株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤花芽、以下「NRI」)と、NRIみらい株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:小松康弘、以下「NRIみらい」)は、2025年8月から9月にかけて、「障害1者雇用に関する実態調査」と「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」2を、上場企業3と特例子会社4それぞれを対象に実施しました(回収数:上場企業121社、特例子会社222社)。
これらの調査は、2015年度から毎年実施しており、11回目となる今回は「2035年を視野に入れた障害者雇用の価値創造戦略」をメインテーマとしました。主な結果5とそこから導かれる提言は以下の通りです。
障害者雇用への関心は過去最高水準。法定雇用率という「量」だけでなく、活躍や定着といった「質」確保にも注力
今年実施した「障害者雇用に関する調査」と「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」から、企業の障害者雇用への関心が高まっていることが明らかになりました。
特例子会社に「5年前と比較して、親会社は特例子会社に関心を持っているか」を尋ねたところ、「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」の回答の合計は、91.4%と2015年の92.1%、2017年の91.7%に次ぐ、高い水準となりました(図1)。また、上場企業に「5年前と比較して、社内の障害者雇用の関心が高まっているか」を尋ねたところ、「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」の回答の合計は、92.8%で、本調査においては過去最高を更新しました(図2)。こうした障害者雇用への関心の高まりの背景には、2026年7月に法定雇用率が2.7%6に引き上げられる予定であることが影響していると推察されます。
図1 5年前と比較して、親会社は特例子会社に関心を持っているか(単一回答)

出所:「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査(特例子会社向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2025年)
図2 5年前と比較して、社内の障害者雇用の関心が高まっているか(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2025年)
障害者雇用への関心の高まりとともに、企業は採用人数という「量」の確保に加え、定着や活躍といった「質」の確保にも注力し始めています。「質的な観点からみて障害者を十分採用できている」との回答(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」の回答の合計)は、特例子会社では77.7%となり、法定雇用率引き上げ(2024年2.5%、26年2.7%)が公布された2024年(73.9%)を底として増加傾向にあります。上場企業においても53.0%と、2023年(45.2%)を底に増加傾向がみられました(図3)。こうしたデータから、法定雇用率達成のための採用拡大は引き続き求められつつも、近年の潮流は “量と質の両立”へと軸足を移しつつあることがうかがえます。
しかしながら、上場企業は「質的な観点からみて障害者を十分採用できている」との回答水準が特例子会社と比較して低く、質の確保に苦慮していることがうかがえます。その主な要因として、環境整備が進む特例子会社に対し、本社での雇用では受け入れやマネジメントのノウハウが不足していること、他の経営課題への対応に追われリソースが割けないこと、そして事業環境変化が速いため、適した業務の洗い出しや、業務構築プロセスそのものが特例子会社とは異なることなどが想定されます。
図3 質的な観点からみて、障害者を十分採用できている(単一回答)


出所:「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査(特例子会社向け調査)」
「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2025年)
「量」の変革:業務領域の開拓などを通じた「経済的価値を生み出す事業活動」へと転換が進む
法定雇用率の引き上げに伴う採用人数の拡大、すなわち「量」の確保は、業務領域や職域拡大を促しています。そのなかでは、障害者雇用を従来のような雇用維持のみを目的とした活動ではなく、「経済的価値を生む事業活動」、つまり企業の収益に寄与する活動へと変容している傾向がみられました。
特例子会社においては、「親会社・グループ会社からの業務の割合」が「100%」という回答が2017年(45.6%)から2025年(38.8%)へと減少しており、グループ外受注の拡大がみられました(図4)。また、上場企業においても障害者の業務量の維持・増加のために、「自社の事業領域と関係のない事業・業務へ取り組んでいる」割合は2025年(16.9%)に本調査において過去最高となりました(図5)。
図4 親会社・グループ会社からの業務の割合(単一回答)

