SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは
社会の持続可能性に資する長期的な価値提供を行うことを通じて、自社の長期的かつ持続的な成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上と更なる価値創出へとつなげていくため、経営や事業を変革(トランスフォーメーション)させること。
(読み:エスエックス)
「伊藤レポート」にて強調されたSX実践の重要性
伊藤レポートとは、2014年8月に経済産業省より公表された「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書の通称にあたります。レポート名は座長である伊藤邦雄氏の名前に由来しています。後続となる伊藤レポート2.0が2017年に、伊藤レポート3.0が2022年にそれぞれ公表されています。これら一連の伊藤レポートでは、イノベーションに向けた長期資金の確保、投資家との建設的な対話や協創関係、ESGの考慮や無形資産投資などの重要性が指摘されてきました。伊藤レポート3.0では、特に、企業の長期的・持続的な価値創造のためにSXの重要性が強調されました。
目指す姿から逆算した長期価値創造に資する戦略の構築・実践
伊藤レポート3.0では、SXに向けた取り組みとして以下3点が重要と整理されています。
1.社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化
伊藤レポート3.0では、企業はまず社会にどのような価値を提供し、どのように長期的な価値向上を続けるかを示す目指す姿を明確にすることが重要としています。そのために、企業・社員の行動の判断軸となる価値観を明確にし、自社が解決すべき社会の重要課題を特定することの重要性を指摘しています。
2.目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築
目指す姿を踏まえ、長期価値創造を実現するための戦略を策定することが次のポイントとなります。どのようにビジネスモデルを構築・変革するか、どのようなリスクと機会が想定されるかを把握します。それらをもとに統合的に戦略を構築します。その上で、現状とのギャップを明らかにし、有形・無形資産への投資を含む短・中・長期の計画を策定することが重要とされています。
3.長期価値創造を実効的に推進するためのKPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ
戦略の推進にあたっては、どのように実効性を担保するかが重要となります。伊藤レポート3.0では、KPIの設定とガバナンス体制の整備の重要性について指摘しています。さらに、投資家等との間で長期的な企業価値向上に向けた対話を通じ、目指す姿・戦略・ガバナンス体制に関する一連の価値創造ストーリーを磨き続けることが重要とされています。
SXは新しい経営のあり方を示す道しるべ
産業界では、ESG投資や脱炭素政策を受けて、社会の持続可能性に関する認識が見直されています。気候変動や人権をはじめサステナビリティに関する課題は企業の持続可能性に影響を及ぼすようになりました。さらに、それら新しい課題の重要性が高まることで、脱炭素ビジネスなど新しい事業機会が出現するとともに、人的資本など価値創造につながる無形資産が重要視されるようになりました。これらの変化が意味することは、サステナビリティへの対応が、企業にとって単なるリスク対応を超え、持続的な価値創造に向けた経営の重要な要素になったことを示しています。SXはそうした中での経営のあり方、つまり、新しい稼ぎ方を示すものです。