野村総合研究所(NRI)のINSIGHT SIGNAL(インサイトシグナル)事業では、マーケティング領域全般に関するコンサルティングや社会提言、情報発信を目的として、関東1都6県の一般生活者を対象としたアンケート調査を行い、ニュースやトレンドが人々の行動に与える影響を継続的に分析している。本稿では、その一環として、近年海外を中心に注目を集める「ニュースポーツ」や「イーターテイメント」といった新しいスポーツ・娯楽の形に着目し、生活者がこうした体験にどのような関心や価値観を抱いているか、調査した結果を紹介する。

スポーツは「する」より「みる」もの

スポーツとの関わり方は、「する」だけでなく「みる」など多様な形に広がっている。図1は、スポーツを「する」こと、「みる」ことそれぞれへの好意度を示したものである。(調査においては「好き」「やや好き」「やや嫌い」「嫌い」の4段階で質問しており、内「好き」「やや好き」と回答した人をグラフに表している)

図1:スポーツを「する」「みる」ことへの好意度(単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

スポーツを「観戦することが好き+やや好き」と回答した層は全体で66.1%にのぼり、「実施することが好き+やや好き」の54.6%を上回った。このように「みる」が「する」を上回る傾向は、属性によって表れ方が多少異なるものの、性別・年代を問わず幅広い層で共通してみられており、生活者にとってスポーツが、自ら身体を動かして取り組む対象であると同時に、楽しんで眺めるエンターテイメントとしても広く受け止められている様子がうかがえる。
次に属性による傾向の違いを見てみよう。男性では実施・観戦ともに高い水準を保ち、特に男性50代では観戦好意度が78.1%に達する。一方、女性では「する」好意度が20~40代で40%台前半にとどまる半面、「みる」好意度は50~60代で60%前後と相対的に高い。年齢が上がるほど、また女性ほど、自ら実施することへの距離感がうかがえるが、観戦への好意度は各世代で実施を上回る水準にある。
この「みる」優位の傾向は、実際の行動頻度にも表れている。スポーツや運動を「ほとんどしない」層は全体で52.6%と半数を超え、特に女性30代では64.3%に達する。一方、テレビやインターネット配信での観戦を「ほとんどしない」層は40.5%であることから、実施に比べると観戦の方が裾野は広い。生活者の多くにとって、日常的にスポーツと接する入口は「自ら行う」ことよりも「画面を通じて眺める」ことになっている様子がうかがえる。

スポーツを楽しみたい気持ちに立ちはだかる「ハードル」

では、生活者がスポーツをもっと楽しみたいと感じたとき、何がその気持ちを押しとどめているのだろうか。図2は、スポーツや運動を「もっと楽しみたい」「もっと実施したい」と思ったときに障害となることを尋ねた結果である。

図2:スポーツを楽しむうえでのハードル・障害(複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

最も多く挙げられたのは「体力に自信がない・疲れる」34.5%であり、次いで「お金がかかる」30.4%、「時間がない」29.6%が続いた。さらに「一緒にやる相手・仲間がいない」23.5%、「上手くないので恥ずかしい・気後れする」16.5%といった、費用や時間だけでない心理的・社会的なハードルも一定の割合で存在する。生活者は「やってみたい」という気持ちと、「体力」「お金」「気後れ」といった現実的・心理的な壁の間で揺れている状況が見て取れる。

これらの障害は属性によって表れ方に差がみられる。図3は、「体力に自信がない」「上手くないので恥ずかしい」の2項目を性年代別に示したものである。

図3:「体力」「恥ずかしさ」をハードルと感じる割合(性年代別、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

「体力に自信がない・疲れる」は女性40代で47.2%、女性50代で41.5%と高く、男女ともに年代が上がるにつれて高まる傾向がある。また「上手くないので恥ずかしい・気後れする」は、男性が概ね10%台前半であるのに対し、女性20代18.8%、女性30代21.0%、女性40代25.0%と、若い女性層で顕著に高い。背景には、人前で運動する場面において、見た目や上手さを気にする意識が女性で強く働きやすいことがあると推察される。生活者がスポーツを楽しむうえでは、体力面の負担だけでなく、「うまくできない姿を見られたくない」という気後れもまた、無視できない障壁として受け止められていることがうかがえる。

