2018年8月2日に、スイスのジュネーブにあるSDGsを推進する国際的NPO World Business Council for Sustainable Development(以下、WBCSD)を、また同月3日にはチューリッヒで国際的なESG評価機関のRobecoSAMを訪問して、NRIで2回目となる海外でのダイアログを開催しました。そのダイアログでは、各機関の有識者とNRI常務執行役員の横山賢次および社員等数名が、「ESG投資家が企業に求めること」や「SDGsに向けた企業としてのあるべき対応」などについて、意見を交わしました。
(所属、役職は2018年8月時点)
フェデリコ・メルロ氏 (Federico Merlo) WBCSD Managing Director of Member Relations & Senior Management Team |
WBCSDに加盟することのベネフィット
WBCSDでは、ターゲットプロジェクトが約30あるが、加盟企業は1社につき、2~3のターゲットプロジェクトに参画している。WBCSDに加盟するメリットは、以下の3つである。
これらの活動は、規制や緊急事態により企業に制約が課せられる前に、解決策を導くことにも繋がる |
---|---|
フィリッポ・ベグリオ氏 (Filippo Veglio) WBCSD Managing Director of People & Senior Management Team |
SDGsをどのように推進していくべきか
WBCSDは、SDGsが掲げている社会的課題について、ビジネスを通じて具体的にどのように解決できるのかを、企業間で連携しながら対応することで、付加価値を生み出していけるように支援している。WBCSDでは企業が単独で社会的課題を解決に導くことはできないと考えている。また社会に与えるインパクトやスケーラビリティを拡大していくために、以下の3つのコンセプトに基づき、企業に対して活動に参画してくれるよう、推奨している。 Innovation:ビジネスで社会的課題を解決するためのイノベーション |
エドアルド・ガイ氏 (Edoardo Gai) RobecoSAM Managing Director, Head of Sustainability Service |
ESG投資家が企業に期待していること
企業は単にサステナブルでより良い社会づくりに貢献するのではなく、ESGに関する課題の解決を通じて、持続的かつ収益性のあるビジネスを構築していくことが重要だと考えている。我々が最も注視していることは、企業自身が社会にどのような形で、正・負のインパクト(影響)を与えているのかを定量的に測る工夫をしながら行動し、その情報を開示するかである。 |
ジバン・ガフリ氏 (Jvan Gaffuri) RobecoSAM Director, Senior Manager, Sustainability Services |
ICT業界への懸念と期待 ICT業界は、人や企業をつなぐだけでなく、さまざまなプロセスをより信頼的で効率的なものにすることによって、常に社会の発展において重要な役割を果たしてきた。新しい技術が導入される際にたびたび経験してきたように、今日では、AI(人口知能)やインダストリー5.0によって多くの仕事が消滅し、大きな社会的不均衡を生み出すことが懸念されている。 したがって、これらの新技術の開発が適切に管理され、ネガティブインパクトを防ぐためにあらゆるステークホルダーが関与することが重要だ。そうしたプロセスを守るなら、新しい技術の導入が経済・社会にポジティブインパクトをもたらすことが可能になるだろう。そのために現時点では、すべての当事者とステークホルダーが協力して未来に向けた最善の方法を見つけることが重要であり、我々RobecoSAMは広くオープンに皆さまの意見を聞き、議論をしていきたい。 |
マンジット・ジャス氏 (Manjit Jus) RobecoSAM Director, Head of ESG Ratings |
ESG投資家が企業に求めている情報開示
情報開示の方法は、ESGに焦点をあてたデータブックや統合レポートによるデータ開示等、形式にはこだわっていない。 |
横山賢次 野村総合研究所 常務執行役員 |
サステナブルな社会の実現に向けて
昨年度に続き、海外でダイアログを実施しました。今回のダイアログは、国際的ESG評価機関やSDGs推進機関の方々から貴重なご意見を頂き、大変、有意義な場となったことを感謝しております。ESG投資家が企業に対して事業戦略にサステナブルな社会づくりを組み込むと同時に、それによる影響を開示していくことを求めていることを実感しました。また、ICT業界に対しては、テクノロジーの進化によるネガティブな面の懸念がある一方で、それ以上にポジティブな面での大きな期待もあることが分かりました。また、長らく検討中であったSDGsの対応についても、その本質を知ることができました。SDGsは、国内でも多くの企業が対応を進めています。弊社は、SDGsの本質を見極めながら対応して広めていきたいと考えています。 |
他の野村総合研究所(NRI)からの出席者
敷野嘉朗 総務部長
本田健司 サステナビリティ推進室長
藤澤茂 サステナビリティ推進室上級
ファシリテーター
石田寛氏 経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会 専務理事事務局長
オブザーバー
田口修央氏 ANAホールディングス CSR推進部副部長
(2019年1月11日公開)