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日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点)

~利用者の多くが肯定的な評価~

2023/05/26

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概要

  • OpenAI社が2022年11月に公開したChatGPTは、公開2か月で世界のユーザー数が1億人に達するほど急速に拡大している。Openai.comへのアクセス数を見ると、日本からのアクセス数は4月中旬に746万/日に達し、トラフィックシェアは、米国、インドに次いで3番目に多い。
  • 野村総合研究所(NRI)は2023年4月15~16日にかけて、関東に住む15~69歳を対象にネットアンケート調査を行った。それによると、回答者の61.3%がChatGPTを認知し、12.1%が実際に利用したことがある。性別の利用率を見ると、男性17.7%、女性6.2%で男性の利用率が圧倒的に高く、特に男性10代~30代では利用率20%を超えている。
  • 職業別では、大学生・大学院生・専門学生(21.6%)、教職員(20.5%)と教育関係者の利用率が最も高く、会社役員(17.2%)、会社員(16.7%)の利用率が次に高い。逆に医師・医療関係者の利用率は5.3%とかなり低かった。
  • ChatGPT利用者の9割近くが継続して利用したいと回答している。利用者の一部は懸念を表明しているが、現時点では日本人の利用者の大半がChatGPTに対して肯定的な意見を表明している。

公開から2か月でユーザー数が1億人に達したChatGPT

米国OpenAI社が2022年11月30日に公開した生成型AI「ChatGPT」は、猛スピードで世界中に広がり、4日後の12月4日には利用者が世界で100万人を超え、2か月後の2023年1月には1億人を突破したと言われている。ちなみにこれまでの主要SNSを見ても、ユーザー数1億人に到達したのはTikTokで9か月、インスタグラムは2年4か月かかっていることから、ChatGPTの浸透スピードがいかに早いかがわかるだろう。
ちなみにChatGPT並みのスピードで広まったものとして新型コロナワクチンがある。同ワクチンの世界全体での接種回数は、ワクチンが登場した2020年12月から、やはり2か月後の2021年1月29日に延べ1億回に達している1

世界的に見てChatGPTの利用度合いが高い日本

日本の利用状況はどうなっているのだろうか。ChatGPTを提供するOpenai.comへの日本からのアクセス状況を見てみよう。図表1に示したように、2023年2月頃から100万/日を超え、アクセス数が急拡大していることがわかる。4月末まででみると、4月14日には746万回のアクセス数となり、その後は横ばい/微減傾向にある。また土日のアクセス数が急減することも特徴で、現時点では休日に何かを聞くような存在ではないということになる。
日本の利用状況を他国と比較してみよう。Openai.comへの国別トラフィックシェアを見ると(図表2)、1位米国、2位インドに次いで、日本は3位(6.6%)と上位にいる。日本は人口規模を考えれば、米国、インドよりもChatGPTの利用度合いが高いと言えるだろう。ウェブサイトへのアクセス状況を可視化するSimilarwebによれば、日本から同サイトへのアクセスの平均滞在時間は8分56秒で、米国の6分50秒、インドの6分27秒よりもだいぶ長く、これをみても日本人の関心の高さがうかがえる。

図表1:Openai.comへの日本からのアクセス数推移(2022/12/1~2023/4/30)

出所)similarwebよりNRI作成

図表2:Openai.comの国別トラフィックシェア(2022年11月~2023年4月)

出所)similarwebよりNRI作成

61%が認知し12%が実際に利用したことがある(2023年4月15~16日時点)

ChatGPTに対する日本人の認知・利用度について詳しく見てみよう。野村総合研究所(NRI)は、2023年4月15~16日にかけて、(地域限定ではあるが)関東地方在住の15~69歳を対象にインターネットアンケートを行い、ChatGPTの認知・利用動向について調査した。同調査によれば、その時点でChatGPTを知っていると答えた人の比率が61.3%、実際に利用したことがあると答えた人は12.1%であった。性別では特に男性の比率が高く、認知率では70.9%(男性)対50.9%(女性)、利用率でも17.7%(男性)対6.2%(女性)と大きな差がみられた。年齢別にみると、10代~30代の男性の利用率が20%を超えていて最も高い。女性は20代が唯一10%以上の利用率となっていた。

ChatGPTの性年代別認知・利用率(関東地方15~69歳、2023年4月15~16日)

