障がい者のニーズやスキルに応じた環境整備や制度設計が可能です。特例子会社は増加を続けており、2021年6月1日時点で562 社となっています(厚生労働省「特例子会社一覧」、「「特例子会社」制度の概要」)。

  • 3  

    本プレスリリースでは固有名詞や法令等の引用を除き、「障がい者」の表記を用いました。

  • 4  

    設問によって回答条件を設けているため、各設問の N 数と有効回答数は一致しません。

  • 5  

    民間企業における障がい者の法定雇用率は、2022年現在2.3%ですが、2023年の見直しで引き上げられることが予想されています。

  • 6  

    障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の改正が2021年に成立し、2024年6月までに施行されます。この改正によって、これまで民間企業にとって努力義務であった合理的配慮の提供が義務化されました。

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL:03-5877-7100
E-mail: kouhou@nri.co.jp

本件に関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 ヘルスケア・サービスコンサルティング部 若林、高田、田中、池田
E-mail: syogai-koyo2022@nri.co.jp