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野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計
〜富裕層の世帯数と純金融資産総額の増加傾向は継続、将来の富裕層候補の起業家には金融機関の支援が期待される〜
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)は、2021年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模を、各種統計などから推計しました(本推計は2005年以降継続的に実施)。また、2022年11月には、将来の富裕層候補の一つである全国の現役起業家および起業家予備軍を対象に、「NRIスタートアップ起業経験調査」を実施しました(有効回答949名、うち現役起業家が354名、起業家予備軍が595名)。
主な推計結果と調査結果は、以下のとおりです。
富裕層・超富裕層の世帯数は、2005年以降の最多に
預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額を推計しました。結果は、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると148.5万世帯で、内訳は、富裕層が139.5万世帯、超富裕層が9.0万世帯でした(図1)。
2021年の富裕層・超富裕層の合計世帯数は、この推計を開始した2005年以降、最も多かった2019年の132.7万世帯からさらに15.8万世帯増加しました。富裕層・超富裕層の世帯数はいずれも、安倍政権の経済政策(「アベノミクス」)が始まった2013年以降、一貫して増加を続けています(表1)。
図1:純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数
出所)国税庁 「国税庁統計年報書」、総務省 「全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」、
厚生労働省 「人口動態調査」、国立社会保障・人口問題研究所 「日本の世帯数の将来推計」、
東証 「TOPIX」 および 「NRI生活者1万人アンケート調査」 、「NRI富裕層アンケート調査」等よりNRI推計
表1:純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移
(2005年~2021年の推計結果)
(注) 推計の基となったデータ等は図1と同じ
富裕層・超富裕層の純金融資産総額も増加が続く
2019年から2021年にかけて、富裕層および超富裕層の純金融資産保有額は、それぞれ9.7%(236兆円から259兆円)、8.2%(97兆円から105兆円)増加し、両者の合計額は9.3%(333兆円から364兆円)増えました(図1および表1)。
また、富裕層・超富裕層の純金融資産保有総額は、世帯数と同様、2013年以降一貫して増加を続けています(表1)。
過去10年近くにわたって富裕層・超富裕層の世帯数および純金融資産保有額が増加している要因は、株式などの資産価格の上昇により、富裕層・超富裕層の保有資産額が増大したことに加え、金融資産を運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に、そして富裕層の一部が超富裕層に移行したためと考えられます。
2021年にはコロナ禍においても日経平均株価はバブル崩壊後の高値を更新するなど運用環境は好転したものの、現状では状況が悪化している経済指標も見られ、今後の富裕層・超富裕層の世帯数や純金融資産保有額に影響を与える可能性があります。
将来の富裕層候補である起業家は相談相手として金融機関を信頼している
我が国の富裕層は事業オーナーである場合が多く、金融資産1~5億円の富裕層では、その約3分の1が事業オーナーであることがNRIの調査で明らかになっています。昨今は、金融機関にとって重要な顧客セグメントである事業オーナーとして、スタートアップ経営者が注目されています。スタートアップの事業立ち上げおよび運営の支援を担う金融機関には、スタートアップが抱える悩みや課題を把握、理解することが求められています。
NRIが2022年11月に実施した「NRIスタートアップ起業経験調査」では、現役のスタートアップ経営者(以下「現役起業家1」)および将来のスタートアップ経営を目指す候補者(以下「起業家予備軍2」)を対象に、事業立ち上げにかかる悩みや相談相手、家庭でのコミュニケーションについて調査しました。その結果から、事業立ち上げにおける金融機関への期待や、家庭内の対話、理解醸成の重要性が見えてきました。
現役起業家は金融機関を信頼して相談
現役起業家は、金融機関をはじめとした多くの専門機関に事業立ち上げの相談を行った経験があり(図2)、その中でも金融機関やVC(ベンチャーキャピタル)・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を信頼していたことがわかりました(図3)。一方で、起業家予備軍は、金融機関やVC、公的機関などといった企業・団体に相談した割合は低く、弁護士・会計士・税理士や家族・知人を相談先としているケースが多いことが明らかになっています(図2)。
金融機関やVC、公的機関などの専門性の高い企業・団体からの積極的な情報発信や接触機会の提供は、起業家予備軍の事業立ち上げを後押しする重要な要素であることが明らかになりました。
図2:スタートアップ企業の経営・事業運営の計画・準備時の相談先
(複数回答)
-
(注1)
「起業前に、スタートアップ企業の経営や事業運営を計画・準備するにあたり、専門家や周囲等に相談している・相談したことがある」と回答した起業家予備軍・現役起業家を対象
-
(注2)
「専門家や周囲等のうち、相談している先・相談したことのある先について、あてはまるものを全てお知らせください」という設問に対して、各項目を選択した人の割合を集計した
出所:「NRIスタートアップ起業経験調査」(2022)
図3:現役起業家が信頼できる・頼りになると感じた相談先
(複数回答・回答は上位3つまで)
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(注1)