出所)NRI「インサイトシグナル調査」2023年4月15~16日

学生・教職員の利用率が最も高い

次に職業別の利用度合いを見ると、学生(21.6%)と教職員(20.5%)の利用率が20%を超えて最も高く、教育関係者の利用が高いことがわかる。世界中の大学が学生のChatGPT利用についてガイドラインを作成していて、レポート作成時の利用を禁止する大学も出てきている。たとえば上智大学は、教員の許可なくAIが生成した文章や計算結果をレポート作成に使うことを禁じ、検出ツールで違反が確認された場合は厳罰に処すという通達をした2。世界を見ても、たとえば英国のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学は、ともに評価につながるレポート作成や試験時の生成AI使用を禁じていて3、教育現場では生成AIとの付き合い方が喫緊の課題となっている。
教育関係者の次に利用率が高いのが会社役員(17.2%)、会社員(16.7%)、そして自営業(14.5%)が続く。企業の場合は、生成AI利用による機密漏洩への懸念が強く、生成AIの利用ガイダンスを各企業が策定している段階だ。最も利用率が低いのはパート・アルバイト(2.4%)や専業主婦(4.1%)だが、医師・医療関係者も5.3%と低い。人命と向き合う医療関係者からすれば、ChatGPTの回答内容の正確性に疑問がある中で、業務の一環として使う余地はまだかなり小さいということかもしれない。

図表3:職業別に見たChatGPT利用率

出所)NRI「インサイトシグナル調査」2023年4月15~16日

利用者の一部は懸念を表明しているが、肯定的なコメントが大半を占める

アンケート調査では、今後の利用意向についても質問しているが、実際にChatGPTを使ったことがある人の88.7%が継続して利用したいと回答している。つまり1度でも利用すると、かなりの確率で継続利用したいと感じていることになる。ちなみに残り11.3%の人(利用したことはあるが今後は利用しないと答えた人)の理由としては、「必要を感じなかった」「思考が停止する」「使うのが難しかった」「怖い」といったコメントがみられた。
ChatGPTを利用したことがあり、今後も利用したいという回答者のコメントを見ると、「面白い」「仕事が効率化できる」「仕事の時間が短縮できる」「生活が豊かになりそう」といったコメントに加えて、「コードの制作が楽になった」「HTMLやCSSの知識がなくてもコードを添削してウェブページを作ることができた」「人に質問しづらいことがあってもAIには質問しやすい」といった具体的な体験やメリットを指摘するコメントも見られた。
ただし、今後も使いたい理由として、「AIと話すのは人間と話しているより楽しい」といったものもあり、生成AIの更なる進化によって、人間同士のコミュニケーションの希薄化や、「AIとしか話さない人間」が増えていくような未来像も垣間見ることができた。
しかしいずれにせよ、日本語をそれなりの質の高さで話すChatGPTの登場によって、日本人とAIの距離が一気に近くなったことは間違いない。フランスのIPSOS社が2022年1月に発表したAI関連調査4によると、「私はAIが何かについてよく理解している」という質問に「はい」と回答した人の比率が、日本は調査対象28か国中最も低かった(41%)。しかしChatGPTの登場によって、日本人がAIを実際に使う機会が格段に増えたため、「習うより慣れろ」の精神で日本人のAI理解度(実際的な存在としてのAI理解)も大きく高まっているのではないか。

ご参考

アンケート調査の概要

調査名 「インサイトシグナル調査」
実施時期 2023年4月15日~2023年4月16日
調査方法 インターネット調査
調査対象 関東1都6県(茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川)在住の満15~69歳の男女個人(20歳~59歳は人口構成で年代割付)
有効回答数 3,204人
主な調査項目 メディア(テレビ、新聞、雑誌、デジタル、交通広告など)への接触
クリエイティブ認知状況
商品・サービスに対する購買プロセス
消費価値観、趣味、悩みなど
チャネル利用状況、SNS等のツール利用状況など
世帯構成、職業、金融資産など
  • 1  
  • 2  

    「ChatGPT 等の AI チャットボット(生成 AI)への対応について」上智大学、2023年3月27日

  • 3  

    “Oxford and Cambridge ban ChatGPT over plagiarism fears but other universities choose to embrace AI bot” iNews, 2023年2月28日

  • 4  

    “Global Opinions and Expectations about AI” IPSOS, 2022年1月

執筆者情報

  • 森 健

    未来創発センター

    デジタル社会研究室 室長

  • 林 裕之

    マーケティングサイエンスコンサルティング部

    シニアコンサルタント

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お問い合わせ

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株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp