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NRI トップ サステナビリティ ステークホルダー・ダイアログ 2018年度 CSRダイアログ(本編)

サステナビリティマネジメント

2018年度 CSRダイアログ(本編)

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2018年8月2日に、スイスのジュネーブにあるSDGs推進する国際的NPO World Business Council for Sustainable Development(以下、WBCSD)を、また同月3日にはチューリッヒで国際的なESG評価機関のRobecoSAMを訪問して、NRIで2回目となる海外でのダイアログを開催しました。そのダイアログでは、各機関の有識者とNRI常務執行役員の横山賢次および社員等数名が、「ESG投資家が企業に求めること」や「SDGsに向けた企業としてのあるべき対応」などについて、意見を交わしました。

出席者

(所属、役職は2018年8月時点)

写真:フェデリコ・メルロ(Federico Merlo)氏

フェデリコ・メルロ(Federico Merlo)氏

WBCSD Managing Director of Member Relations & Senior Management Team

25年以上の経験を持つ、マーケティングおよび販売のスペシャリスト。 デュポンやインビスタ等、大規模な多国籍企業、新興企業での製品販売、コンサルティングに従事し、2016年4月、WBCSDのメンバー・リレーションズ・ディレクターに就任。2016年11月より現職。

写真:フィリッポ・ベグリオ(Filippo Veglio)氏

フィリッポ・ベグリオ(Filippo Veglio)氏

WBCSD Managing Director of People & Senior Management Team

2005年、WBCSDに入社。さまざまな業界にわたる(WBCSD)メンバー企業の上級代理人、(メンバー以外の)ビジネス組織、国際機関、NGO、学術機関と連携し、社会的インパクト、持続可能なライフスタイル、 グローバルネットワーク、ポリシー、SDGs、WBCSDのパフォーマンスの測定等の分野でWBCSDの活動を監督している。

写真:エドアルド・ガイ(Edoardo Gai)氏

エドアルド・ガイ(Edoardo Gai)氏

RobecoSAM Managing Director, Head of Sustainability Services

2000年、RobecoSAMに入社。2006年に創設されたサステナビリティサービスの責任者。ICT業界のアナリストであり、サステナビリティデータ分析評価並びにDJSIの選定プロセス策定に携わり、DJSIインデックスの共同責任者を務めた。

写真:ジバン・ガフリ(Jvan Gaffuri)氏

ジバン・ガフリ(Jvan Gaffuri)氏

RobecoSAM Director, Senior Manager, Sustainability Services

2006年、RobecoSAMに入社。サステナビリティサービスチームのメンバーであり金融アナリスト。企業と協働で、サステナビリティに関する方針、運用、パフォーマンスのベンチマークを策定するとともに、サステナビリティの財務的重要性について、世界各地で発信している。

写真:マンジット・ジャス(Manjit Jus)氏

マンジット・ジャス(Manjit Jus)氏

RobecoSAM Director, Head of ESG Ratings

ESG評価チームの責任者。Corporate Sustainability評価(CSA)業務の責任者として、DJSIの策定およびCSAのデータ収集・検証の管理に携わる。幅広い業界のサステナビリティデータを担当している。

写真:横山賢次

横山賢次

野村総合研究所 常務執行役員

サステナビリティ、グローバル業務企画、コーポレートコミュニケーション、総務、業務、調達管理、経理財務を担当。中長期の視点に立って、事業を通じた社会課題の解決やサステナビリティ活動推進の先頭に立つ。

他の野村総合研究所(NRI)からの出席者

敷野嘉朗 総務部長
本田健司 サステナビリティ推進室長
藤澤茂  サステナビリティ推進室上級

ファシリテーター

石田寛氏 経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会 専務理事事務局長

オブザーバー

田口修央氏 ANAホールディングス CSR推進部副部長

CSRダイアログ with WBCSD

WBCSDとは、どのような組織ですか?SDGsをどのように推進していますか?

フェデリコ・メルロ氏:

WBCSDは、NPO組織であり、主に企業からの法人会費(メンバーシップ費)とターゲットプロジェクトの運営費を基に支出を賄っている。
企業200社が加盟しており、うち日本企業は20社。WBCSDは、企業がSDGsをはじめとする社会的課題に対して、グローバルレベルで連携しつつ対処できるビジネスモデルを実現するためのプラットフォームを構築している。
プラットフォームの活動のベースは、あくまでも企業が主体であり、ここには政府やNGOはいない。そのため、企業が安心して意見を交わしたり、学んだりすることができる“Safe Space”を確立している点で、WBCSDはユニークな組織体である。

フィリッポ・ベグリオ氏:

WBCSDは、SDGsが掲げている社会的課題について、ビジネスを通じて具体的にどのように解決していくことができるのかを、企業間で連携しながら、対応することで、付加価値を生み出していけるように支援している。現時点で特に注力しているテーマとしては、「栄養不足による乳幼児の発育障害」、「食糧廃棄物」、「農業問題(化学肥料)」の3つが今後社会にどのような負の影響を及ぼすのか懸念している。

フィリッポ・ベグリオ氏:

WBCSDでは、企業が単独で社会的課題を解決に導くことはできないと考えている。また社会に与えるインパクトやスケーラビリティを拡大していくために、以下の3つのコンセプトに基づき、企業に対して活動に参画してくれるよう、推奨している。

Innovation:サステナブルなビジネスで社会的課題を解決するためのイノベーションを提供する。

Collaboration:企業が様々なステークホルダーや他企業と連携し、価値創造を実現できるようにする。

Valuation:経済的価値だけではなく、真の価値(True Value)を見出すようにする。

WBCSDが主催する、主要なコンファレンスとして何がありますか?

