野村総合研究所(NRI)のINSIGHT SIGNAL(インサイトシグナル)事業では、マーケティング領域全般に関するコンサルティングや社会提言、情報発信を目的として、関東1都6県の一般生活者を対象としたアンケート調査を毎週末に行い、ニュースやトレンドが人々の行動に与える影響を継続的に分析している。本稿では、その一環として2026年5月の電気料金改定に着目し、2026年5月の電気料金改定(補助金終了および再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価改定)が生活者の意識や行動にどのような影響を与えているか、調査した結果を紹介する。

認知と危機感の乖離:電気料金は防衛的意識へ

2026年5月検針分(4月使用分)から、政府による「電気・ガス料金の補助金」が終了し、また電気料金に上乗せされている「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が単価改定によりさらに電気料金が高騰することになった。図1は電気料金制度の変更内容に対する認知状況、図2は電気代高騰に対する家計状況への意識について示したものである。

図1:電気料金制度の変更内容に対する認知状況(単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年5月、N=3,202)

図2:電気代高騰に対する家計状況への意識(単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年5月、N=3,202)

電気料金制度の詳細な変更内容を「詳しく知っている」層は全体で約13.5%に留まる一方、約6割が昨今の電気代高騰に対して危機感を抱いている。制度の詳細理解よりも、「電気代高騰」という現象が家計を圧迫しているという実感が、生活者の防衛本能を強く刺激している状況が見て取れる。
図2のデータを属性別に見たものが図3である。30代から50代の中間層や世帯年収が低い層ほど「非常に危機感があり、支出を大幅に見直している」や「危機感はあるが、具体的な対策はまだできていない」割合が高く、家計防衛が切実な課題となっていることが浮き彫りとなった。

図3:電気代高騰に対する家計状況への意識(年代別・世帯年収別、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年5月、N=3,202)

「我慢」から「エネパ」への価値転換

図4は電気代高騰に対し、電気代を抑える対策として考えていることの状況、図5は現在の住まいや次回の住み替えにおける「電気代を賢く管理できる住宅」に対する関心度を示したものである。

図4:電気代を抑える対策として考えていること(複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年5月、N=3,202)

図5:現在の住まいや次回の住み替えにおける「電気代を賢く管理できる住宅」に対する関心度(単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年5月、N=3,202)

電気代対策として、「エアコンの設定温度を上げるなど、我慢して節電する」(35.9%)を選択する層がいる一方で、「扇風機やサーキュレーターと併用して運転効率を高める」(39.8%)、「高機能遮光カーテンや断熱シートで室温を上げない工夫をする」(23.5%)といった、生活の質を落とさない対策への関心も高い。
この傾向は特に年収が高い層や、既婚世帯において顕著である。今回の調査からは、生活の質を維持しながら電気代を抑えようとする「エネパ」志向の対策と、設定温度の調整など我慢を伴う節電とが、生活者の中で並存している実態が確認できる。

住環境への関心拡大:節電行動から住宅性能へ

図4で見たような日常の節電対策は、生活者にとってまず取り組みやすい家計防衛策である。一方で、その関心は家電の使い方や暑さ対策グッズにとどまらず、住宅の断熱性能や省エネ設備など、住まいそのものを通じて電気使用量を抑え、毎月の電気代をできるだけ抑えたいという意識にも広がっている。
実際、「電気代を賢く管理できる住宅」への関心度については、全体の約47%(「非常に関心が高い」9.0%+「やや関心が高い」38.1%)が関心ありと回答した。特に年収が高い層ほど関心が高く、エネルギー管理を通じて生活コストを見通しよく捉え、住まいを通じて合理的に管理したいという意識として受け止められていると考えられる。
一方で、「あまり関心がない」「全く関心がない」と答えた層も約53%存在し、特に60代以上の高齢層などでは、設備投資を伴うエネルギー管理へのハードルが依然として高い。すなわち、電気代高騰を受けた住環境への関心は一定程度広がっているものの、住宅設備への関与度には温度差がみられる。

オール電化に対する評価:期待だけでなく災害時の脆弱性も意識

こうした住宅性能への関心の延長線上で、生活者が具体的な住まいの選択肢としてどう見ているかを確認したのが、図6のオール電化に対する評価である。オール電化住宅に対する生活者の姿勢は、単純な肯定でも否定でもなく、電気代管理のしやすさや利便性への期待と、災害時の不安が共存する構造になっている。

図6:オール電化の導入や継続への懸念状況(2つまで、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年5月、N=3,202)

導入や継続を懸念する理由として最も多く挙げられたのは、「停電時の不安(ライフラインがすべて止まること)」(47.9%)であり、次いで「電気代高騰時のリスク(『全エネルギーが電気』という逃げ場のなさ)」(40.4%)が続いた。つまり、生活者はオール電化を電気代管理の文脈だけで見ているのではなく、平時の効率性と有事の脆弱性を同時に評価していることが分かる。
また、停電時の不安は属性によって差がみられ、女性が54.6%と男性の41.9%を12.7ポイント上回った。背景には、家庭内での家事従事時間に依然として男女差が存在することがあると考えられる。総務省「社会生活基本調査」によれば、共働き世帯においても妻の家事時間は夫を大きく上回っており、男女差は縮小傾向にあるものの解消には至っていない。停電は調理・冷蔵・洗濯・照明など、家事インフラ全般の停止に直結するため、日常的に家事に多く関わる層ほど、停電時の生活影響をより具体的にイメージしやすく、不安として表れていると推察される。さらに、既婚・子供あり世帯でも48.5%が停電時の不安を挙げており、子育てや家族の安全確保の観点から、オール電化に対して慎重な視線が向けられていると考えられる。
このように、オール電化の懸念として停電時の不安が最上位に挙がる結果からは、生活者は利便性や電気代管理のしやすさといったプラス面だけでなく、停電時のライフライン停止というマイナス面も同時に意識していることが読み取れる。

【結び】
今回の調査からは、電気代高騰を受けた生活者のエネルギーへの向き合い方として、日々の節電行動にとどまらず、住宅の断熱性能や省エネ設備への関心まで一定程度広がっている実態が確認された。
その際に生活者が重視しているのは、単に節電することだけではない。快適性を保ちながら電気代を抑えること、そして停電などの有事における生活影響にも目配りすることである。今回の調査結果は、住宅や家電が、家計コストと災害時の安心感という2つの観点から評価されていることを示している。電気料金の改定が今後も続くことが見込まれるなか、生活者が住宅や家電を「電気代と災害時リスクの両面で選ぶ」視点は、住宅事業者・家電メーカー・エネルギー事業者のいずれにとっても、商品設計やコミュニケーションのあり方を考えるうえで重要な手がかりとなるだろう。

【ご参考】調査概要

■調査名 「NRIインサイトシグナル調査」
■実施時期 2026年5月
■調査方法 インターネット調査
■調査対象 関東1都6県における満15~69歳の男女個人
■有効回答数 3,202人
■主な調査項目 商品の購入状況、利用状況、商品ブランドイメージ、企業イメージ
商品の広告認知、広告好感度、広告メッセージ認知
生活価値観、消費価値観、イノベータ度、就業状況
各種インターネットサービス利用状況
基本属性

電気代高騰に伴う家計防衛意識と「エネパ」の追求

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執筆者情報

  • 執筆者
    林 裕之
    部署
    マーケティング戦略コンサルティング部
    所属・職名
    チーフコンサルタント
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