概要
- ChatGPTを提供するOpenai.comへの日本からのアクセス数を見ると、2023年5月中旬に過去最高の767万回/日に達しているが、アクセス数自体は5月に入ってから横ばいとなっている。しかし世界的に見れば、日本からのアクセス数は米国、インドに次いで3番目に多い。
- 野村総合研究所(NRI)は2023年6月3~4日にかけて、関東に住む15~69歳を対象にChatGPTに関する第2回目のネットアンケート調査を行った。2023年4月調査と比較するとChatGPTの認知率は61.3%から68.8%へ拡大し、利用率は12.1%から15.4%へと上がった。特に若年層(10代、20代)の利用率がこの2か月で大きく高まっている。
- 業種別の利用率は情報通信が32.8%と最も高い。一方、利用率が低いのは飲食店・宿泊1.4%、運輸9.5%、医療・福祉11.5%であった。情報通信業では「プログラミング」や「Excelなどの関数を調べる」際にChatGPTを利用すると考える人が多く、飲食店・宿泊業や医療・福祉業ではChatGPTが「人の代わりにコミュニケーション相手になる」といった考えが多く、業種によってChatGPTに対する期待や用途は異なる。
日本のChatGPT利用は5月に入り横ばいになりつつある
NRIが2023年5月に出したレポート「日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点)~利用者の多くが肯定的な評価~」では、日本のChatGPT利用が2023年に入ってから急増し、4月中旬にはChatGPTを提供するOpenai.comへの1日のアクセス数が700万を超えたことを示した(詳細は次のURLを参照 https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2023/cc/0526_1)。
それでは5月末までの日本からのアクセス状況はどうなっているのだろうか。図表1をみると、2023年5月12日に過去最高の767万アクセス/日を達成しているが、基本的にアクセス数は横ばいもしくはやや減少傾向にあることがわかる。ChatGPT熱はやや落ち着いてきたと言える。ただし後述するように、ChatGPTを利用したことがあるという人の比率は4月から6月にかけて増加していて、ユーザー数(注:1度でも使ったことがある人の数)は着実に拡大している。
また世界的に見ても日本のChatGPT利用度は高い。図表2に示したように、Openai.comへの国別アクセスシェアを見ると、米国、インドに次いで日本からのシェアは3番目に高く(7%)、上位2か国の人口規模を考えれば、日本からのアクセスはかなり多いと言える。
図表1:Openai.comへの日本からのアクセス数推移(2022/12/1~2023/5/31)
出所)similarwebよりNRI作成
図表2:Openai.comの国別アクセスシェアTOP5(2022年11月~2023年5月)
順位 | 国 | シェア (%) |
---|---|---|
1 | 米国 | 10.2 |
2 | インド | 8.7 |
3 | 日本 | 7.0 |
4 | インドネシア | 3.9 |
5 | カナダ | 3.0 |
出所)similarwebよりNRI作成
認知は69%、利用は15%まで伸びている(2023年6月3~4日時点)
ChatGPTに対する日本人の認知・利用度については、前回レポート(2023年5月公表)にて、2023年4月15~16日に実施したChatGPTに関する第1回調査結果として認知61.3%、利用12.1%であることを紹介した。それから2か月近くが経ち、ChatGPTの普及はどのように進んでいるのか。NRIでは関東地方在住の15~69歳を対象に継続的にインターネットアンケートを行っており、2023年6月3~4日にかけて、ChatGPTの認知・利用動向に関する第2回目の調査を実施した。調査結果としては、ChatGPTを知っていると答えた人が68.8%、実際に利用したことがあると答えた人は15.4%であり、認知・利用ともに伸びていた。性別では4月調査に続いて男性の比率が高く、認知率では77.2%(男性)対60.1%(女性)、利用率でも21.6%(男性)対9.0%(女性)と大きな差がみられるが、女性の認知に関しては4月調査より10%弱高まっていた。また年齢別には、10代~30代の若年男性の利用率が4月調査では20%を超えていて最も高かったのだが、6月調査ではその若年男性中心に利用率が大きく伸びていた。女性では10代~20代において利用率が20%に迫ろうとしている。
