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野村総合研究所、世界4極で電気自動車の購入に関する消費者動向調査を実施

~マス市場の開拓には電池搭載量を抑えた「スマートレンジEV」の投入が鍵か~

2023/12/22

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)は、2023年5月~6月にかけて、日本・米国・ドイツ・中国(台湾、香港を含まない)の自動車運転免許保有者に対して、電気自動車(以下「EV」)の購入意向とその理由、非購入意向とその理由など、「EVシフト」に関するアンケート調査を実施しました。

このテーマでの調査は2017年に初めて実施し、2021年に第2回、そして今回は第3回にあたります1。2017年から2023年にかけて、「EVを購入したい」と思う消費者の割合は、中国・ドイツでそれぞれ13%ポイント・8%ポイント増加し、米国では26%から53%に倍増しました。一方、日本では6年間で4%ポイント増加と、ほとんど変化が見られず、地域間で消費者意向のギャップが拡大していることが明らかになりました。今回の調査から得られた主要な結果は、以下の通りです。

EV市場の動向と購入意向の変化

2020年以降、世界のEV市場の成長が急加速、購入意向を示す消費者も増加

中国では、2010年代中盤から新たにEVを中心とする国内自動車メーカーが勃興し、2017年の乗用車販売台数に占めるEVの割合は1.9%でしたが、2022年は 21.5%にまで上昇しています。特に2020年以降は急激に上昇しており、2022年のEV新車販売台数は約500万台と世界トップです2。また、米国・ドイツにおいても2022年のEV販売割合はそれぞれ5.8%、17.5%と上昇しています。
一方、日本における乗用車販売台数に占めるEVの割合は1.4%(2022年)で、上記の国と比べて低位に留まっています。これらの市場実績を持つ各地域の消費者に対して、EVの購入意向を調査した結果が図1です。

図1 EVの購入意向の推移

出所:NRI「世界4極でのEV購入意向に関する消費者動向調査」(2023年)
注)N数は末尾の【ご参考:調査概要】を参照

中国では、「EVを購入したい」と回答した割合が2023年に86%と他国を大幅に上回っており、今後も世界のEV市場を牽引すると考えられます。
米国においては、2017年から2023年にかけて「EVを購入したい」と回答した消費者の割合が26%から53%に倍増しています。特に、今後の自動車購入の中核を担う20~50代の若年・中年層の購入意向が急激に増加しており、テスラの躍進や各自動車メーカーの本格的なEV投入に伴い、今後さらに大きな市場が形成される可能性があります。
ドイツも米国と同様の傾向ですが、米国と比較すると購入意向の割合の増加率は鈍化傾向にあります。特に40代以上の中高年層でその傾向が顕著です。
これらの地域と比較すると、日本におけるEVの購入意向は低位に留まっています。他地域では20代~30代のEV購入意向が60%を超えていますが、日本では20~30代でも34%と低いことが特徴的です。

「購入したくない理由」としては、引き続き「購入価格」が上位

EVを購入したくない消費者に対して、その理由について調査を実施しました(図2)。

図2 EVを購入したくない理由(複数回答)

出所:NRI「世界4極でのEV購入意向に関する消費者動向調査」(2023年)
注)NEVには、BEV、PHEV、FCVが含まれる。N数は末尾の【ご参考:調査概要】を参照

「購入時の価格」は全地域共通で、「購入したくない」理由の上位となっています。中国でも2022年末のNEV補助金の撤廃により、2023年には「購入時の価格」を「購入したくない」理由とする声が増加しており、ここ数年と比較すると市場成長スピードはやや緩やかになる可能性があります。
日本では、公共充電器の数が他国と比べて少なく、消費者からも「充電スポットまでの距離・場所の利便性」が「購入したくない」理由の最上位に位置づけられています。日本においてEVの普及を進めるためには、充電インフラの整備とその採算性の担保について、行政・充電事業者・自動車メーカーを含めた大きな枠組みで協力する必要があります。

