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野村総合研究所、2028年度までのICT・メディアに関連する主要7産業と19の国内市場への洞察を発表

〜デジタル化促進による産業の変革と市場の融合に対し、どう備えるべきか〜

2022/12/22

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本 臣吾、以下「NRI」)は、2028年度までのICT(情報通信技術)とメディアに関連する主要な7つの産業(通信サービス/デバイス/メディアと広告/マーケティング/データ流通/プライバシーとセキュリティ/HR Tech1)を取り上げ、そのうち19の国内市場における動向分析と市場規模の予測を行いました。

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、消費者に行動変容が生まれ、デジタル化が進みました。その結果、各市場が変化・融合してきています。従来は、市場区分ごとに詳細な分析を加えていましたが、昨今の情勢を踏まえ、より大きな視点で産業と市場の全体を俯瞰することを望む声が増えています。

今年度よりリニューアルした書籍「ITナビゲーター2023年版」では、各産業がどのような変化を遂げるのか、そしてそのために各企業がどのように備えるべきかを、それぞれの産業における未来の観点から俯瞰的に洞察しています。個別の市場予測を踏まえ抽出した各産業の傾向や課題とその克服策等について、示唆を導出しました。

主要な7つの産業における主な洞察は以下のとおりです。今回の分析や市場予測の詳細は、東洋経済新報社から12月23日に発売される「ITナビゲーター2023年版」をご参照ください。

1.通信サービスの未来

事業者間競争、料金プランは新たなフェーズへ

  • 既存料金プランからの乗換えが一巡し、今後の事業者間競争のキーワードは「楽天モバイルの低容量有料化による影響」と「大規模通信障害への対策」。「格安スマホ」全体の契約数は増加傾向となる見込み。
  • これまでの従量制に加え、保証される通信の品質によって料金が決まる、新たな料金プランが登場する可能性がある。

携帯電話における各種手続きにもオンラインの波が押し寄せる

  • 各種手続きのオンラインシフトが加速する中、オフラインでの手続きに慣れたユーザーに向けた「デジタル時代のあるべきオフラインチャネルの整備」が欠かせない。
  • オンラインシフトによって、携帯電話販売代理店の収益構造悪化は避けられない。デジタル時代におけるオフラインチャネルの必要性、役割、収益確保策を検討していかなければならない。

非通信領域の競争環境も変化。通信事業者間競争からGAFAM2などのIT企業との競争へ

  • 従来の通信事業者各社は、ポイントや決済サービスで経済圏を構築し成長してきた。携帯電話・スマートフォンを1人1台持つ時代になったことで、競争相手は同じ通信事業者だけでなく、GAFAM等、デジタル世界で圧倒的なシェアでサービスを展開する事業者へと変化している。
  • 通信事業者各社は料金値下げや人口減による影響から、非通信領域へ成長の柱を移しつつある。成長目標を達成するためには、GAFAMとの競争か協力かを選択する必要があり、前者を取る場合はGAFAMではカバーしきれない「リアル」の接点を強みとすべきである。

5Gから6Gへ、通信技術の進化は止まらない。それでも本質を突き詰められるかが重要

  • 6Gでは、5Gに比べさらに通信速度が向上するほか、遅延減少、消費電力抑制の技術も含まれている。しかしながら、通信技術の進化と同時にユーザーニーズの見極めも重要となる。通信事業者は提供価値を一方的に押し付けるのではなく、正しく見極めた価値提供を行う必要がある。
  • 5GSA(Standalone)・6Gの時代において、料金プランやチャネル、非通信系のサービスを含め、新たなサービスの登場が見込まれる。サービス開始はゴールではなくスタートであり、継続的に価値を高められるかが重要となるだろう。

2.デバイスの未来

携帯電話端末は成熟し「スマートフォンの次」となる新たなデバイスの登場が期待される

  • スマートフォンの買い替えサイクルが長期化しているとはいえ、今後スマートフォンが不要になるわけではない。むしろ、スマートフォンはいまやライフラインとなっており、これからの携帯電話端末は長く使えてストレスがないことが求められる。
  • 消費者に新たな刺激を与えてくれるデバイスの登場も待ち望まれている。いわゆる「スマートフォンの次」には「没入性」やコミュニケーションにおける「共有性」が求められるだろう。