ニュースポーツへの関心と「みる」スポーツ

こうした「みる」志向の強さや、スポーツを楽しむうえでのハードルを背景に、従来の競技スポーツとは異なる新しいスポーツの形が、海外を中心に注目を集めている。試合時間を短くし(タイムパフォーマンスを高め)、ルールを分かりやすくして得手不得手を問わず参加でき、音楽や演出でエンターテイメント性を高めた「ニュースポーツ」である。観戦して楽しむだけでなく、手軽に短時間で・上手下手を気にせず楽しめる点に特徴があり、「みる」「する」両面でハードルを下げる存在として位置づけられる。図4は、こうしたニュースポーツが日本で広く見られるようになった場合の視聴意向を示したものである。

図4:ニュースポーツの視聴意向(単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

「見たい+どちらかといえば見たい」と回答した層は全体で24.0%であった。性年代別にみると、男性30代30.4%、男性40代27.7%、女性30代27.6%など、20~40代の比較的若い層で関心が高い一方、男性60代17.9%、女性60代19.2%と年代が上がるにつれて関心は下がる傾向がうかがえる。新しい観戦の形は、デジタルな娯楽に親しんだ若い世代を中心に受け入れられやすいと考えられる。
では、視聴意向を持つ層は、どのような点に魅力を感じているのだろうか。図5は視聴意向層を対象に、ニュースポーツが持つ特徴それぞれへの魅力度を示したものである。

図5:ニュースポーツの特徴に感じる魅力(ニュースポーツを見たいと回答した人、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

「試合が30分~2時間程度で完結し、テンポよく観戦できること」に魅力を感じる層が72.7%と突出して高く、次いで「有名ストリーマーや元プロ選手、芸能人などが参加し、推している人物のプレーを観られること」が55.9%と続いた。一方、「ダイスや必殺カードなどゲーム的なギミック」45.7%、「視聴者が盛り上がりに参加できること」44.5%は相対的にやや低い。生活者がニュースポーツに期待しているのは、奇抜な仕掛けそのものよりも、まず「短く・分かりやすく・間延びせずに楽しめる」というタイムパフォーマンスのよさであり、加えて「推している人物を応援できる」という親しみやすさであると受け止められる。ルールの分かりやすさや演出によるエンターテイメント性は、競技に詳しくない層や得手不得手を気にする層をも観戦・参加に呼び込む土台になっていると考えられる。
なお、視聴形態としては「自宅でテレビ放送」64.1%、「自宅でインターネット配信」46.8%が中心であり、「会場での観戦」45.2%も一定の支持を集める。新しいスポーツであっても、生活者はまず手軽に自宅から接することを望みつつ、関心が高まれば会場へ足を運ぶ余地もあるという、段階的な関わり方を想定している傾向がうかがえる。

「する+集まる」場へ ― イーターテイメントへの関心

スポーツとの関わり方が多様化するなか、「する」体験のハードルを下げる新しい形も登場している。パターゴルフやダーツといったアクティビティを「する」体験と「飲食」を組み合わせた娯楽施設、いわゆる「イーターテイメント」である。その価値は単に「食べながらスポーツをする」ことにとどまらず、スポーツが苦手な人でも気軽に誘い合える、準備や持ち物、人数を気にせず集まれるといった、人と人とが会う機会・集まる場としての側面にあると考えられる。図6はこうした施設への来訪意向、図7は体験に期待することを示したものである。

図6:イーターテイメント施設への来訪意向(単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

図7:イーターテイメント施設へ期待する体験
(イーターテイメントを利用したいと回答した人、複数回答、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

