2020/04/20
要旨
- 野村総合研究所は、2020年3月27日~31日、全国の従業員500人以上の企業に勤める男女計6,184人を対象としたインターネットアンケート調査を実施した。
- その結果、新型コロナウイルス感染症拡大以降、2020年3月末までの間に在宅勤務を実施した人の割合は約2割で、そのうち半数以上が新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに初めて在宅勤務を経験した人だった。
- 在宅勤務やWEB・テレビ会議などを行った人の中に業務上の支障を感じた人は決して少なくなかった。それでも、それぞれの働き方に抵抗を感じにくくなったとする人も多く、今後、平常時でもそうした働き方を取り入れたいと2人に1人が回答した。
- また、在宅勤務やWEB・テレビ会議などの働き方が増えることは、共働き家庭における「仕事と家庭の両立」や「男性の家事や育児時間の増加」に効果的であると回答した人が目立った。
- 今回を機に、在宅勤務を含めたリモートワークを適宜取り入れた働き方が、大企業のみならず中小企業を含めた多くの企業のニューノーマルとなれば、これからの現役世代が「共働き」を選択、継続しやすくなることに寄与し、ひいては、アフターコロナでも変わらず日本が抱える社会保障の維持、少子化克服といった課題の解決にもつながると考える。
新型コロナウイルス感染症拡大以降、在宅勤務を実施した人は約2割。うちおよそ半数が初めて在宅勤務を経験
野村総合研究所が、2020年3月27日~31日に、全国の従業員500人以上の企業に勤める男女計6,184人を対象に実施したアンケート調査の結果によると、新型コロナウイルス感染症拡大以降、先月末(2020年3月末)までの間に、在宅勤務を実施した人の割合は22.2%で、そのうち52.6%が新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに初めて在宅勤務を経験した人だったことが分かった。特に、勤め先が新型コロナウイルス感染症対策として利用対象者を拡大したり、実施を推奨もしくは指示したことがきっかけとなり、今回初めて在宅勤務を経験したという人が多く見られた。
その他、社内打ち合わせをWEB・テレビ会議で実施した人も40.7%と高かった。しかし、在宅勤務と異なり、新型コロナウイルス感染症拡大以前より実施していた人の割合が75.5%と高かった。(図1、図2)
在宅勤務で業務上の支障を感じた人は少なくないが、平常時も含め今後の利用意向は高い
新型コロナウイルス感染症拡大以降、初めて在宅勤務を行った人のうち、およそ2人に1人(51.0%)が業務上の支障を感じたと回答した。(図3)一方、今後の利用意向については、初めて在宅勤務を行った人であっても62.2%が「緊急時だけでなく平常時でも、取り入れた働き方をしたい」と回答した。在宅勤務を実施した人の中で業務上の支障を感じた人は決して少なくなかったが、それでも、今後は緊急時だけでなく、平常時も在宅勤務を取り入れた働き方をしたいとする人が多いことが分かった。(図4)
自宅以外でのリモートワーク、WEB・テレビ会議などについても、今後は緊急時だけでなく、平常時も在宅勤務を取り入れた働き方をしたいとする人が多かった。(図5)
在宅勤務やWEB・テレビ会議などの働き方は「仕事と家庭の両立」や「男性の家事や育児時間の増加」につながる
新型コロナウイルス感染症拡大以降の働き方の変化によって、「在宅勤務などのリモートワーク、WEB・テレビ会議などを取り入れた働き方を行うことへの抵抗感を感じにくくなった」と回答した人は46.3%で、「在宅勤務などのリモートワーク、WEB・テレビ会議などを取り入れた働き方を積極的に取り入れていくべきだと思った」と回答した人も58.8%に及んだ。さらに、「在宅勤務などのリモートワーク、WEB・テレビ会議などを取り入れた働き方が増えることは、共働き家庭が仕事と家庭を両立していく上で役に立つ」と回答した人も55.9%であった。(図6)
実際、共働き世帯の30代40代の男性の4人に1人が新型コロナウイルス感染症拡大以降、家事・育児の実施量や頻度が増えたと回答した。「在宅勤務などのリモートワーク、WEB・テレビ会議などを取り入れた働き方が増えることは、父親が家事や育児を行う上で役立つ」と回答した人も46.9%に及んだ。(図7、図8)
進んだ在宅勤務やオンライン会議。抵抗感の緩和や仕事と家庭の両立への効果実感にもつながる
以上のように、本調査を実施した3月末時点では、自身や周囲が在宅勤務やWEB・テレビ会議を活用し始めたことで「抵抗を感じにくくなった」、「緊急時のみならず平常時でも取り入れていきたい」、「共働き家庭が仕事と家庭を両立していく上で役に立つ」と今回の働き方の変化を前向きに捉える人が多かった。筆者は、現在の現役世代の強い経済的不安感が少子化や消費低迷につながっていることから、現役世代が一定の経済的な見通しを持って家庭生活を営めるよう、希望する現役世代が夫婦ともに共働きを実現、継続できるようなさらなる環境整備の重要性を指摘してきた(注)。今回を機に、在宅勤務を含めたリモートワークを適宜取り入れた働き方が、大企業のみならず中小企業を含めた多くの企業のニューノーマルとなれば、これからの現役世代が「共働き」を選択、継続しやすくなることに寄与し、ひいては、アフターコロナでも変わらず日本が抱える社会保障の維持、少子化克服といった課題の解決にもつながると考える。
なお、4月7日の緊急事態宣言発令以降、対象となった地域を中心に、今まで以上に多くの人が在宅勤務に移行している。先述の3月末時点の前向きな評価は、比較的在宅勤務になじむ業務に従事していた人から在宅勤務への移行が進んだことや経験して間もなかったことが影響している可能性も否定できない。
NRIでは、主に緊急事態宣言発令以降、より多くの人において、在宅勤務やWEB・テレビ会議の活用を前提とする働き方が求められ、それが長期化していることの影響についても継続的に調査を行っていく。
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(注)
詳しくは、NRI JOURNAL「日本を持続可能な国にするために求められる現役世代の「窮屈からの脱却」」(2019/10/23)などをご覧ください。
https://www.nri.com/jp/journal/2019/1023
ご参考
「新型コロナウイルス感染症拡大と働き方・暮らし方に関する調査」の実施概要
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【対象】
全国の従業員500人以上の企業に勤める男女計6,184人
(就業構造基本調査による男女年齢別構成比に基づき割付回収) -
【調査方法】
インターネットアンケート調査
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【実施時期】
2020年3月27日~31日
執筆者
武田 佳奈
未来創発センター 未来価値研究室
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