野村総合研究所(NRI)のINSIGHT SIGNAL(インサイトシグナル)事業(https://www.is.nri.co.jp/)では、マーケティング領域全般に関するコンサルティングや社会提言、情報発信を目的として、関東1都6県の一般生活者を対象としたアンケート調査を毎週末に行い、ニュースやトレンドが人々の行動に与える影響を継続的に分析している。本稿では、その一環として今春導入された自転車の「青切符」制度に着目し、同制度の導入が生活者の意識や行動にどのような影響を与えているか、調査した結果を紹介する。
図1は一般生活者における自転車「青切符」制度の認知状況、図2は具体的な違反内容の認知状況を示したものである。
図1:自転車「青切符」制度の認知率(複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年4月、N=2,723)
図2:自転車「青切符」制度認知(複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年4月、N=2,723)
「わかりやすい違反」については高い認知
まず、具体的な違反内容を提示しない状態における自転車「青切符」制度の認知としては、「制度も具体的な違反内容(罰金など)も知っている」(33.9%)と「制度は知っているが、具体的な違反内容はよく知らない」(52.9%)を合わせると、約87%が青切符の存在を認識している。違反内容を提示した場合、個別の違反認知については、「スマホを手に持ちながらの運転」(82.3%)や「傘さし運転」(80.0%)といった、視覚的に危険性が明白な「わかりやすい違反」の認知度は高い。
基礎的ルールの認知不足
一方で深刻なのは、日常的に無意識に行われがちな違反の認知度が低い点である。「指定場所での一時不停止」(68.7%)、「(車道の左側ではなく、)車道の右側を走る」(67.7%)、「信号のない横断歩道で、歩行者がいるのに止まらない」(65.1%)などは、軒並み認知度が6割台にとどまっている。自転車は老若男女問わず免許不要で乗れる乗り物であり、広く利用が浸透しているからこそ、違反認知が6割台であることは、逆に3割弱の人においては危険な運転をされる可能性を意味しており、自転車利用ルールの認知浸透が課題であるといえる。また、今後警察の指導・検挙が本格化する中で「違反内容を知らずに反則金を切られた」というケースが多発すれば、自転車利用そのものを敬遠する層が増えることも考えられる。
図3は自転車利用者における青切符制度の導入に伴う自転車の利用頻度や使い方の変化、図4は自転車利用を実際に減らした人における代替交通手段を示したものである。
図3:青切符制度の導入に伴う、自転車の利用頻度や使い方の変化
(自転車利用者、複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年4月、N=1,336)
図4:自転車の代わりとなる交通手段(自転車利用を減らした人、複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年4月、N=411)
物理的な移動の抑制と代替手段の選択
自転車利用者の約4割が何らかの行動変容を起こしていることがわかった。特に「自転車に乗る回数自体を減らした」(21.9%)、「雨の日は自転車に乗らないようにした」(14.1%)といった、安全を優先した移動の抑制が多い(図3)。利用を控えた層の代替手段としては「徒歩」(77.1%)が圧倒的だが、「バスや電車などの公共交通機関」(36.7%)や「自家用車」(22.6%)へのシフトも進んでいる。また、「外出や買い物を我慢している」(5.8%)という回答もみられた(図4)。
「ながらスマホ」厳罰化がもたらす買い物の近隣化・目的化
また、「スマホで地図を見ながら店を探すのをやめた」(9.3%)や「行き慣れない遠くの店より、近所の店で買い物をするようになった」(8.0%)という変化もあった(図3)。走行中のスマホ利用は極めて危険であることはもとより、明確に罰則の対象となったことから、自転車で走りながら店を探すことをやめ、「事前検索による目的買い」や「生活圏内での完結」へとシフトしていくことも考えられる。
【結び】「青切符導入」は「日常の気軽な足」という自転車への認識について、転換を求める制度変更だったといえる。今回の調査から、本制度の導入が生活者の行動に明確な変化をもたらすことが確認された。
【ご参考】調査概要
| ■調査名 | 「NRIインサイトシグナル調査」 |
|---|---|
| ■実施時期 | 2025年4月 |
| ■調査方法 | インターネット調査 |
| ■調査対象 | 関東1都6県における満15~69歳の男女個人 |
| ■有効回答数 | 2,723人 |
| ■主な調査項目 | 商品の購入状況、利用状況、商品ブランドイメージ、企業イメージ 商品の広告認知、広告好感度、広告メッセージ認知 生活価値観、消費価値観、イノベータ度、就業状況 各種インターネットサービス利用状況 基本属性 |

自転車「青切符」導入に伴う行動変容
執筆者情報
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- 執筆者
- 林 裕之
- 部署
- マーケティング戦略コンサルティング部
- 所属・職名
- チーフコンサルタント
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