消費者がEVの価格低下を求める一方で、EVに対して追加で負担できるコストについても調査しました。「現在所有している車両と同タイプの車両のEVを購入するとしたときに追加で支払える金額」を調査した結果、回答者の平均額は米国で132万円、中国で82万円、ドイツで78万円、日本で67万円となりました。市場のボリュームが大きく、経済的な負担力も伴っている米国は、世界の中でも今後の重要マーケットと言えます(図3)。

図3 EV購入に追加で支払えるコスト

出所:NRI「世界4極でのEV購入意向に関する消費者動向調査」(2023年)
注)2023年5月の平均為替レート:USD/JPY=137, CNY/JPY=20, EUR/JPY=149。N数は末尾の【ご参考:調査概要】を参照
・本質問に対する回答は、「現在の車両より安くならないと買わない」「1~10万円」「10~30万円」「30~50万円」「50~80万円」「80~100万円」「100~150万円」「150~200万円」「200~250万円」「250~300万円」「300万円以上」。 平均額は、この各選択肢の中央値に対して回答者の割合を乗じて算出。

消費者が求めるEVの航続距離

300km未満の航続距離で十分とする消費者が増加傾向

EV一台あたり100万円以上を占めていた電池コストは、近年のEV普及に伴ってスケールメリットが実現し、それに伴い車両価格も低下しています。また、電池性能の改善により、航続距離を「購入したくない」理由とする声も全地域で減少傾向にあります。EVを購入したいと答えた消費者のうち、「一回の充電でどの程度の航続距離があればEVを利用するか」についての調査(図4)では、300km未満の短距離で十分と考える割合が年々増加しており、特に日本では52%、米国では46%と、「EVを購入したい」と回答した人の半数近くに上っています。

図4 消費者がEVに求める航続距離

出所:NRI「世界4極でのEV購入意向に関する消費者動向調査」(2023年)
注)N数は末尾の【ご参考:調査概要】を参照

逆に「500km以上」の航続距離を求める消費者は、いずれの国でも減少していることが明らかになりました。また、本調査においては長距離移動回数についても調査しました。その結果、実際に1年間における一回当たり300km以上の長距離移動の平均回数は、米国で4.5回、ドイツで4.3回、中国で2.5回、日本で0.5回でした。これらより、消費者はガソリン車との比較ではなく、実生活での活用に見合った適切な航続距離を求めている傾向がうかがえます。

今後世界のEV市場は、導入期から成長期に突入します。EVシフトを進める自動車メーカーにとっては、富裕層をターゲットとした高価格帯での戦いに加え、大衆向けのボリュームゾーン市場を掘り起こしていく必要があります。それに向けて、例えば、消費者が求める航続距離を担保しつつも、比較的低容量の電池搭載により最大の購入抑制要因となっている「車両価格」を低減したEV(=「スマートレンジEV」)を市場に投入することが求められます。

ご参考:調査概要

調査名 世界4極でのEV購入意向に関する消費者動向調査
調査時期 第1回:2017年10月
第2回:2021年3~4月
第3回:2023年5~6月
調査方法 インターネットアンケート
調査対象国 日本、米国、ドイツ、中国(香港、台湾を含まない)
調査対象者 自動車運転免許の保有者
30歳未満/30-49歳/50-64歳/65歳以上および自動車保有/非保有を均等割付
主な調査項目 EVの乗車経験、充電習慣、新規参入事業者への受容度 など
有効回答数 以下の数値は、性年代比割り戻し前の値

図1 EVの購入意向の推移

回答対象者:全員

図2 EVを購入したくない理由(複数回答)

回答対象者:「EVを購入したくない」と回答した人

図3 EV購入に追加で支払えるコスト

回答対象者:「自動車を保有している」かつ「EVを購入したい」と回答した人

図4 消費者がEVに求める航続距離

回答対象者:「EVを購入したい」と回答した人

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp

本件に関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所
グローバル製造業コンサルティング部 小池、石川
コンサルティング事業本部 風間
TEL:03-5877-7307
E-mail:ev-consumer-survey@nri.co.jp