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NRI トップ サステナビリティ ステークホルダー・ダイアログ 2012年度 CSR対談 日本再生に向けたNRIの社会的責任

サステナビリティマネジメント

2012年度 CSR対談 日本再生に向けたNRIの社会的責任

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被災地域の復興を目指して新たな未来を提示し、さらにはその先にある日本再生を図るために、NRIは何ができるのか、社会から何が問われているのか。科学技術と人間のかかわりなどをテーマとし、執筆を通じて復興支援にも取り組むノンフィクションライターの最相葉月さんとNRIの代表取締役社長である嶋本正が語り合いました。

――震災、ならびに復興支援にかかわって、改めて気づいたことは何でしたか。

最相 葉月
最相
地域が第一であるということ、そして、他者の想いをどこまで想像できるかということが問われた気がします。支援活動は、やはり地元のネットワーク、人と人とをつなぐ土台があってこそできるものです。そこをいかに守るか、人と人との関係性がいかに重要かを、私自身、取材などのさまざまな活動を通じて実感しました。御社は震災直後から、復興支援の活動を展開されていますね。
嶋本
NRIは、まず情報システムを止めないことに注力しました。われわれは、自社のデータセンターを用いて、さまざまな企業の情報システムの運用を担っています。システムを止めてしまうと社会に大きな影響を及ぼしてしまいますので、そこは絶対に守る。次いで、被災されたお客様企業に対して、社員が現場に出向き、緊急事態に対してできる限りのお手伝いをさせていただきました。そのうえで「震災復興支援プロジェクト」を立ち上げ、リサーチやコンサルティングでの蓄積を活かして被災地の復旧・復興に関する提言を行いました。また、ITを活用して、被災地の方が何を必要としているのか、通行可能な道路はどこか、支援物資をどう送ればよいかなどがわかるツールも無償で提供しました。これらの活動には、仕事や過去のボランティア活動の経験を踏まえ、自分が役に立つことは何かを考えて名乗りを上げた社員が何人もかかわっています。
最相
手続きや順番を考えるより、まず行動を起こして、できることを行う。そんな人が力を発揮したということを、阪神・淡路大震災のときにも聞いています。

現場力の発揮
想定外を想定する

嶋本 正
嶋本
今回の震災でよく使われた言葉として「現場力」があります。被災地では目の前の非常事態に対して、被災者、自治体、企業の方々がそれぞれの現場で、自律的に判断して動きました。日本人には、こうした自律的に動ける強みがあるのではないかと感じました。
最相
現場力を発揮できるベースがあったと私も思います。たとえば、陸前高田市の保健行政は、隣接市の保健師だった方を調整役として立て直しが図られました。公衆衛生に携わるボランティアによってITを利用した保健システムの遠隔フォローも行われました。こうした復興支援のかたちは大変参考になると思います。
嶋本
緊急事態や何か大きな変化が起きたときに、自分だけで対処できないことは、周りに助けを借りたり、連携しながら解決していく。ITの進展によって、それがより効果的に実行できるようになったと思います。たとえば、ネットワーク上でいろいろなデータの処理・活用ができるクラウド・コンピューティングは、機器やデータベースを現地に置いていなくてもよいわけですから、震災地域の支援に役立ち、有効な仕組みであることが実証されました。
最相
震災では「想定外の事態」という言葉もよく使われました。自然はつねに人間の想定をはるかに上回ることを思い知らされました。
嶋本
普段、われわれがシステムを開発する場合でも、いろいろな障害時や異常時を想定して、そのときの対応方法を考えておくことが必須ですが、今回のことでは、改めて「想定」の範囲をどこまで広げて考えるかということが、重要だと感じました。

変化に対応できる人材の育成

――復興や日本再生のために、どのような取り組みが必要だと思いますか?

