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野村総合研究所、都内の会社員を対象に「働き方と移住」のテーマで2回目の調査

〜出社頻度は増加したが、郊外・地方への移住ニーズは減少せず〜

2023/12/04

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)は、2022年の前回調査1に引き続き、2023年7月10日から7月18日にかけて、東京都内の大企業2に勤務する20代~60代の男女合計3,090人を対象に、働き方と郊外・地方移住に関するインターネットアンケート調査(以下、「今回調査」)を実施しました(アンケート対象者は、パート・アルバイトを除いています。また、テレワーク実施者と未実施者の両方を含みます)。

訂正とお詫び

今回調査から得られた主要な結果は、以下の通りです3

「週3日以上出社」の割合は75%で、前回調査の60%から増加

2023年7月時点の出社頻度を尋ねたところ、「毎日出社」が過半数(53.1%)を占め、「週3日以上」が7割以上(75.1%)でした(図1)。前回調査時の2022年2月(東京都で最後のまん延防止等重点措置の期間中)は、「毎日出社」が38.3%、「週3日以上」が59.7%であったことを踏まえると、出社回帰の傾向が見られます。

図1 各時点での出社頻度(コロナ前・今回調査時:N=3,090、前回調査時:N=3,207)

注)コロナ前の出社頻度は、今回の調査対象者に2020年1月以前の出社頻度を聴取した。
前回、今回調査時の出社頻度は、各回の調査対象者に調査時点の出社頻度を聴取した。
出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

前回調査時(2022年2月)から今回調査時(2023年7月)にかけて出社頻度が増加した人に、出社が増加した理由(複数選択可)を尋ねたところ、「勤務先の方針やルールが変わり、出社を求められるから」(39.0%)が最も多く、企業側の要請が出社増加の主たる要因だと考えられます(図2)。
一方で、「出社したほうがコミュニケーションを円滑に取れるため、自主的に出社を増やしたから」(28.2%)や、「出社したほうが業務に集中できるため、自主的に出社を増やしたから」(23.7%)など、会社員側が自ら出社を増やしたケースも見受けられます。

図2 出社頻度が増加した理由(N=979、複数回答)

注)前回調査時(2022年2月)から今回調査時(2023年7月)にかけて出社頻度が増加した人(N=979)のみに聴取した。
出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

アフターコロナで出社は増加したが、郊外・地方への移住意向は維持されている

郊外・地方4への移住意向を尋ねたところ、直近1年間に移住意向がある人5は全体の15.3%、5年以内に意向がある人6は全体の28.4%と、それぞれ前回調査から微増しました(図3)。アフターコロナで出社回帰の傾向が見られるものの、「郊外・地方移住ニーズ」は高い傾向が続いています。
この理由としては、「都心よりも住宅費が抑えられる郊外・地方への関心が高まっている」、「テレワークの浸透によって、より広い居住面積を有する郊外の住宅ニーズが高まっている」などが推察されます。

図3 郊外・地方への移住意向がある人の割合(前回調査N=3,207、今回調査N=3,090)

出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

郊外・地方への移住意向がある人は、ポスト一次取得層(25~34歳)が多い

年代別および現在の居住形態別の郊外・地方移住意向を見ると、現在は賃貸住宅に居住している若年層(25~34歳)の移住意向は40%を超えており、比較的高い傾向が見られます。また、郊外・地方への移住意向がある人に対して、「いつかは家を所有したい(持家を持ちたい)」という価値観について尋ねたところ、「そう思う」と回答した割合が56%であり、移住意向がない人の割合(46%)に比べて、10%ポイント高い結果となりました。
上記より、郊外・地方への移住意向がある層は、現在は賃貸住宅に居住している若年層(25~34歳)で、かつ将来的には持家に居住したいと考えている層だと考えられ、一般的な住宅の一次取得者層の平均年齢7を踏まえると、「次世代の一次取得層(ポスト一次取得層)」の人と考えられます。

移住の実現には、「買い物・交通利便性の向上」と「高い出社頻度の解消」が必要

郊外・地方移住ニーズを持つポスト一次取得層の移住を促すにあたっては、以下の課題があります。

①郊外・地方における生活面での利便性向上

郊外・地方移住意向ありの人に、郊外・地方への移住時の現実的なハードルは何か聞いたところ、「買い物などの利便性が下がる、商業施設が遠くなる」が22.8%で最も多い回答となりました。ほかに街の機能などの生活面に関わる項目としては、「公共交通機関が整備されていない」(15.1%)もハードルとして回答する人が多い結果となりました(図4)。

図4 郊外・地方移住時の現実的なハードル(N=818、複数回答・特にハードルになる項目3つ)

出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

②高い出社頻度の解消

理想の出社頻度を尋ねたところ、「現在より出社頻度を減らしたい」と回答した人の割合8は、郊外・地方移住意向なしの人よりも、郊外・地方移住意向ありの人の方が多い結果となりました(図5)。特に、「郊外・地方移住意向があり、かつ現在週3日以上出社している人」は、約60%が現在より出社頻度を減らしたいと回答しており、郊外・地方移住意向のある方にとって週3日以上の出社は移住のハードルになると考えられます。

図5 出社頻度を減らしたい人の割合(現在の出社頻度別、N=3,090)

注)現在の出社頻度について、週1日未満と回答した場合、それ以上出社頻度は減らせないとみなし、算出の対象から除外した。
出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

