フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ 新型コロナウイルス対策緊急提言 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う人々の行動と意識の変化から見る「学び方改革」「働き方・暮らし方改革」の可能性~アンケート調査から見る臨時休校中に見られた子どもの「学び方」の変化~

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う人々の行動と意識の変化から見る「学び方改革」「働き方・暮らし方改革」の可能性
~アンケート調査から見る臨時休校中に見られた子どもの「学び方」の変化~

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

2020/03/27

  • 野村総合研究所は、2020年3月23~24日に、全国の臨時休校になった小学1~6年生を持つ保護者6,180人を対象とした「新型コロナウイルス感染症発生に伴う臨時休校に関するアンケート調査」を実施した。
  • その結果、臨時休校中、小学生の27.6%(推計約177万人)が「オンライン学習」を利用し、中でも臨時休校をきっかけに初めて利用した子どもやこれまで利用に関心がなかった家庭での利用が多かったことが分かった。また、保護者の約7割が利用した「オンライン学習」に満足しており、緊急時はもとより、長期休暇中や通常授業のある期間での利用意向も高いことが明らかになった。
  • さらに、臨時休校となった子どものいる家庭において、特に共働きの家庭を中心に、宅食・配食サービスやセキュリティ関連商品への関心が高まったことも分かった。今回の臨時休校は子育て世代の「学び方」のほか、「暮らし方」における意識の変化をもたらしたことが推察される。
  • 今回の臨時休校が結果としてもたらした、多くの家庭における多様な「学び方」や「暮らし方」、「働き方」への関心の高まりという気運を、我が国の深刻化しつつある少子高齢化、労働力人口減少への対処についての議論に確実につなげることが求められる。
  • (注1)

    本調査では、「オンライン学習」について、「インターネットに接続された情報端末を使って、動画を視聴したり、問題に取り組んだり、双方向コミュニケーションをするなどの学習手段。教育効果を期待して利用するものを指し、娯楽だけを目的としたものは除く」と定義した。

  • (注2)

    新型コロナウイルス感染症拡大に伴う「働き方」に関する変化については、別稿にて報告する予定である。

臨時休校中、小学生の27.6%(推計約177万人)が「オンライン学習」を利用。うち半数近くが臨時休校をきっかけに初めて利用

新型コロナウイルス感染症発生に伴う臨時休校(以下、臨時休校)により、子どもを持つ多くの家庭が、臨時休校中の子どもの生活・学習環境の確保、保護者の働き方を見直す必要に迫られた。
臨時休校中、子どもについて最も心配だったことを聞いたところ、「学習機会の不足・学習の遅れ」を挙げた保護者が最も多く、30.2%であった(図1)。そのような中、臨時休校中の自宅学習手段として「オンライン学習」を利用した子どもの割合は27.6%であった。臨時休校中に利用した子どものうち、44.2%が今回の臨時休校をきっかけに初めて「オンライン学習」を利用した(図2)。
文部科学統計要覧(平成31年版)をもとに簡易的に推計すると、今回の臨時休校中、約177万人の小学生が「オンライン学習」を利用し、そのうち約78万人が今回の臨時休校をきっかけに初めて利用したことになる。

もともと関心がなかった家庭でも、臨時休校をきっかけに初めて「オンライン学習」を利用

今回の臨時休校をきっかけに、初めて「オンライン学習」を利用した子どもの家庭のうち、以前は「オンライン学習」の利用に関心がなかった家庭は51.8%で、以前より「オンライン学習」の利用に関心があった家庭(31.6%)よりも多かった(図3)。今回の急な臨時休校は、もともと関心があった家庭のみならず、これまで関心がなかった家庭の子どもの「オンライン学習」の利用をも促したことがうかがえた。
今回の臨時休校をきっかけに初めて「オンライン学習」を利用した子どもの保護者に、「これまで利用していなかった理由」を聞いたところ、最も多かったのは「必要性を感じなかった(38.5%)」で、次いで「使い始めるきっかけがなかった(36.4%)」であった(図4)。また、これまで関心がなかったが今回の臨時休校をきっかけに初めて利用した子どもの多く(81.8%)が、「無料のものだけ」を利用した(図5)。
これらの結果を踏まえると、今回の臨時休校によって、通常以上に自宅学習環境を確保する必要に迫られたことに加えて、休校支援として期間限定等で無料提供されたコンテンツ・サービスが数多く出現したこともきっかけとなり、幅広い世帯・子どもにおける「オンライン学習」の利用が加速したことが推察される。