「起業前に、スタートアップ企業の経営や事業運営を計画・準備するにあたり、専門家や周囲等に相談している・相談したことがある」と回答した現役起業家を対象
-
(注2)
「起業前に、スタートアップ企業の経営や事業運営を計画・準備するにあたり、専門家や周囲等のうち、相談している先・相談したことのある先」として回答してもらった先のなかで、「あなたが実際に相談してみて、最も信頼して相談できる・頼りになると感じた相談相手は誰ですか(上位3つまで)」という設問に対して、各相談先を選択した人の割合を集計した
出所:「NRIスタートアップ起業経験調査」(2022)
起業のカギは家族とのコミュニケーションの質と量の向上
現役起業家の8割は、起業前の事業立ち上げにおいて家族の理解が重要であったと回答しており、過半数がその家族の理解を十分に得られていたとしています(図4)。ところが、事業立ち上げに至っていない起業家予備軍は、その大切な家族の理解が必ずしも十分でないケースがあることがわかりました。
それでは、家族の理解を得るためには、どのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか。現役起業家は、起業・事業計画や将来のキャリアプランについて家族と十分に対話しており、その対話が家族の理解につながったと回答しています(図5)。事業立ち上げにつながる家族の理解を得るためには、身の回りの生活のことだけではなく、起業する事業や起業家として目指す姿を共有し、共感を得ておくことが重要と考えられます。
図4:スタートアップ企業の経営・事業運営の計画・準備時の家族からの理解
(理解を十分に得られているか)
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(注1)
「家族のうち、普段、仕事やキャリアについてよく話す相手がいる」と回答した起業家予備軍・現役起業家を対象
-
(注2)
「起業前に、スタートアップ企業の経営や事業運営を計画・準備するにあたり、家族の理解を十分に得られていますか」という設問に対して、各項目を選択した人の割合を集計した
出所:「NRIスタートアップ起業経験調査」(2022)
図5:家族の十分な理解に繋がったと感じる対話内容
(各対話内容が家族の理解に繋がったと感じているか)
-
(注1)
「起業前に、スタートアップ企業の経営や事業運営を計画・準備するにあたり、家族の理解を十分に得られていますか」という設問に対して、「そう思う」「どちらかと言えば、そう思う」と回答した現役起業家を対象
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(注2)
「家族(家族のうち、普段、仕事やキャリアについて最もよく話す相手)と普段から十分に対話している」と回答した各対話内容について、「対話内容がスタートアップ企業の経営や事業運営を計画・準備するにあたり、家族の理解に繋がったと感じている」と回答した人の割合を集計した
出所:「NRIスタートアップ起業経験調査」(2022)
期待される金融機関の積極的な支援
起業家予備軍が事業の構想・検討から実際の起業のハードルを乗り越えるには、家族とのコミュニケーション・理解の醸成が大きな推進要素となります。そして、家族の理解につながる事業計画や将来のキャリアについて家族と対話するにあたっては、専門的な支援の担い手として現役起業家から高い評価を得ている金融機関からの情報提供やアドバイスが大きな助けになると考えられます。
我が国において、起業家を増やすことは将来的に富裕層マーケットを拡大することに繋がります。また、スタートアップは社会課題を成長のエンジンに転換して、持続可能な経済社会を実現する、我が国が目指す「新しい資本主義」の考え方を体現するものとも位置づけられています3。よって、起業家の拡大は、企業にとっては成長性の高い富裕層セグメントへのビジネスチャンスの拡大、そして社会にとっては課題解決プレイヤーの拡大という二つの社会的意義の達成が期待されます。
- 1
現役起業家:
「現在、スタートアップ企業を経営している、もしくは事業運営に従事している」人のうち、「出資、もしくは株式やストックオプションを保有している」人を指す。 - 2
起業家予備軍:
「今後5年以内にスタートアップ企業を経営したい・事業運営に従事したい」と考えており、かつ事業アイデアやビジネスモデルの検討などの具体的な取り組みを行っている人を指す。 - 3
新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議「スタートアップ育成5か年計画」(令和4年11月28日)
ご参考:「NRI スタートアップ起業経験調査」(2022年)の実施概要
目的 | 現役起業家および起業家予備軍を対象に、スタートアップ企業の経営や事業運営の計画・準備段階における悩みや相談相手、家族とのコミュニケーションの実態を把握する。具体的には、両者の比較などから、事業立ち上げの推進や成功につながる外部からの支援、家族の理解の重要性や必要となる対話を明らかにする。 |
---|---|
対象 | 現役起業家として、「現在、スタートアップ企業を経営している、もしくは事業運営に従事している」と回答した全国の20代-60代の男女354人(男性266人、女性88人)を調査対象とした。また、起業家予備軍として、「5年以内にスタートアップ企業の経営や事業運営へ従事する」ことを考えており、「事業アイデアやビジネスモデルの検討などの何らかの具体的な取り組みを行っている」と回答した、全国の20代-60代の男女595人(男性426人、女性169人)を調査対象とした。 |
実施方法 | 現役起業家および起業家予備軍の特定にあたっては、調査会社のモニターを対象にWebによる事前調査を実施し、現役起業家354人と起業家予備軍595人を抽出した。その949人に対して、Webによる本調査を実施した。 |
実施時期 | 2022年11月 |
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本件の担当
株式会社野村総合研究所 金融コンサルティング部 米村、野口、楊、秀、巽
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