株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、社長:柳澤花芽、以下「NRI」)は、物流1業界における人手不足などの課題の解決と、企業の新規参入・事業拡大を支援する「次世代物流構築コンサルティングサービス(以下「本サービス」)」を、2024年5月から提供開始しました。
1.本サービス提供の背景
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限され、物流業界では人手不足への対応が急務となっています。NRIは、2030年には運ぶべき貨物に対してトラックドライバーが日本全体で約35%不足すると推計しています2。生活必需品の価格高騰や店舗での品切れ、納期・工期の遅れなどを引き起こすトラックドライバー不足への対応が求められています。物流業界においては、共同輸配送の導入、商取引条件の見直し、業界慣習の改革、インフラ整備などが検討されていますが、サプライチェーンの複雑さ、ステークホルダーの多さから、企業・業界団体・行政の連携による対応が必要です。
2.本サービスの概要と特長
本サービスは民間企業・各種団体・官公庁向けに、ドライバー不足や物流費の増加に関する独自の分析・推計、物流業界と荷主業界双方へのコンサルティング経験、さまざまなデジタルソリューションのノウハウを組み合わせ、物流課題の解決を支援します。本サービスの概要と特長は以下の通りです(特長の詳細は末尾の【ご参考】をご覧ください)。
図:「次世代物流構築コンサルティングサービス」のメニュー
出所:NRI
- NRI-CTS:国際標準に対応した、サプライチェーンのCO2排出関連情報の把握・追跡を行うトレーシングシステムです。詳細は次のURLをご参照ください。https://nri-cts.net/ja/index.html
(1)持続可能な物流網構築のための制度設計支援
NRIが培ってきた官民連携における独自のノウハウと、AIなどを活用した最適化ツールの知見を組み合わせ、ステークホルダーを巻き込みながら、実態調査・制度設計から、標準を業界に定着させるための実証までを支援します。
<実態調査・制度設計>
物流・商流の実態把握とその持続可能性を高めるための課題抽出、ならびに、海外動向も踏まえたうえでのサプライチェーンの制度設計を支援します。
<標準づくり>
共同配送・共同保管など「共同物流」の仕組みづくりに、各企業や団体と連携しながら伴走します。
<実証運営>
制度・標準・仕組みを業界に定着させるための実証実験の設計・実施を行います。また、物流だけにとどまらず、調達・製造・販売・再利用までの事業プロセスを俯瞰し、経営の目線で判断できる人材の育成・定着や、職場における人材マッチングも支援します。
(2)物流における「経営・事業・業務」各領域の改革支援と業界参入支援
持続可能な物流戦略策定のためには、物流体制の見直し、各種作業の効率改善、新たなビジネスモデル構築が必要です。NRIは「経営・事業・業務」の各領域にわたって改革と新規参入に伴走します。
<物流起点の経営改革>
CLO3組織の構築を通じて、人手不足が自社へ及ぼすインパクトの共有、サプライチェーンマネジメント(SCM)の再構築や物流子会社の再編、物流関連業務の設計、社内外との連携強化を支援します。
<物流事業改革>
サービスレベルの最適化、共同物流の構築、工場や倉庫の最適配置について、AIを活用したツールを用いて支援します。また、顧客起点での物流最適化に不可欠なアカウントマネジメント(顧客別の営業・サービス・業務・予算・収支管理)の仕組みを構築します。
<物流業務改革>
サプライチェーン内の連携、配車・経路最適化、CO2排出量のモニタリングなど、物流関連業務の効率化をNRI独自のソリューションを用いて支援します。
<物流業界参入>
NRIがもつシンクタンク、経営コンサルティング、ITソリューションの各機能を活かして、物流分野の新規事業開発や事業拡大において、事業環境予測、事業戦略立案、実証実験、事業立ち上げと成長までをサポートします。
NRIはこれからも本サービスを進化させ、地球環境や社会のニーズに対応した持続可能な物流システムの実現と、物流に関わる企業の競争力強化に貢献していきます。
- 1
本サービスが扱う「物流」は、BtoBおよびBtoCの陸運・空運・海運を対象としています。
- 2
2023年1月19日発表。詳細は次の資料をご参照ください。
NRIメディアフォーラム「トラックドライバー不足の地域別将来推計と地域でまとめる輸配送」
https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2023/cc/mediaforum/forum351 - 3
Chief Logistics Officer(物流担当役員):物流管理・サプライチェーン管理とその改善に責任をもつ役員を指します。内閣官房 令和5年6月2日 我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ(案)」においては、「経営者層の意識改革により、荷主企業における全社的な物流改善への取組みを促進するため荷主企業の役員クラスに物流管理の責任者を配置することを義務づけるなどの規制的措置等の導入に向けて取り組む」として言及されています。
ご参考
「次世代物流構築コンサルティングサービス」の特長詳細
<実態調査・制度設計> | |