臨時休校中に「オンライン学習」を利用した子どもの保護者のうち約7割が満足。緊急時はもとより、長期休暇中や通常授業のある期間での利用意向も高い

今回の臨時休校中の自宅学習手段として子どもが利用した「オンライン学習コンテンツ・サービス」に満足している保護者の割合は、71.9%に及んだ。また、学習時間の確保・学習習慣の維持といった効果だけでなく、普段は出来ない内容の学習機会を得ることができたと感じた人も多かったことが分かった。
今回の臨時休校中の利用者において、今回のような緊急時の場合に利用したいとする保護者が92.3%と極めて多いことに加えて、夏休みなどの長期休暇中で86.9%、通常授業のある期間でも60.7%が利用したいと回答した。今回の臨時休校中の未利用者であっても、緊急時や長期休暇中に利用したいと回答した保護者の割合はいずれも半数近くに及んだ(それぞれ47.8%、43.2%)。

  • 数値はいずれも「とても満足している」と「まあ満足している」の合計

今回の臨時休校は子育て世代の「学び方」のほか、「暮らし方」における意識の変化をもたらした

本調査では、臨時休校となった子どものいる家庭において、オンライン学習コンテンツ・サービスだけでなく、特に共働きの家庭を中心に、宅食・配食サービスやセキュリティ関連商品(ホームセキュリティサービス、スマートロック、ホームネットワークカメラ)への関心が高まったことも分かった。共働き家庭の54.2%が休校中「子どもだけで留守番させた」と回答しており、今回の臨時休校により、学習環境の確保だけでなく、保護者不在時の子どもの昼食や安全の確保の必要が生じたことで、これまで利用していなかったサービスや商品への関心が高まった様子がうかがえた。

すべての子どもの教育機会と生活を守れる「学び方」「暮らし方」「働き方」改革を

安倍首相の要請を受け、急遽、全国の多くの学校が臨時休校となったことで、子どもを持つ多くの家庭が、臨時休校中の子どもの生活・学習環境の確保、保護者の働き方を見直す必要に迫られた。
小学生の保護者を対象にした本調査からは、臨時休校以前には関心がなかった家庭の子どもも含め、臨時休校中、小学生の4人に1人が自宅学習手段として「オンライン学習」を利用したことや、利用者の満足度が高く、緊急時はもちろんのこと長期休校中や通常授業のある期間においても利用したいとする人が多いことなどが明らかになった。また、臨時休校中に利用しなかった人における利用意向も低くなかった。
最も望まれることは、新型コロナウイルス感染症拡大の終息、そして学校が再び子どもたちが安心して通える場所に戻ることであるが、他方で、今回の臨時休校をきっかけに多様な学び方への受容性が高まった気運を、今後、我が国が子どもたちの「学び方」の検討を続ける上で活かしていくべきであろう。
少子高齢化、労働力人口の減少が深刻化しつつある我が国は、すべての子どもたちの教育機会、安全安心な生活を守りながら、一方で多くの人が働ける環境を実現するために、今後どのように「学び方」、「暮らし方」、「働き方」をバージョンアップしていくべきかの検討を一層深めるべきだと考える。

ご参考

「新型コロナウイルス感染症発生に伴う臨時休校に関するアンケート」の実施概要

  • 【対象】

    通っている小学校が新型コロナウイルス感染症発生に伴う臨時休校になった小学1~6年生の保護者6,180人(各学年1,030人)

  • 【調査方法】

    インターネットアンケート調査

  • 【実施時期】

    2020年3月23日~24日

執筆者

武田 佳奈

未来創発センター 未来価値研究室

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

お問い合わせ先

【提言内容に関するお問い合わせ】
株式会社野村総合研究所 未来創発センター
E-mail:miraisouhatsu@nri.co.jp

【報道関係者からのお問い合わせ】
株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部
E-mail:kouhou@nri.co.jp