出所:「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査(特例子会社向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2017~2025年)
図5 障害者の業務量の維持・増加のために、自社の事業領域と関係のない事業・業務へ取り組んでいるか(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2016~2025年)
「質」の課題:キャリアアップ制度整備や管理職登用意向と実態のギャップ解消には、多様な人材の活躍を促す仕組みづくりが必要
障害者雇用の「質」の向上に向けた動きとして、この11年間でキャリアアップ制度の整備が徐々に進んでいます。上場企業において「自社で働く障害者が、キャリアアップできる仕組みができているか」を尋ねたところ、「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」の回答の合計は、2015年(28.6%)から2025年(48.2%)にかけて伸長しました(図6)。また、「自社で働く障害者を管理職として登用したいか」を尋ねたところ、「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」の回答の合計は、2015年(24.5%)から2025年(32.5%)にかけて増加傾向となり、上場企業における障害者の管理職登用意向の高まりがみられました(図7)。
キャリアアップ制度整備が進み、管理職登用への意向は年々高まりをみせているものの、実績については過去11年間、横ばいの状態で推移しています。上場企業に「5年前と比較して、自社で働く障害者が管理職やリーダー的な役割を担っているか」を尋ねたところ、「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」の回答の合計は、2015年(20.5%)から2025年(19.3%)へと停滞傾向にあります(図8)。
この管理職登用意向と実績のギャップを埋めるためには、実効性の高い制度設計に加え、従来の管理職像にとらわれず、多様な障害特性があってもリーダーシップを発揮できる新たなマネジメントモデルのありかたを模索し、設計・構築することが求められます。
図6 自社で働く障害者が、キャリアアップできる仕組みができているか(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2025年)
図7 自社で働く障害者を管理職として登用したいか(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2025年)
図8 5年前と比較して、自社で働く障害者が管理職やリーダー的な役割を担っているか(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2025年)
法定雇用率の引き上げを背景に、企業は今、障害者雇用における「量」の確保と「質」の向上という両面からの変革を迫られています。「量」においては、従来の社会貢献的な雇用に加えて経済的価値の創出を目指すこと、「質」においては実効性のあるキャリア支援体制の構築を目指すことが、持続可能な障害者雇用を実現する鍵となるといえるでしょう。
NRIとNRIみらいでは、これからも障害者雇用の実態や課題とあるべき姿に関して、継続的な調査を実施し、結果の公表と提言を行っていきます。
なお、本稿に関連する詳細なレポートは次のURLをご参照ください。
「2035年を視野に入れた障害者雇用の価値創造戦略」
https://www.nri.com/jp/knowledge/report/20251224_1.html
- 1本文中の漢字表現は、障害者に関する法律を参考にして記載しています。
- 2設問によって回答条件を設けているため、各設問のN数と有効回答数は一致しません。
- 3日本取引所グループのプライム市場、スタンダード市場、グロース市場、Tokyo Pro Marketのいずれかに上場している全企業を指します。ただし、東証外国部、REIT(投資法人)、日本銀行、株式会社野村総合研究所、および2025年8月時点で上場廃止となっている企業を除きます。そのため、毎年の調査で対象企業は一致しません。
なお、本稿ではアンケート調査対象に基づき、「上場企業」と「親会社」の表現の書き分けを行っています。
「上場企業」…特例子会社の有無によらず障害者を雇用する上場企業
「親会社」…特例子会社を有し、自社内でも障害者を雇用する上場企業 - 4障害者の雇用に特別な配慮をし、法律が定める一定の要件を満たした上で、障害者雇用率の算定の際に、親会社の一事業所と見なされるような「特例」の認可を受けた子会社を指します。特例子会社は別法人のため、障害者のニーズやスキルに応じた環境整備や制度設計が可能です。(厚生労働省「特例子会社一覧」、「「特例子会社」制度の概要」)。
- 5本稿に記載の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります。
- 6民間企業における障害者の法定雇用率は、2024年に2.5%に改定、本稿発表時点では2026年に2.7%に改定の予定です。
ご参考:調査概要
| <項目> | 上場企業向け調査 | 特例子会社向け調査 |
|---|---|---|
| 調査名 | 障害者雇用に関する実態調査 | 障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 |
| 調査期間 | 2025年8月~9月 | 2025年8月~9月 |
| 調査方法 | 配布・回収ともに郵送ならびに電子メールで実施 | 配布・回収ともに郵送ならびに電子メールで実施 |
| 調査対象 | 日本取引所グループに上場している企業 3,716社 |
特例子会社 611社 |
| 有効回答数(回答率) | 121社(3.3%) | 222社(36.3%) |