図表3:ChatGPTの性年代別<認知率>の変化
(関東地方15~69歳、2023年6月3~4日)
出所)NRI「インサイトシグナル調査」2023年6月3~4日、2023年4月15~16日
図表4:ChatGPTの性年代別<利用率>の変化
(関東地方15~69歳、2023年6月3~4日)
出所)NRI「インサイトシグナル調査」2023年6月3~4日、2023年4月15~16日
業種別では情報通信業の利用率が最も高く、飲食店・宿泊業は低い
ChatGPTに関する2023年6月調査では、業種別の利用度合いについても分析した。まず、認知・利用ともに最も高いのは情報通信(認知率88.4%、利用率32.8%)であり、次いで製造(認知率75.6%、利用率19.2%)であった。一方、利用度合いが低いのは飲食店・宿泊(認知率52.2%、利用率1.4%)および医療・福祉(認知率59.6%、利用率11.5%)、運輸(認知率66.7%、利用率9.5%)であった。
図表5:業種別に見たChatGPT認知率・利用率
(関東地方15~69歳、2023年6月3~4日)
出所)NRI「インサイトシグナル調査」2023年6月3~4日
ChatGPTは情報収集メインで使用されるが、情報通信業はプログラミング、飲食店・宿泊業や医療・福祉業ではコミュニケーション相手としての期待も
業務におけるChatGPTの利用用途を調査した結果が図表6である。全体としては「情報収集」や「文章の作成」用途としてChatGPTを利用する想定が高くなっているが、業種によって利用の想定は異なる。分かりやすい特徴としては情報通信業の人は「プログラミング」や「Excelなどの関数を調べる」際にChatGPTを利用すると考える人が多い。
図表6:業務におけるChatGPT利用用途(関東地方15~69歳、2023年6月3~4日)
出所)NRI「インサイトシグナル調査」2023年6月3~4日
また、飲食店・宿泊業や医療・福祉業ではChatGPTの利用率自体は高くなかったが、業務における利用用途として「人の代わりにコミュニケーション相手になる」と考える人が他業種よりも高くなっている。例えば飲食店では、ガストやバーミヤンにおいて猫型ロボットが料理を運ぶ様子を見たことがある人は多いのではないだろうか。同店を展開するすかいらーくグループは猫型ロボットを従業員の業務負荷軽減のために導入したが、この猫型ロボットは耳を触ると声を出して喜んだりする機能があることから、利用者とのコミュニケーションにも役立っており、顧客満足度向上につながっていると言う。今後猫型ロボットが音声を認識し、ChatGPTによる適切な反応を返すことで双方向コミュニケーションが実現されれば、猫型ロボットが来店者を客席に案内したりなど、人とのコミュニケーションにより特化した使い方まで発展すると考えられる。また医療・福祉業においても「人の代わりにコミュニケーション相手になる」ことへの用途ニーズが高いように、ロボットが介護補助のためのツールだけではなく、利用者と日常的なコミュニケーションの相手としての役割を担うことも期待される。生成AIの進化により、人間同士のコミュニケーションの希薄化等の懸念は生じるものの、それ以上に日常のコミュニケーション不足を補える役割として生成AIのユースケースを整理し、活用していくべきではないか。
ご参考
アンケート調査の概要
調査名 | 「インサイトシグナル調査」 |
---|---|
実施時期 | 2023年6月3日~2023年6月4日 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査対象 | 関東1都6県(茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川)の満15~69歳の男女個人(20歳~59歳は人口構成で年代割付) |
有効回答数 | 3,161人 |
主な調査項目 | メディア(テレビ、新聞、雑誌、デジタル、交通広告など)への接触 クリエイティブ認知状況 商品・サービスに対する購買プロセス 消費価値観、趣味、悩みなど チャネル利用状況、SNS等のツール利用状況など 世帯構成、職業、金融資産など |
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