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野村総合研究所グループ、障害者雇用に関する9回目の実態調査を実施

~法整備が進む今、岐路に差し掛かる障害者雇用と再定義すべきその価値について~

2023/12/18

株式会社野村総合研究所
NRIみらい株式会社

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本臣吾、以下「NRI」)と、NRIみらい株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:小松康弘、以下「NRIみらい」)は、2023年7月から9月にかけて、「障害者雇用に関する実態調査」と「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」1.2を、上場企業3と特例子会社4それぞれを対象に実施しました(回収数:上場企業128社、特例子会社208社)。

これらの調査は、2015年度から毎年実施しており、9回目となる今回は「企業経営における障害者雇用が与えるインパクト」をメインテーマとしました。主な結果とそこから導かれる提言は以下の通りです。
(本資料に記載の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります)

障害者雇用の意識は高まっているが、障害者雇用が発揮する価値についての認識は不十分

法定雇用率が段階的に引き上げられる5中で、障害者の採用についての意識が企業の中で高まっています。上場企業に「量的な観点からみて、障害者を十分採用できているか」を尋ねたところ、「どちらかというとそう思わない」・「そう思わない」の回答の合計が、2023年は61.9%と本調査開始以来、最も高い水準になりました(図1)。

図1 量的な観点からみて、障害者を十分採用できている(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2023年)

一方、特例子会社に「親会社は、特例子会社が提供する価値を認識・理解しているか」を尋ねたところ、「どちらかというとそう思わない」・「そう思わない」の回答の合計が、2020年(11.8%)から2023年(16.4%)にかけて増加傾向となりました(図2)。障害者雇用についての法整備が進む中で、採用についての意識は高まっているものの、障害者雇用の価値を十分に認識できていない企業が依然として存在する現状がうかがえます。

図2 親会社は、特例子会社が提供する価値を認識・理解している(単一回答)

出所:「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査(特例子会社向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2023年)

合理的配慮の実践をコストとして捉えている企業も存在

2024年からは障害者への合理的配慮6が義務化される中で、採用した障害者をいかにマネジメントしていくかも課題となります。上場企業に「障害特性にあわせて、仕事の内容を調整することに努めているか」を尋ねると、「そう思う」という回答が38.1%と過去最高になった一方で、「どちらかというとそう思わない」・「そう思わない」という回答の合計は、2023年は21.4%と2017年以来の高水準となりました(図3)。障害者の採用が着実に拡大する中で、採用した障害者の能力を十分に活用できている企業と、そうでない企業の間の差が徐々に開きつつあるといえます。

図3 障害者の特性にあわせて、仕事の内容を調整することに努めている(単一回答)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2015~2023年)

こうした中、障害者を含めた「全従業員に対して合理的配慮を提供していく上で、問題となること」を尋ねたところ、「個別の対応が求められるため、コミュニケーション上の負荷が高い」や「対応するための工数やコスト増による負荷が高い」といった回答が、特例子会社・上場企業のいずれにおいても多く寄せられる結果となりました(図4)。この結果から、合理的配慮の実践をコストとして捉えている企業が一定数存在している状況もあると推察されます。

図4 全従業員に対して合理的配慮を提供していく上で、問題となること(複数回答)

出所: 「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」、
「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査(特例子会社向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2023年)

障害者雇用の価値を再定義し、障害者雇用を企業価値の向上につなげていくことが重要

企業における合理的配慮、ひいては障害者雇用の価値についての認識は依然として限定的な範囲に留まっています。具体的には、「定着率、勤続年数」や「心理的安全性の確保」といった企業の組織能力にかかる指標については、合理的配慮が良い影響をもたらすとの認識が広く共有されている一方で、「売上高」や「利益率」といった財務指標への影響は、多くの企業において認識されていない現状があります(図5)。今後は、合理的配慮の取り組みも含めて、障害者雇用にかかる施策を経営指標に関連付けて実践していくことが、障害者雇用の価値を広げていくために肝要であると言えます。

図5 合理的配慮を実施することで、良い影響をもたらすと思う指標(複数回答、抜粋)

出所:「障害者雇用に関する実態調査(上場企業向け調査)」、
「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査(特例子会社向け調査)」
(NRI、NRIみらい実施、2023年)

そして、障害者雇用の価値の広がりを確かなものにするためには、①障害者も視野に入れた多様性への理解、②個々の能力に起点を置いたマネジメントの実施、③企業の成長と関連付けた障害者雇用の価値の認知等の取り組みを実践していくことが必要であると考えられます。障害者雇用を企業価値の源泉として捉えなおした上で、これらの取り組みを行うことにより、障害者雇用を持続的な企業価値の向上につなげていくことが重要です。

NRIとNRIみらいでは、これからも障害者雇用の実態や課題とあるべき姿に関して、継続的な調査を実施し、結果の公表と提言を行っていきます。

  • 1  

    本文中の漢字表現は、障害者に関する法律を参考にして記載しています。

  • 2  

    設問によって回答条件を設けているため、各設問のN数と有効回答数は一致しません。

  • 3  

    日本取引所グループのプライム市場、スタンダード市場、グロース市場、Tokyo Pro Marketのいずれかに上場している全企業を指します。ただし、東証外国部、REIT(投資法人)、日本銀行、野村総合研究所、および2023年6月22日時点で上場廃止となっている企業を除きます。そのため、毎年の調査で対象企業は一致しません。

  • 4  

    障害者の雇用に特別な配慮をし、法律が定める一定の要件を満たした上で、障害者雇用率の算定の際に、親会社の一事業所と見なされるような「特例」の認可を受けた子会社を指します。特例子会社は別法人のため、障害者のニーズやスキルに応じた環境整備や制度設計が可能です。特例子会社は増加を続けており、2022年6月1日時点で579社となっています(厚生労働省「特例子会社一覧」、「「特例子会社」制度の概要」)。

  • 5  

    民間企業における障害者の法定雇用率は、2023年現在2.3%ですが、2024年には2.5%、2026年には2.7%まで引き上げられる予定です。

  • 6  

    身体、精神、知的に障害のある人や、日常生活や社会生活を送るうえで、性別、人種、国籍等が要因となり生まれる困難さを軽減させるために行われる、周囲からの支援や環境の調整のことを指します。

ご参考:調査概要

<項目> 上場企業向け調査 特例子会社向け調査
調査名 障害者雇用に関する実態調査 障害者雇用及び特例子会社の
経営に関する実態調査
調査期間 2023年8月7日~9月6日 2023年7月28日~9月1日
調査方法 配布・回収ともに、
郵送ならびに電子メールで実施
配布・回収ともに、
郵送ならびに電子メールで実施
調査対象 日本取引所グループに
上場している企業 3,679社
特例子会社 573社
有効回答数(回答率) 128社(3.5%) 208社(36.3%)

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ニュースリリースに関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp

本件に関するお問い合わせ


株式会社野村総合研究所
ヘルスケア・サービスコンサルティング部 若林、金子、井川、森
E-mail:syogai-koyo-research2023@nri.co.jp

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