携帯電話端末市場が縮小する中、携帯電話端末メーカーや販売代理店は新たな収入源が必要

  • 今後の携帯電話端末メーカーのキーワードは「廉価版スマートフォンのラインアップ拡充」と「スマートウォッチなどの周辺機器への進出」である。スマートフォンへの投資を抑え始めた消費者は、今後、スマートウォッチやスマートスピーカー、スマートホーム家電、xR3機器等、「新しい価値を体験できる他の端末」への投資を進めるだろう。また、携帯電話端末の販売代理店では「新サービスの展開」や「中古の携帯電話端末販売」が進む。高齢者向けのスマートフォン教室や修理など、周辺の顧客ニーズに対応したサービスの拡充や、整備やサポートが充実した中古品を販売するしくみを積極的に構築することが必要となる。

半導体業界はIOWN4構想を足がかりに復権を狙いたい

  • 半導体に関しては、IOWN構想を足がかりに新領域での復権のチャンスもあり得よう。半導体はあくまで中間消費財であることを意識し、最終製品メーカーと連携し、その利用イメージを共有しながら開発する必要がある。

3.メディアと広告の未来

通信(配信)が放送を侵食し、市場が融合する

  • コンテンツの伝送路が放送から通信(配信)へとシフトする動きはさらに加速する。視聴するスクリーンはテレビに限らず、スマートフォンやタブレットにもなり、タイパ(タイムパフォーマンス重視)による倍速視聴といった新たな消費スタイルも配信市場の成長を後押しする。
  • 有料放送サービス、テレビ放送広告(民放)、公共放送(NHK)による放送市場は苦戦を強いられる。メディアと広告の市場全体は6兆1582億円から6兆7263億円へと拡大するが、放送市場は3兆4433億円から3兆1173億円へと縮小する。通信と放送の融合の実態は、通信(配信)が放送を侵食することである。

メディアビジネスの主戦場は放送局からポータルへ

  • ネットでテレビを観る「TVer」や「Paravi」はユーザー数を伸ばしており、広告収入も拡大している。ワールドカップを配信した「ABEMA」は2000万人を超える視聴を実現し、ネットでテレビを観ることに大きな成功体験をもたらした。
  • 将来的には、メディアコンテンツビジネスの主戦場はテレビ放送から配信サービスに移る。特に、テレビ発の強いコンテンツを集めたポータルサイトの活況がしばらく続くと見込む。

コンテンツにお金を払わない日本人

  • 巨額の投資を背景に急成長を続ける有料動画配信サービスだが、ユーザーの拡大と収益化には苦戦している。配信と放送の別を問わず、国内の有料動画サービスの限界はおおむね500万ユーザーという壁がある。成長の踊り場がみえてきており、更なる成長には新しい一手が必要になる。
  • 米国の人口は日本の3倍ながら、「Netflix」のユーザー数は10倍以上である。広告モデルで運営される地上波放送を通じ、無料でおもしろいものをあたりまえに視聴できた日本では、コンテンツにお金を払う行為への抵抗が強い。

広告は「共創」の場へ

  • 年率10%以上の成長を続けてきたインターネット広告市場だが、個人情報保護の観点から、ターゲティング広告5を打つことが難しくなってきた。反応(クリック)のみをもって広告効果とするようなターゲティング広告の意識は、広告主のブランドイメージを毀損するリスクもあり、改められつつある。
  • 広告そのものを自社コンテンツとし、プロダクトやブランドに共感を得て、ファンを育成する接点とするという発想が広がっており、オウンドメディアやコミュニティ形成等の施策が注目されている。6兆円ものメディア・広告の市場を、印象の残らないバラマキ広告へ投じるのではなく、良質なコンテンツの制作費へと転換し、文化と生活の向上に資する産業へと成長させることが求められる。

