「選択的シングル」とは

「選択的シングル」とは、「結婚は希望しておらず、選択的に未婚である状態」を指し、平均寿命の延伸、初婚年齢や離婚率の上昇、女性の社会進出及び経済的自立、性や家族のあり方の多様化などから、注目が高まっている属性です。

「選択的シングル」時代の到来

平均寿命の延伸や、女性の社会進出及び経済的自立などの社会的変化から、結婚や家族に対する価値観の変化も発生しています。結婚することが当たり前とされていた「皆婚」時代と異なり、事実婚やパートナーシップ制度など家族のあり方を多様な選択肢から選択できる時代となりました。生涯シングルでいる、既婚とシングル(離別)を繰り返す、死別してシングルになるなど、個人が人生においてシングルでいる期間がこれまでと比較して長くなることが予想されます。
「選択的シングル」とは、「結婚を希望しておらず、選択的に未婚な状態」を指します。「選択的シングル」の中でも、時間やお金を自分のために使えることに価値を感じて、積極的にシングルを謳歌する人と、生活に時間的・金銭的に余裕がない中でも、自らの価値観でシングルを享受する人に二分されます。
シングルである期間を、ウエルビーイングを保って生きるための準備は、現在の婚姻状態に関わらず、誰もが考えておくべき事項ですが、シングルという期間や生き方を対象とした商品・サービスや制度などが発展途上であることも課題となっています。

図表1 皆婚時代から「選択的シングル時代」への変遷

皆婚時代から「選択的シングル時代」への変遷

出所:NRI作成

図表2 個人の一生におけるシングルの期間・パターンの違い

個人の一生におけるシングルの期間・パターンの違い

出所:NRI作成

「選択的シングル」のウエルビーイングの実現と今後ニーズの高まる商品・サービス

現在シングルの人が利用してみたいサービスとして、体調不良・緊急時対応サービス、身元保証サービス、死後の事後代行などの今後に備えたサービスの需要が高く、不安を予め解消しておくことを目的としたこれらのサービスは、人々がウエルビーイングを保って生きるための準備に該当します。
また、シングルでいる期間を長く続けるのであれば、他人とゆるいつながりを持っておくことも重要であり、一方で、コミュニケーションとプライバシーのバランスも重要視されます。住宅の例でいうと、プライベートが守られる独立した個室に加え、キッチン・ラウンジなどの共有部分が設けられた住居形態であるソーシャルアパートメントは、今後「ひとりで居たいが、ゆるく他者とつながっていたい」というシングルのニーズに応える一つの商品であると言えます。ソーシャルアパートメントは、家賃を抑えることを目的としたシェアハウスと比較して、住人同士の交流を目的とした入居者が多く、清掃などサービスを充実させることにより住民同士の衝突も防ぐ新しい形態の住まい方になります。
また、仕事以外での生活の張り合いや人とのつながりを求めるとき、ペットよりも家庭に迎えるハードルが低い家族型コミュニケーションロボットなどを相棒として生活するという選択も増えるかもしれません。
シングルとして生活する期間が長くなり、また積極的にシングルでいることを選択する人の存在が確認できる現代において、シングル期間を自分らしく幸せに生きるための準備をすることに加え、行政に対しては、シングルという生き方を選択する人々が孤立しないような制度の整備なども今後必要になると考えられます。