スキルベース組織とは

学歴や職歴や肩書きではなく、特定の職務・役割で実際に必要なスキル及びコンピテンシーを基盤とし、人材獲得、人材開発、人材配置を行う組織です。従業員の持つスキルを組織運営の基盤とする考え方の組織設計・運営です。

スキルベース組織が注目される背景と特徴

現代のビジネス環境は、変化が激しく予測困難なVUCA時代と言われています。このような状況下で、組織が柔軟かつ迅速に対応し、持続的な成長を遂げるためには、職務ごとに必要なスキルや特性を明確化した従来の職務記述に規定するのではなく、個々の従業員のスキルに着目した組織運営が求められおり、近年、その重要性が増しています。
「スキル」とは、業務遂行に必要な専門知識や技術力に留まらず、問題解決能力、コミュニケーション能力、リーダーシップ、適応力といった、いわゆるコンピテンシー全般を指します。
スキルベース組織とは、従業員の持つスキルを組織運営の基盤とする考え方であり、以下の特徴があります。

図表1　スキルベース組織の特徴

出所：野村総合研究所（NRI）作成

スキルベース組織とジョブ型組織との違い

スキルベース組織と関連する概念としてジョブ型があります。ジョブ型組織は、特定の職務（ジョブ）を定義し、その職務に必要なスキルを持つ人材を採用・配置する人事制度です。ジョブ型雇用は、スキルベース組織における人材配置の一つの方法として捉えることができます。
スキルベース組織は、専門性を高めるジョブ型の考え方に加え、従業員のスキルに基づき柔軟にチームを組成するといった特徴があります。これにより、組織の安定性を保ちつつ変化へ迅速に対応し、限られた人材の価値を最大限に引き出すことが可能になります。
チーム組成に際し、Two Pizza Ruleという考え方があります。「2枚のピザでまかなえる人数」つまり、5~10人程度の少人数チームが最適であるという考え方です。この規模感のチームの方が、メンバー間のコミュニケーションが円滑になり、迅速な意思決定や高い生産性を維持できるとされています。
スキルベースの視点で、プロジェクトの規模や複雑さ、必要なスキルを勘案し、Two Pizza Ruleを参考にチーム編成を行うことで、より効率的・効果的な組織運営が可能になります。

スキルベース組織のメリット

スキルベース組織は、生産性の向上、スキル開発の促進、人材不足の解消、ダイバーシティの実現、エンゲージメントの向上などに効果的であると考えられます。
スキルベースの組織のメリットの一つは、臨機応変なチーム組成が可能になることです。社員のスキルを見える化し、部署の垣根を越えてプロジェクトに参加できる仕組みにより、事業課題に対して最適な人材を迅速に集めて臨機応変にチームを組成し、ビジネスチャンスを逃さず事業成長につなげることができます。
また、スキルベース組織においては、社員が自らのスキルを活かせる業務に従事できるため、仕事への満足度が高まり、自己成長を実感しやすくなります。スキル開発の機会が増えることで、従業員のモチベーション向上にも寄与します。
さらに、多様な働き方との親和性が高い点も挙げられます。スキルを共通言語とすることで、特定の職務や雇用形態に縛られず、社内外の多様な人材をプロジェクトに組み込むことが容易になります。例えば、フルタイム従業員だけでなく、特定の業務に対して単発で従事するギグワーカーなど、多様な人材のスキルを組み合わせて業務を遂行することより、人材不足の解消や、組織のダイバーシティの実現にもつながります。

図表2　スキルベース組織の導入メリット

出所：野村総合研究所（NRI）作成

スキルベース組織の課題と効果的な導入方法

スキルベース組織は、VUCA時代において、組織が持続的な成長を遂げるための有効な手段の一つと言えるでしょう。ただし、導入にあたっては、スキルの評価方法、公平性の確保、従業員のキャリア開発支援など、さまざまな課題を考慮する必要があります。
例えば、ジョブよりもスキルを重視するため、スキルの多面的な捉え方や評価方法に配慮が必要となります。また、マッチングの際にAIなどを活用する場合には、AIの判断の正確性やデータの取り扱いに注意が必要です。
こうした課題を解消し、スキルベース組織を円滑に運営していくために肝となるのは、「タレントマーケットプレイス」と呼ばれるプラットフォームを構築することです。タレントマーケットプレイスは、社内人材市場を形成し、現場のニーズベースで人材・業務を自律的に結びつける環境を用意することで、スキル情報抽出と柔軟なマッチングを実現します。

図表3　NRIの提供するTMP（TALENT MARKET PLACE.）が促す経営・業務・システムの変革

出所：野村総合研究所（NRI）作成