4.マーケティングの未来

1億2000万人総メディア化時代への突入

  • だれでも気軽に情報発信できるSNS中心の現代は「1億2000万人総メディア化時代」に突入している。いまの企業マーケティングの特徴は、生活者に「相対的ニーズ(他者の状況・推薦・評価などを基準とするため、相対的に変化しやすいものの、捉えやすいニーズ)」を生み出すことにある。売れる商品を決めるのはこれまで「企業」であったが、マーケティングの主役が「企業」から「個人」へと変化している。
  • 一方、SNS利用が最も盛んで親しみをもっているはずの「Z世代(15歳〜25歳と定義)」の半数程度が「SNS疲れ」を起こしているなど、企業がこれまで、相対的ニーズを刺激し続けてきた負の側面も表面化している。これらの兆候は、SNSを中心としたマーケティング活動をそのまま続けることへの警鐘ともいえる。その対応策の1つとして、相対的ニーズの対極である「絶対的ニーズ(自己の絶対的な価値観を基準とし、相対的に捉え難いが変化しにくいニーズ)」への訴求が考えられる。「絶対的価値の保有(生活者・社会に対する存在意義の打ち出し)」と「ストーリーテリング(物語のある生活者との連続的な接点)」の2点がポイントである。
  • いずれのニーズにおいても、従来のデモグラフィック情報(性・年代等)だけでなく、サイコグラフィック情報(習慣・価値観等)による顧客理解が重要になる。後者の取得は第三者からの提供データを活用することが主流であったが、「3rd Party Cookie規制」などを受け、自社顧客データ(1st Partyデータ)を重視する傾向が強まっている。
  • 1st Partyデータの取得・活用のため、「CDP(Customer Data Platform)」の導入が増えているが、データ分析から導き出される統計学的マーケティングだけでは、聡明な現代の生活者には、考えの粗さが見透かされてしまう。そのため、企業の従業員自身が、自己の絶対的価値観で、自社商品・サービスの本質的な価値を語れるようになるための人材育成も並行して行うことが、もう1つの重要な視点となる。

5.データ流通の未来

GAFA6へのデータ集積が進み、プラットフォームが競争環境やルールに対する決定権を握る

  • GAFAは高いシェアを獲得することでデータの発生源を押さえ、そこから生じる大量のデータを蓄積・活用してビジネスを拡大している。さらに、インターネット上で獲得した競争優位性をてこに、IoT機器などを通じてリアル空間(自動車関連、スマートホーム、ウェアラブル端末など)でのデータ集積も進めている。GAFAは、プラットフォームに依存する全ての消費者や事業者に対して強力な交渉力を保持し、競争環境やルールに対する事実上の決定権を握っている。

GAFA規制により、GAFAに集積するデータの開放が期待される

  • 巨額な制裁金だけでなく、GAFAに対する規制強化に向けて新たな法整備が急速に進む。2022年に可決されたEUの「デジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)」と「デジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)」は、GAFAを含む巨大プラットフォームを対象とする法律である。
  • GAFA規制では、新規参入を促進するためGAFAが囲い込んでいるデータやユーザーの流動性を高める施策も進む。これらは「データポータビリティ」や「インターオペラビリティ」と呼ばれる。

Web3により、データ流通のアーキテクチャーそのものの変革が期待される

  • 2020年代になり、GAFAによる支配に対抗する概念・しくみとしてWeb3が注目を集める。Web3上では、取引に際してGAFAのようなプラットフォームは必要なくなり、ブロックチェーンを使うことで、個人がデータを所有・管理し、個人同士で自由につながり、交流・取引ができる可能性がある。

6.プライバシーとセキュリティの未来

プライバシーガバナンスが必須となり、プライバシーTech7の活用が進む

  • 個人情報保護法のグレーゾーンにおけるデータの取扱いに起因する炎上事件を予防するには、プライバシーガバナンスの構築に取り組むことが重要である。プライバシーポリシーを消費者とのコミュニケーションツールとして捉え、プライバシーを尊重し、データ活用を進めている姿勢を十分に伝える必要がある。
  • プライバシーガバナンスをめぐる課題に対し、その対策の効率化・高度化を支援するツール「プライバシー Tech」の活用が進む。

