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野村総合研究所、SNS情報から人々の感情の動きを読み取る「日本の空気感指数」をリニューアル

〜「活気」「混乱」「落込み」「怒り」「不安」「疲れ」「平穏」の7項目で指標化〜

2023/05/08

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)は、日本の生活者や社会が感情面でどのような状態にあるのかを数値で表す「空気感指数」を、SNSへの書き込み情報をもとに計測・指数化する方法を開発し、2022年3月に発表しました。
その後、ロシアのウクライナ侵攻、安倍元首相襲撃事件、値上げラッシュ、新型コロナウイルスの沈静化など、社会の空気感を大きく変える出来事がありました。それらの動きを踏まえて、日本の空気感の変化をより正しく計測するために指標の追加・見直しを行い、「活気」「混乱」「落込み」「怒り」「不安」「疲れ」「平穏」の7指標で改めて計測した結果を、以下の通り発表します。
NRIではこれらの指標を継続的に見直し、計測することで、その時々の空気感を客観的・定量的に把握するとともに、将来の政策検討、経済予測、マーケティング戦略などへも活用することを目指しています。
なお、指標の作成や測定方法の開発にあたっては、筑波大学システム情報系の佐野幸恵准教授との共同研究の成果をもとにしています。

2023年5月16日 文章表現を一部訂正しました。

心理検査や感情表現の分類から指標を再整理

空気感の各指標については、「心理検査(POMS21:Profile Of Mood States(気分プロフィール検査) 2nd edition)」の考え方や、人間の感情を色相環のように分類した「プルチックの感情の輪2」をもとに再整理し、それぞれをNRI独自の表現で定義しています(表1)。2022年に発表した際の6つの指標については、2022年に生じた出来事やSNSへの書き込み内容をもとに、「緊張」指標を「不安」指標として再定義しました。その他の指標についても、一部、各指標に関連する単語を見直しています。
さらに7つ目の指標として、「平穏」指標を追加しました。大きな出来事がなく、特に人々のポジティブな感情面の動きが高まらない場合に、「平穏で、安心していられる」という状態も重要な空気感であると判断して加えたものです。

表1:日本の空気感指数を構成する7指標と各々の感情の内容

指標 該当する感情
活気 元気、活発、陽気、精力的、積極的、みなぎる、イキイキなどの感情
混乱 混乱、錯乱、当惑、自信がない、あ然、ゴタゴタなどの感情
落込み 悲しみ、憂うつ、孤独、おびえ、何もできない、ガッカリなどの感情
怒り 怒る、困る、反抗、不機嫌、腹立たしい、イライラなどの感情
不安 心配、不安、懸念、緊張、落ち着かない、ソワソワなどの感情
疲れ 疲れた、くたびれた、だるい、うんざり、ヘトヘトなどの感情
平穏 和やか、信頼、親身、ほっこり、ほのぼのなどの感情

出所:NRI

7つの指標の動きとその変動要因

2016年1月から2023年3月まで、7つの指標の変化を提示したものが図1です。データは1日単位で計測していますが、1週間あたりの平均値で変動を表示しています。指標の値が大きく変化したタイミングでは、その指標に関連する大きな出来事がある場合が多いため、代表的な出来事についても記載しています。
2022年は、それ以前に比べて各指標が大きく変化した年でした。ロシアのウクライナ侵攻や、安倍元首相の襲撃事件という出来事の影響で、「不安」指標が大きく上昇しました。東日本大震災を思い起こさせた2022年3月16日の福島県沖地震では「不安」指標が一段と高まりました。長期的な傾向としては、新型コロナウイルスによる活動の自粛などの影響もあり、「疲れ」指標が年間を通じて高い水準でした。
また、2022年は「活気」指標が低い水準にあったことも特徴です。2018年ごろまでは右肩上がりだった「活気」指標は、その後、横ばいで推移してきましたが、ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけとした物価高や円安などの影響で、日本の空気感として「活気」がここ5年の中では最も低い水準になりました。しかし、2022年12月のサッカーのFIFAワールドカップカタールや、2023年3月のWBC(ワールドベースボールクラシック)における日本チームの活躍で、今年に入って一時的に「活気」指標が大きく上がり、国内の盛り上がりを見てとることができます。
新たに追加した「平穏」指標は、長期的に見ると比較的安定していて、ニュースによる変動が少ないことが特徴です。「平穏」という空気感は、特定の事象・事件などで急激に変動するわけではなく、長期にわたる社会の動きがゆっくりと影響すると考えられます。この指標は、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年から緩やかに低下し、様々な規制が緩和されるなど、感染終息の雰囲気が高まってきた2022年後半には、上昇してきました。
この「平穏」という指標を追加したことで、「活気」のようにニュースに敏感に反応する積極的な空気感の変化だけでなく、緩やかに形成されるポジティブな空気感も測定することができるようになっています。