他方で、今回の調査で転職意向について聞いたところ、郊外・地方移住意向ありの人のうち、「今後1年の間に転職を考えている」人は47.6%で、郊外・地方移住意向なしの人(23.9%)に比べて、23.7%ポイント高い結果となりました(図6左)。さらに、転職の検討理由について聞いたところ、郊外・地方移住意向ありの人のうち、「テレワークの制限によって理想の働き方が実現できないこと」が理由だと回答した人は23.6%で、郊外・地方移住意向なしの人(14.8%)に比べて、8.8%ポイント高い結果となりました(図6右)。
これらから、郊外・地方移住意向ありの人の中には、出社頻度を転職の判断軸のひとつとする人が一定数いると推察されます。

図6 郊外・地方移住意向別の今後1年の間に転職を考えている人の割合(N=3,090)、
転職検討理由が「テレワーク制限で理想の働き方ができないため」と回答した人の割合(N=932、回答者全体の中で今後1年の間に転職を考えている人)

注)転職検討理由(右図)は複数回答にて聴取した。
出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

ポスト一次取得層の郊外・地方移住意向の高まりは、都心一極集中・少子化といった社会課題解決の起点となりうる環境変化

前回調査では「出社回帰は郊外・地方移住意向の低下につながる」という見通しを示しましたが、今回の結果を見ると、出社率は増加したものの、都心における住宅価格高騰などを背景に郊外・地方移住意向は維持されていることがわかりました。特に25~34歳あたりのポスト一次取得層における郊外・地方移住意向が高く、家族が増える・住宅を購入するといったタイミングでの転居において、その安さや広さから郊外・地方への関心がより高まっていると考えられます。
上記のニーズを捉え、郊外・地方への分散を実現できれば都心一極集中は緩和へ向かう可能性があります。加えて、ポスト一次取得層がこれからの子育て層にあたる年代であることを踏まえると、郊外・地方に広い住居を確保することで子供を複数人持つことも期待でき、少子化という我が国が抱える大きな社会課題が解決に向かう可能性も秘めています。
ただし、郊外・地方移住ニーズを実際の行動として顕在化させるには、都心に比べた生活面での不便さの解消、出社頻度を抑えた働き方の実現などが求められます。これらの実現は容易ではなく、「都心に比べ、収益性が低い中でどのようにまちづくりを行うのか」、「出社頻度を抑えるためには、勤務先がテレワーク可能な職種・企業に限定されるのではないか」といった問題を解決しなければなりません。これらの解決はまちづくり・開発を担う事業者だけでは難しく、多種多様な企業および自治体・国と業界の垣根を越え、連携して取り組むことが必要と考えます。

  • 1  

    前回調査については次のURLをご参照ください。
    https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2022/cc/0624_1

  • 2  

    本調査では、従業員が300名以上の企業を「大企業」と定義しています。

  • 3  

    本資料に記載した構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない場合や、内訳の計と合計が一致しない場合があります。

  • 4  

    アンケートでは都心から公共交通機関で1時間程度の場所を「郊外」、2時間以上の場所を「地方」として聴取しています(公共交通機関について、具体的な種別の指定は行っていません)。

  • 5  

    直近1年間の郊外・地方移住意向は、「約1年以内の転居先」として郊外または地方を選択した人を集計しています。

  • 6  

    5年以内の郊外・地方移住意向は、「約1年以内の転居先」もしくは「約1~5年以内の転居先」として郊外または地方を選択した人を集計しています。

  • 7  

    一次取得者とは、住宅を初めて購入する人のこと。国土交通省住宅局「令和4年度住宅市場動向調査報告書」で得られる一次取得・二次取得別の世帯主の年齢から平均年齢を算出すると、注文住宅で39.5歳、分譲戸建住宅で37.5歳です。

  • 8  

    「現在より出社頻度を減らしたい」と回答した人の割合は、理想の出社頻度を聴取し、その回答結果が現在の出社頻度よりも小さい人の割合を算出しています。

ご参考:今回調査概要

調査名 働き方・住まいに関する調査
調査時期 2023年7月10日~2023年7月18日
調査方法 インターネットアンケート
調査対象 東京都内の大企業(従業員300名以上の企業)に勤務する20~60代の男女
(回答者数は、東京都における会社員(パート・アルバイトを除く)の性・年代別構成比(10歳刻み)に応じて割付。その構成比は、総務省統計局にて公表されている「平成29年就業構造基本調査」を用いた。)
有効回答数 3,090人(性・年代別の内訳を別表にて記載)
主な調査項目 現在と理想の働き方、現在の居住状況、住まいに対する価値観、転居の意向、郊外・地方への移住意向、住まいとライフイベントの関係性 等

別表 有効回答数の性・年代別内訳

男性 女性
20~29歳 300 325
30~39歳 370 326
40~49歳 400 356
50~59歳 365 323
60~69歳 178 147
合計 1,613 1,477

ご参考:前回調査概要

調査名 働き方と生活に関するアンケート
調査時期 2022年2月15日~2022年2月21日
調査方法 インターネットアンケート
調査対象 東京都内の大企業(従業員300名以上の企業)に勤務する20~60代の男女
(回答者数は、東京都における会社員(パート・アルバイトを除く)の性・年代別構成比(10歳刻み)に応じて割付。その構成比は、総務省統計局にて公表されている「平成29年就業構造基本調査」を用いた。)
有効回答数 3,207人(性・年代別の内訳を別表にて記載)
主な調査項目 現在と理想の働き方、現在の居住状況、住まいに対する価値観、転居の意向、郊外・地方への移住意向、住まいとライフイベントの関係性 等

別表 有効回答数の性・年代別内訳

男性 女性
20~29歳 351 341
30~39歳 374 345
40~49歳 358 356
50~59歳 492 307
60~69歳 230 53
合計 1,805 1,402

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp

本件調査の担当


株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部
アーバンイノベーションコンサルティング部 渡會、青木、光橋、鳥居、戸田