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2017年05月26日

JALとNRIに聞く、「どこかにマイル」はなぜ成功したのか

日本航空(JAL)が2016年12月から始めた「どこかにマイル」。JALのサイトに利用日と時間帯、人数を入力すると4つの候補地が表示され、その中から最終的に行き先が決まります。必要なマイルは往復で6000マイルと、通常の特典航空券に必要なマイルの半分以下なうえ、どこに行けるかわからないわくわく感も抱けることから、開始以来たいへん人気を集めています。

JALの「どこかにマイル」サイト

2017年4月17日からは、関西にお住まいのお客さまの声にもお応えして、これまでの羽田空港発着路線に加え伊丹空港発着の路線を追加し、対象路線を拡大しています。

実はこのサービス、JALとNRIとのコラボレーションによって誕生しました。NRIは、企画段階から、コンサルタントやエンジニアが一体となって協力し、システムの開発・運用まで手がけています。両社がどのように関わることで画期的なサービスが生まれたのか。成功の理由を両社の担当者に聞きました。

アイデアを揉むところから始まった

JALはこれまで、ITを積極活用し、サービスや日常業務のイノベーションにチャレンジしてきました。

特典航空券のサービスとして、新しい需要や価値を生み出すサービスができないか。JALの馬場さんがそんなことを考えていた2014年に、NRIから共同研究の提案がありました。そのとき生まれたアイデアを両社で練り上げていったことが「どこかにマイル」の発端です。JALの馬場さんは振り返ります。

「行き先がどこになるかわからない、という発想は面白いと思いました。とはいえ、それでサービス化をすぐ決めることはできません。特典航空券を利用する顧客は行き先を決めてマイルを貯めることが、JALの調査ではわかっていました。どこに行けるかわからないサービスに需要を見込めるのか、正直、半信半疑でした」

そこからNRIの担当者と月に1度「研究会」を開いて、1年以上にわたりアイデアを揉んでいきました。やがて馬場さんの疑念は変わります。

「NRIさんが実施した市場調査などを通じて、サービスのターゲット層が明確になってきたのです。この層になら受け入れられるのではないか、それならサービス化する価値がある、と確信が持てました」

JALの馬場宗吾氏

コンセプトは、「セレンディピティ」

2015年の秋には、正式にプロジェクトが始動。アイデアを具体的なサービスにしていくと同時に、システムを作り上げていきます。開発を担当したのはNRIでした。

行き先候補地がランダムに4つ表示される。家族はもちろん友人と一緒に行くこともできる。一見シンプルに見える「どこかにマイル」の仕組みには、NRIが保有する特許を元に開発されたアルゴリズムが活かされています。

システムを作り上げていくうえで、とても気にかけたことがあるとして、馬場さんは次のように話します。

「このサービスはネット上でのみ成立するサービスです。ですから、いかにお客さまにわかりやすく、かつ気軽に使ってみようと思っていただけるか。そこにとても注力しました」

その典型的な例が、行き先候補地の表示でした。これには、かなりの議論と時間を費やしています。

「候補地の表示を4つにしています。7つ、8つと、たくさんあるほうがお客さまには喜ばれるのではないかと、私はつい思ってしまう。また、空席に応じるなら2つだけ表示するのでもよいのです。それが、なぜ4つなのか」

NRIデジタルの中村はその理由を次のように話します。

「今回重視したコンセプトは、旅における「セレンディピティ(偶然発見する幸運)」です。色々な候補地の写真を見ながら、旅に行きたい気持ちを膨らませて頂きたいと思っていました。候補地が4つなら、1ページの中で写真を全部見てもらえます。4つに絞ることで、表示された候補地への想いを巡らせてもらえたらと思いました」

合言葉は「それは、お客様に受け入れられるか」

このプロジェクトには、JALのサービス部門とシステム部門、また、コールセンターなどの現場関係者、そしてNRIのコンサルティング部門とシステム部門が関わりました。「一般的に、ビジネス側とシステム側とでギャップが生じることがありますが、今回はまったく乖離なく物事が進みました」と馬場さん。

サービスを作り上げる段階から全員が関わり、目的を共有していたからだと馬場さんは見ています。何かで悩んだとき、ことあるごとに皆が口にしたのが『それはお客さまに受け入れられるか』だったといいます。

「この言葉が決め手となって、全員が同じベクトルを向けた。それで最終的に、お客様にとって使いやすいシステムができたと思っています」

責任をイーブンに持つ関係だからこそ

さらにもう一つ、NRIとのコラボレーションがうまくいったことも大きいと馬場さんは考えています。

「今回は、通常のコンサルティングやシステム開発と異なり、NRIさんと対等な関係で、一緒にサービスを作り上げていきました。印象的だったのは、NRIさんが絶対にあきらめなかったことです。何かにつまずいても、きっと解決策があるはずだと、突き詰めていく。これはNRIさんが、クライアントが困っているから支援します、という受注者の姿勢でなかったからだと思います」

発注者と受注者の関係なら、発注側の要望に対して受注側が「ご要望どおりに作りましたが、システム的にはここまでが限界です」となるのはよくあること。しかし今回は「こうすればうまくいくはずだから、再考してみます」というのがNRIの対応だったと馬場さんは説明します。

「JALとNRIさんとが相互に責任とリスクを持つ関係で、このサービスに関わりました。目的意識と責任が等分に共有されていたからこそ、お互いよりよいものを目指せたのだと思います」

NRIの新井は「世の中にないサービス、新しい価値を生み出したいという情熱が、原動力のすべてだった」と話します。「この気持ちに共鳴し、情熱と能力を兼ね備えたメンバーを集められたことが、成果につながったのではないか」と新井は考えています。


左から、NRI 産業システムデザイン部の新井朗、NRIデジタル デジタルソリューション事業部の中村博之、
JAL 路線統括本部 マイレージ事業部の馬場宗吾氏 (所属は取材当時)

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