「行きたい+どちらかといえば行きたい」と回答した層は全体で24.1%であった。男性30代32.1%、女性20代29.7%など若い層で関心が高い点は、ニュースポーツと共通している。
体験に期待することとしては、「食事や会話をしながら楽しめること」53.7%が最も高く、次いで「天候に左右されずに楽しめること」48.8%、「スポーツの得手不得手にかかわらず楽しめること」44.0%、「短時間から気軽にスポーツを楽しめること」43.5%が続いた。ここで注目されるのは、上位に挙がった項目の多くが、スポーツの上手さや体力そのものよりも、「気軽さ」「快適さ」「一緒に過ごす時間」に関わるものだという点である。
この傾向は、先に見たスポーツのハードルと重ね合わせると理解しやすい。「体力を使わずに済む」「着替えを準備せずに楽しめる」「汗をかかずに楽しめる」といった期待は、生活者がスポーツに対して抱いていた気後れや負担感に対応するものといえる。とりわけ「得手不得手にかかわらず楽しめること」は女性50代56.8%、女性60代62.1%と高く、自ら運動することに距離を感じやすかった層ほど、上手さを問われない体験に魅力を感じている様子がうかがえる。生活者はイーターテイメントに、スポーツの腕前を競う場ではなく、飲食や会話を交えて仲間と過ごす時間そのものを期待していると受け止められる。着替えや道具などの準備が要らず、人数の制約も少ないため、ふだん運動に縁のない相手でも気軽に誘いやすく、人と会う・集まる機会そのものを生み出す場として価値づけられているといえる。
利用シーンとしても「友人・知人とのカジュアルな集まり・飲み会」41.1%、「家族でのお出かけ・休日のレジャー」37.8%が上位を占め、誰と利用したいかという問いでも「友人・知人」53.3%が最も多い。スポーツを軸としながらも、その本質は人と人とが集まる社交の場として捉えられていることがうかがえる。
価格についてはどうか。図8は、2~3時間程度・飲食代込みで1人あたり支払ってもよい金額を示したものである。

図8:イーターテイメントの許容価格帯(イーターテイメントを利用したいと回答した人、単位:%)

出所)NRIインサイトシグナル調査(関東1都6県における満15~69歳の男女個人、2026年6月、N=3,018)

「3,000円以上~5,000円未満」が45.7%と最も多く、「1,000円以上~3,000円未満」26.1%がこれに続く。生活者の多くは、外食に飲食代を加えた程度の、日常の延長線上にある価格帯でこうした体験を楽しみたいと考えている傾向がうかがえる。
なお、こうした体験型施設への関心は、イーターテイメントに限られない。高精細な360度映像とリアルな音響でスタジアムの特等席のような臨場感を味わえるパブリックビューイング施設には26.0%が、複数のスポーツゲームと飲食を一施設で楽しめる大型ソーシャルスポーツコンプレックスには24.3%が利用意向を示した。「みる」「する」「食べる」をひとつの空間で完結させる複合的な体験への関心が、一定程度みられる。

【結び】

今回の調査からは、生活者がスポーツを「自ら頑張って取り組むもの」というより、「気軽に・仲間と・楽しく過ごす時間」として捉えている様子が確認された。
スポーツへの関わりは「する」より「みる」が優位にあり、いざ「もっと楽しみたい」と思っても、体力や費用、そして「上手くできない姿を見られたくない」という気後れが妨げとなる。そうしたなかで、短時間で・分かりやすく・得手不得手を問わず楽しめるニュースポーツや、準備や人数を気にせず仲間と集まれるイーターテイメントといった新しい潮流は、いずれも生活者が抱える「ハードル」を解消する形で受け止められ、関心を集めている。
その際に生活者が重視しているのは、本格的な競技性や勝敗そのものではない。短時間で・気軽に・誰かと一緒に・上手下手を気にせず楽しめること ― こうした"ハードルの低い余暇体験"への関心は、若年層を中心としつつも、運動に距離を感じやすい女性層・中高年層にも一定程度みられる。とりわけ、これまで自ら運動することに距離を感じやすかった女性層や中高年層において、こうした体験への期待が表れている点は注目される。
ニュースポーツやイーターテイメントといった新しい潮流は、スポーツ・娯楽・外食・交流といった従来は別々だった領域を結びつけながら、生活者の余暇の選択肢を広げていくと考えられる。

【ご参考】調査概要

■調査名 「NRIインサイトシグナル調査」
■実施時期 2026年6月
■調査方法 インターネット調査
■調査対象 関東1都6県における満15~69歳の男女個人
■有効回答数 3,018人
■主な調査項目 商品の購入状況、利用状況、商品ブランドイメージ、企業イメージ
商品の広告認知、広告好感度、広告メッセージ認知
生活価値観、消費価値観、イノベータ度、就業状況
各種インターネットサービス利用状況
スポーツ実施・観戦、ニュースポーツ/イーターテイメントへの関心 等
基本属性

「するスポーツ」から「みる・楽しむスポーツ」へニュースポーツ・イーターテイメントにみる生活者の余暇価値観

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執筆者情報

  • 執筆者
    林 裕之
    部署
    マーケティング戦略コンサルティング部
    所属・職名
    チーフコンサルタント
    プロフィール
  • 執筆者
    谷口 麻由子
    部署
    コンサルティング事業開発部
    所属・職名
    シニア研究員

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