汎用人工知能とは
Artificial General Intelligence(AGI)の日本語訳で、Generalすなわち「汎用性がある」AIという意味です。AIの当初の目的は、人のような知能をもつことでしたが、この問題を解決することが難しかったため、狭い範囲の個別タスクに対応するように開発されてきました。近年は、技術開発が進み、従来の目的であった人のような一般的な知能をもったAIが開発されるようになり、これを汎用人工知能(AGI)と呼んでいます。
強いAIと弱いAI
AIは、人間の感情を理解するという観点から2つの種類に分けて考えられてきました。すなわち「強いAI」と「弱いAI」という考え方です。
強いAIとは、人間に近い思考・知能を持ち、人間の感情を理解できるAIのことです。心を持っているAIと言うことができます。弱いAIとは、強いAIとは逆で、心を持たないAIです。データを分類するAI、ゲームを攻略するAI、自然言語処理に特化したAIなど、現在開発されているAIのほとんどは弱いAIです。弱いAIの代表の1つが、特定の分野において与えられた作業や役割を高度に処理する特化型AIです。また、2023年以降に急速に普及した生成AIも弱いAIです。生成AIはデータのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成することができますが、心を持たないため弱いAIに分類されます。
汎用人工知能に求められるもの
汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)とは「強いAI」と同義の言葉として使われています。様々な問題に柔軟に対応できる「汎用知能」である人間の知能を再現するAIのことを指しています。先述した特化型AIや生成AIが画像認識や言語処理といった特定分野に特化して高精度な問題解決を行うのに対して、AGIは未知の課題にも応用できる汎用性と適応力を持つことを特徴としています。
AGIに求められるのは、認識、推論、学習といった知識操作の基本的な能力に加え、自律的に学習し続ける力や自然言語での円滑なコミュニケーションです。新しい情報を吸収し、さまざまな状況下で人間と同様に複雑な問題に対して柔軟に取り組むことができるようになります。人間が定めた特定のタスクの解決のみならず、新たな問題・タスクの発見と、その自律的な解決ができるようになり、多様な問題への適用が期待できます。大規模言語モデル(LLM)が、AGIの基盤技術として注目を集めていますが、AGIが必要とする柔軟さにはまだ到達していません。
延長線上にある「人工超知能」
人工超知能は「ASI:Artificial Superintelligence」とも言われ、人間を超える知的能力を持ち、判断や推論、問題解決を高度に行えるAIです。ASIは人間が行うあらゆる知的活動を超え、科学研究や技術開発、医療診断、経済予測など多様な分野で卓越した能力を発揮するものと期待されています。
ASIは、AGIがさらに進化したもので、自己学習と自己進化を通じて知識と能力を拡張し続け、未知の課題にも迅速に適応できることが特徴です。人間が予測できないほどのスピードで知識を拡大し、自己改善を重ねることで、自律的な進化を遂げると考えられています。ASIは、人間の知的限界を超え、従来の知識では到達できない領域での洞察や解決策を提供することが見込まれています。
AIの分類
出所)野村総合研究所作成
動画で解説
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