量子コンピュータの進化により攻撃や脅威が多様化し、耐量子計算機暗号を実装したセキュリティ対策が進む

  • 国家間で量子技術の獲得・開発競争が激化している。日本でも内閣府の「量子未来社会ビジョン」において、「量子・古典ハイブリッド計算システム」が、産業の成長・社会課題解決のための有力候補とされている。
  • セキュリティにおいて、量子コンピュータによる新たな攻撃により既存の暗号が危殆化すれば、情報システムは新たな攻撃や脅威にさらされ、社会的混乱を招く可能性がある。今後は、耐量子計算機暗号を実装したIT分野の製品・サービスや、量子暗号通信や量子コンピュータを高度に組み合わせたセキュリティ製品・サービスにより、量子コンピュータによる新たな攻撃や脅威への防御が高まる可能性がある。

7.HR Techの未来

生産年齢人口の減少を背景に、高まるHR Techへの期待

  • 生産年齢人口の大幅な減少により、現在の日本の製品・サービスの品質水準は維持できなくなると予想される。そこで「一人ひとりが適性や志向にマッチした仕事に就き、そこでいきいきと働き続けられる状態」を実現し、労働生産性を高めるための手段として、HR Techが注目される。
    今後HR Techは、人事部門での活用にとどまらず、「事業部門の課題をHR Techで解く」アプローチも増加するとみられ、そのためのデータ整備を行うことが重要となる。

人事・組織的課題と直結した福利厚生ソリューションのあり方が求められる

  • 企業が会費を支払うことで従業員が各種ベネフィットを得られる福利厚生ソリューションは、認知の低さから社員に十分に利用されていないケースが多数存在する。
  • 健康経営、コミュニケーション活発化、エンゲージメント向上などの人事・組織的課題の解決策として画一的な提供ではなく従業員ニーズを見極めながら選定する必要がある。

ダイレクトリクルーティングという新たな採用が、データ拡充によってさらなる普及へ

  • 求職者からのコンタクトを待つ従来のPull型ではなく、企業側からアプローチするPush型の採用(ダイレクトリクルーティングサービス)が普及しつつある。これは、採用したい人材に直接アプローチできるメリットはあるものの、採りたい人材の要件をユーザー企業側が十分に定義できていないのが課題である。

エンゲージメント管理の強化が事業継続性や業績向上へつながっていく

  • エンゲージメント管理ソリューションは短期的な効果実感が難しく普及は十分ではないが、離職阻止のみならず業績向上の観点でも重要性が高まっている。
  • ユーザー企業がエンゲージメントの観点で欠けているものが何か、どの手段で解決できるか、解決できた際に何が得られるかについて、一連のソリューションとして提供することが期待される。
  • 1  

    HR Tech:人事管理や給与計算、勤怠管理といった労務管理に関するシステムや、従業員の採用から退職までに関わる人事業務を支援するソリューション

  • 2  

    GAFAM:大手米国IT企業5社(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の頭文字を取った呼び名

  • 3  

    xR:VR、AR、MRなど、現実世界と仮想空間を融合して新しい体験を生み出 す技術の総称

  • 4  

    IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想:光技術等を活用して高速大容量通信・膨大な計算リソース等を提供し、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図る、端末・ネットワーク・情報処理基盤の構想

  • 5  

    ターゲティング広告:ユーザーやコンテンツの情報を分析して、特定のユーザーに絞り込んで最適な広告を配信する仕組み

  • 6  

    GAFA:米国大手IT企業4社(Google、Amazon、Facebook、Apple)の頭文字を取った呼び名

  • 7  

    プライバシーTech:企業や行政機関などが、消費者や従業員のプライバシーを保護するために利用するソリューション。同意管理、アセスメント管理、データマッピングなどを含む

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL:03-5877-7100
E-mail: kouhou@nri.co.jp

本件に関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 ICTメディアコンサルティング部 澤田、中尾
TEL:03-5877-7314
E-mail: itnavi2023-pmo@nri.co.jp