『被災地の声 分析レポート』「被災地の声 分析レポート」「つぶやき」を分析して被災地のニーズを把握
『被災地の声 分析レポート』「つぶやき」を分析して被災地のニーズを把握
拡大図
最相
災害にどう対処するのか、あるいは被害を軽減するためにどうすればよいのか、これまでに培った経験や知恵を次の世代に継承していくことも重要です。
嶋本
企業としては、災害など万が一の事態に備えたBCP/DR(事業継続計画/災害復旧に備えた対策)訓練や啓発活動も継続して行わなければいけないと再認識しました。また、ノウハウの継承の仕方についても、ITの果たす役割はますます大きくなっています。たとえば、震災直後にTwitter(ツイッター)に投稿されたつぶやきから被災地の方々が何を必要としているかを分析した「被災地の声 分析レポート」を提供しました。このように、世の中にある数値や音声、位置情報などビッグデータと呼ばれるさまざまなデータを抽出・分析して、将来に向けての対策の立案や、さらには将来予測などにITが活用できると思います。
最相
現場と支援者をつなぐ力となった「被災地の声分析レポート」のように、人間的で即応性のある試みを今後も期待します。
嶋本
現場力にも通じますが、企業は常に変化にさらされていますから、変化に対応できる人材が必要です。そうした人材を育てるためにNRIでは、2011年度からお客様やNRIの海外拠点に社員を1年間派遣し、すべてを自分の力で解決することが必要な環境に身を置くことにより、海外でも活躍でき、逆境や変化に対応できる人材を育てる制度を本格的に開始しました。

人間味と思いやりを喚起させる未来への提言を

――最後に、社会からのNRIに対する期待に、ビジネスや社会貢献活動を通じて、NRIはどのように応えていきますか。

学生小論文コンテスト2011授与式で受賞者に感想やお祝いの言葉を伝える最相氏

学生小論文コンテスト2011授与式で
受賞者に感想やお祝いの言葉を伝える最相氏

嶋本
企業には、経済的価値とともに社会的価値の創出が求められています。利益を考えるときは社会のことを忘れ、社会貢献のときは利益を上げることを考えないというのでは、無理が出ますし、長続きしません。われわれは、この二つを別々にとらえるのではなく、本業によって社会に貢献したいと思っています。たとえば、NRIはデータセンターを持っていて、そのセンターでさまざまな共同利用型のシステムを提供しています。お客様である企業から見ると、自分でシステムをつくるよりNRIのシステムを使うほうがコストはかかりません。そこに投資をする必要がないので、本業であるサービスの向上や競合他社との差別化につなげることに集中できます。また、お客様にNRIのデータセンターを使っていただければ、不要なエネルギーやCO2発生も抑えられます。お客様のためになり、社会のためになり、NRIにもメリットがある、こんなサイクルを回していきたいと思っています。
最相
私が特別審査委員としてかかわらせていただいている「NRI学生小論文コンテスト」の2011年のテーマは、2025年の日本について考えるものでした。今の状態をしっかり把握しなければ、未来を考えることはできないと私は思っています。そして、未来を予測するときに一番活きるのが、現場力だと感じています。御社のご活動からは、パワーポイントで簡単に説明できるような未来ではなく、思いやりのある、また想像力を喚起してくれるようなメッセージをいただきたいと思います。
嶋本
パワーポイントで説明するだけではない、未来の提案ですね。
NRI対談両者
最相
インターネットに慣れた今の子供たちは、知識はあるし、われわれよりも情報を得ることにずっと長けています。だからこそ、これからは身近にある生身のコミュニケーションも大切になると思います。
嶋本
「新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担っていく」というのがNRIグループの企業理念「未来創発」です。最相さんがおっしゃるように、将来像を描くだけではなく、われわれも自ら実践していく。そのためには、現実に起きていることに身を置き、変化が起きたときには対応できる体質になっていないといけません。それにはコミュニケーションも欠かせません。今を体感し、多様なコミュニケーションを通じて、想像力をたくましくして、未来を切り拓いていくことができる会社を目指していきます。

最相葉月(さいしょう・はづき)

1963年生まれ、兵庫県出身。会社勤務などを経てノンフィクションライターへ。主な著作に『絶対音感』『青いバラ』『星新一』(いずれも新潮文庫)など。科学技術と人間の関係性などをテーマに取材活動を続けている。

嶋本正(しまもと・ただし)

1954年生まれ、和歌山県出身。76年に野村コンピュータシステム(当時)に入社。産業システム系分野に従事。取締役情報技術本部長兼システム技術一部長就任後、常務執行役員、代表取締役専務執行役員 事業部門統括などを経て2010年より現職。

(2012年7月17日公開)

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