図1:「日本の空気感」を示す7つの指標の変動と主要な社会事象
(日次データを週次に換算して表示、 2016年1月~2023年3月)

注: 2017~2021年の平均値を1.0とした場合の値
※指数を最初に開発した2022年の直近5年間の平均を基準値とした
出所:NRI

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各指標の変動傾向の分析

7つの指標について、測定期間別の変動傾向を分析したものが図2~4です。時系列データの将来予測をする際に用いられる代表的なアルゴリズムProphet3を用いて、指標の変動を「長期時系列」、「年間」、「週間」の期間別要因に分解しています。このアルゴリズムでは、1日単位のデータの変化が、年単位で生じる長期的な傾向なのか、季節的な周期性によるものか、それとも曜日の違いによるものか、などに分解します。
長期時系列・年間・週間、いずれの要因でも説明できない場合が、「特定の事象・事件などによる短期的な変化」と考えられます。2022年には各指標に影響を与える事象・事件が数多くあり、一見すると上昇して見える指標であっても、その多くが短期的な変化であり、長期的には減少傾向にある指標であることなどが把握できます。

長期的な変動としては、2021年まで上昇傾向にあった「不安」が、2022年には下降トレンドに転じました(図2)。「活気」は横ばい、「混乱」は2020年以降、下降傾向にあります。「疲れ」は2021年以降で上昇傾向にあり、「平穏」は2021年の途中から上昇中です。新型コロナへの感染が終息を迎えつつあることが影響していると考えられます。

1年間の変動傾向を見ると、各指標ともに年末・年始は水準が低くなっています(図3)。「不安」は年度の始まりである4月に高まり、「疲れ」は5月~9月に高くなる傾向にあります。「活気」や「落込み」は年間を通じて安定しており、特定の出来事などで上下はしますが、季節的な動きは少なくなっています。
毎週の動きを見ると、全般的に月曜日が高く、週末に向けて下降する指標が多く見られます(図4)。その中で、「怒り」は平日では高く土日に低い特徴があり、「不安」は平日では土日と比べてやや高く、平日のあいだは一定の水準になるなどの特徴も見られます。「平穏」は平日と週末で差がなく、週内で大きな周期性は見られませんでした。このように7つの指標の変動要因や変動傾向を分析することで、日本社会の空気感が、どのように変化する可能性があるかを予測することができます。

図2:日本の空気感指数の長期時系列で見た変動傾向

出所:NRI

図3:日本の空気感指数の年間で見た変動傾向(2010年~2022年の傾向)

出所:NRI

図4:日本の空気感指数の週間で見た変動傾向(2010年~2022年の傾向)

出所:NRI

  • 1:  

    POMS2(ポムス・ツー)とは、人々の気分や感情を測定する心理検査の方法で、各感情に関連した質問項目に回答することで気分状態を評価することができるものです。医療現場のカウンセリング、職場のストレスマネジメント、スポーツ分野のメンタルヘルス向上などに活用されています。2015年にPOMSから改訂されました。
    参考論文:McNair DM, Lorr M, Droppleman LF. Manual for the Profile of Mood States. Educational and Industrial Testing Services; 1971.

  • 2:  

    プルチック感情の輪とは、1980年にロバート・プルチックにより提示され、人間の感情を8つの基本感情(喜び・信頼・恐れ・驚き・悲しみ・嫌悪・怒り・期待)で整理し、基本感情の間にある感情も定義しています。感情の種類と強さから立体的に感情を整理していることが特徴的です。

  • 3:  

    ProphetはFacebook社が提供している時系列データを分析、将来予測をするためのアルゴリズムで、Pythonなどのライブラリとして公開されています。2017年に初期版がリリースされました。

参考:Twitterの書き込み情報から空気感指数を計算する方法

Twitterのユーザーによる日々の投稿データをもとに、各指標に関連する単語などの書き込み量を計測し、日本の空気感指数を計算しています。
各指標に関連する書き込み量を単純にカウントするだけではなく、リツイートなどによる複数カウントや、同一人物が行う複数の書き込みなどを排除する適切なカウント方法を考案しました。また、利用者の拡大などによる書き込み総量の変化や、7つの指標に関連した特定の用語がSNSで別の意味で流行し、特定の指標に増減をもたらすなどの問題を回避するため、書き込み量をカウントした後に、各指標の増減トレンドを比較できるよう、以下のステップでデータの規格化を行っています。

①各指標に関連した単語別の投稿件数を総投稿件数で比率化
②個別単語の書き込み量の差を調整するため、分布に応じた統計的手法で「重み付け係数」を設定
③単語別の重み付け係数をもとに、加重平均をとることで各指標の投稿比率を計算
④2017年~2021年の平均値をもとに指数化

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp

本件調査の担当


株式会社野村総合研究所 未来創発センター 生活DX・データ研究室 塩崎、広瀬、田村(光)