---|---|
①物流実態調査、国内外の先進事例調査 | 文献調査にとどまらず、NRIの海外拠点を活用した実地調査も行います。 |
②海外の制度設計現状把握 | 労働規制や契約から所轄官庁へのデータ提出まで、物流業務全般を調査し、遺漏の無い制度設計を支えます。 |
③サプライチェーンの制度・仕組みの設計 | データ利活用の仕組み、環境対策、リスク対策、知財保護など、重要性が高まっているテーマについて、仕組みや実務への落とし込みを支援します。 |
<標準づくり> | |
④国際標準・業界標準構築 | 物流共同化のために、ステークホルダー間で共通化すべきデータ項目やデータ共有インターフェースの設計、共有手法の確立、合意形成、普及促進にかかる課題整理、ガイドライン策定を支援します。 |
⑤共同物流システム・制度構築 | 物流実態の可視化・定量分析、課題の抽出、物流共同化の方針策定に加え、実効性を高めるための施策も提案します。 |
<実証運営> | |
⑥SCM・物流人材のリスキリング・マッチング | AIを活用して人材と業務のマッチングを最適化するNRI独自のソリューション「Talent Marketplace(タレント・マーケットプレイス)」を活用し、SCM・物流分野における人材配置の最適化を支援します。 |
⑦カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブを目指した社会システム構築 | カーボンニュートラル(CO2排出量の実質ゼロ化)、サーキュラーエコノミー(循環型経済の確立)、ネイチャーポジティブ(自然生態系の損失を食い止め、回復させていく経済への転換)に貢献する物流業界の取り組みについて、適切な評価方法の設計を支援します。 |
⑧フィジカルインターネット※などの新たな物流システムの実証支援 | フィジカルインターネットなどについて、実証実験の設計と実施、効果測定、普及に向けた委員会活動、知見の取りまとめを支援します。
|
<物流起点の経営改革> | |
⑨将来物流費シミュレーション | 人口動態、経済動向、技術進化、制度や社会規範の変化への洞察に基づき、NRIの独自モデルによって将来の物流関連コストや企業への影響を予測します。 |
⑩SCM再構築 | 優先課題の導出から、優先課題に対する投資対効果の明確化、取り組み体制の整備、リスク対策、成果の見える化まで伴走します。 |
⑪CLO組織構築 | 製造・配送・販売の最適化に貢献するCLOのミッション・権限・責任の規定、業務・組織・評価制度の設計、組織の立ち上げを支援します。 |
⑫物流子会社再編 | 将来の自社の物流量や物流網の予測、運賃の動向予測、技術への投資対効果分析などを通じて、物流子会社の最適なあり方へ向けた改革を支援します。 |
<物流事業改革> | |
⑬物流起点のサービスレベル改革 | 顧客企業に蓄積されたデータを活用して、配送条件を変化させた場合のインパクトを予測し、サービスと配送負担の最適なバランスを検討します。 |
⑭アカウントマネジメント改革 | 物流企業が最適なサービスを提供して適切な収益を得るための、顧客別の収支管理・条件管理や、営業・サービス提供体制の構築を支援します。 |
⑮共同物流構築 | 物流実態の可視化、共同化範囲の設計、想定効果の試算、共通ルールの策定などを通じて共同物流の実現を支援するとともに、既存の組織や人材が新しい業務プロセスに対応できるよう、NRIのチェンジマネジメント手法を活用し、具体的な効果創出を図ります。 |
⑯工場・倉庫最適配置 | 将来の物流需給の予測、注目すべき外部環境変化の考察を通じて、持続可能かつ競争優位な生産・物流拠点網や配送ネットワークを検討します。 |
<物流業務改革> | |
⑰配送最適化AIソリューション | NRIの数理最適化エンジン「Fiboat」を用いて、車両・労務の諸条件に対応しながら配送を効率化するための業務計画立案・実装を支援します。 |
⑱NRI-CTS | サプライチェーンのCO2排出関連情報の把握・追跡を行うトレーシングシステム「NRI-CTS」の実装を通じて、実測値による正確なScope3※の把握と、削減方法の立案・実行を支援します。
|
<物流業界参入> | |
⑲事業機会探索 | 事業環境変化のインパクトや不確実性を織り込んだシナリオプランニングに基づき、プロフィットプール・KBF(顧客から選ばれるために重要な要因)・業界構造の変化を予測し、有望な事業機会を導出します。 |
⑳デジタル新規事業開発 | NRI独自の事業開発フレームと、関係者間の認識齟齬を回避するための事業開発ダッシュボードを活用し、認識相違や合意形成不全などの非効率を避けた事業開発を支援します。 |
㉑プロダクト構築 | 物流企業や荷主企業向けのITシステムの開発・実装ノウハウをもとに、サービスデザイン、コンセプトやサービス検証、システムアーキテクチャ設計、システム開発、市場投入計画の具体化を支援します。 |
㉒アライアンス・M&A | KSF(ビジネスを成功させるために鍵となる要因)の見極め、経営リソースの充足度評価、パートナー探索、アライアンスのスキーム設計、交渉支援などを行い、最適なパートナーとの関係構築をサポートします。 |
お問い合わせ
新着コンテンツ
-
2024/12/06
2023年度のポイント・マイレージ年間発行額は1.5兆円超に増加
研究・情報発信
-
2024/12/04
-
2024/11/27
研究・情報発信