これまでの日本は、東京を中心とする大都市圏が頂点となり、地方圏と相互に依存しあいながら国全体の経済を発展させてきた(左図)。地方圏は大都市圏に人やエネルギーを供給し、大都市圏は地方圏に資金を提供してきた。しかし、人口が急減し、気候変動への対応という地球規模の課題も迫られる今、その中央集権的なモデルは限界を迎えている。もはや、大都市圏の成長の余力はないのだ。
そこで提唱されるのが「デジタルローカルハブⓇ」(右図)である。これは、地方都市がデジタルの力を使い、世界や大都市と直接つながる(ハブになる)ことで、自立した経済圏をつくるという構想だ。これまでの「中央や規模に依存する」姿勢を転換し、地域の切実な「課題」を起点にボトムアップ型で変革していく。地方を東京の下支えから、世界と戦える「独立したプレーヤー」へと進化させる戦略である。
具体的には、三つの要素が鍵となる。第一に、その土地ならではの資源(再生可能エネルギー、食、観光など)をデジタル技術で高付加価値化し、「外貨」を稼ぐ産業へと育てること。第二に、物理的な距離の壁をデジタルで取り払い、世界中の優秀な人材や先端企業と直接協業できる基盤を整えること。そして第三に、地域課題を「イノベーション」の糧にすることである。デジタルで生活の質を高め、脱炭素などの社会課題を解決することで、人々が「住みたい」「関わりたい」と思える魅力的な空間を生み出すのだ。
かつての「地方創生」は、しばしば大都市圏から機能を移転させることに主眼が置かれていた。しかし、これからは違う。地方が自らの手で、独自の産業と生活の質をデザインし、デジタルという武器を使って自律的に未来を切りひらく。そうした「自立経済都市(圏)」が日本各地に点在し、ネットワークでつながる「複眼型」の国土構造こそが、人口減少社会において有効となろう。
デジタルローカルハブの概念と必要性

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執筆者情報
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- 執筆者
- 神尾 文彦
- 所属・職名
- 未来創発センター長 研究理事
お問い合わせ先
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NRI 未来創発センター研究レポート担当