フェデリコ・メルロ氏:

参加企業のCEOが参加するものと、CSO(Chief Sustainable Officer)が参加するものの年に2つがある。

CEO会議体

毎年10月、CEO戦略会議(Strategic Meeting)をスイス以外の国々で開催している。CEOたちが、主にサステナブルな視点で”Mission”や”Vision”を共有する。今後の開催場所としては、2018年にシンガポール、2019年にポルトガルを予定している。

CSO会議体

毎年4月、CSOが行動計画を練り上げ、ターゲットプロジェクトを運営する。毎回スイスで開催される。

WBCSDに加盟することのベネフィットは何か?

フェデリコ・メルロ氏:

WBCSDでは、ターゲットプロジェクトが30近くあるが、加盟企業は1社につき、2~3のターゲットプロジェクトに参画している。WBCSDに加盟するメリットは、以下の3つである。

  1. “Mission & Vision”の共有
    WBCSDに加盟することで、200社のCEOクラスと意見交換やSustainable Visionの価値観の共有ができ、また毎年開催するCEO会議で、人脈ネットワークを構築することができる。このCEO会議には、6割のCEOが参加し、その他の企業から代理として他の経営層が参加している。

  1. リーディングカンパニーとしての位置づけを得る
    ターゲットプロジェクトのワーキンググループに参画することで、イニシアティブを発揮してその分野におけるリーディングカンパニーとしての位置づけを確保することができる。
  2. 知見を得る・新しいビジネスソリューションの具現化と創造
    会合に参加して情報収集をすることなどにより、WBCSDの活動を通じて世界の動きを知ることができる。これらの活動は、規制や緊急事態により企業に制約が課せられる前に、解決策を導くことにも繋がる。

横山:

貴重なご意見を頂き、大変ありがとうございます。これまでSDGsの対応については、長らく検討中の状況でしたが、SDGsの本質を理解することができ、対応の道筋が見えてきました。SDGsに関連する社会的課題の解決に向けて、企業間で連携し、ビジネスを通じて社会価値を生み出す企業になっていきたいと思います。WBCSDへの加盟についても、前向きに検討します。

CSRダイアログ with RobecoSAM

ESGの評価機関として、企業によるCSRの活動を、どのように評価していますか?

エドアルド・ガイ氏:

我々は、「投資家の視点」で企業のレイティング(評価・格付け)をしていることが大前提にある。つまり、企業は単にサステナブルでより良い社会づくりに貢献するのではなく、ESGに関する課題の解決を通じて、持続的かつ収益性のあるビジネスを構築していくことが重要だと考えている。我々が最も注視していることは、企業自身が社会にどのような形で、正・負のインパクト(影響)を与えているのかを定量的に測る工夫をしながら行動し、その情報を開示するかである

社会が変化していく中で、評価基準をどのように追随させているのですか?

エドアルド・ガイ氏:

評価方法(メソドロジー)については、世界統一であり、各地域の事情に合わせてカスタマイズはしていないが、業界ごとに特有の基準はある。業界ごとに取り扱うべき社会的課題が違うため、様々なイニシアティブ団体からの情報を収集したり、国際会議に参加したり、個別企業と意見交換などをしたりして、世の中の動向を見極めている。さらに、我々の業界に関する専門知識と先見性により、調査中や未公表の問題も特定することができる。

ジバン・ガフリ氏:

ICT業界は、人や企業をつなぐだけでなく、さまざまなプロセスをより信頼的で効率的なものにすることによって、常に社会の発展において重要な役割を果たしてきた。新しい技術が導入される際にたびたび経験してきたように、今日では、AI(人口知能)やインダストリー5.0によって多くの仕事が消滅し、大きな社会的不均衡を生み出すことが懸念されている。 したがって、これらの新技術の開発が適切に管理され、ネガティブインパクトを防ぐためにあらゆるステークホルダーが関与することが重要だ。そうしたプロセスを守るなら、新しい技術の導入が経済・社会にポジティブインパクトをもたらすことが可能になるだろう。そのために現時点では、すべての当事者とステークホルダーが協力して未来に向けた最善の方法を見つけることが重要であり、我々RobecoSAMは広くオープンに皆さまの意見を聞き、議論をしていきたい。

評価基準の変更タイミングと意思決定プロセスはどのようになっているのですか?

ジバン・ガフリ氏:

我々は、評価方法の開発のために非常に精巧なプロセスを持っており、企業を差別化するための評価基準を絶えず見直すとともに、その財務的重要性を分析している。また、見直しを行う際には、企業との対話や社会からの要請、あるいは、世界で話題となっている社会的課題のテーマに注目して、潮流を見極めている。変更のタイミングとしては、基準を改訂する年次レビューを行った上で、最終判断はメソドロジー委員会で決定している。

評価基準の設定や変更について、特に心掛けていることは、常に、企業よりも少し先を走っている状態で行うことである。一番悩ましいことは、先を行き過ぎても、遅すぎてもダメなことであり、その見極めが肝要である。将来的に企業競争力や企業価値に影響を与えうるトレンドを予測する基準と、既に企業評価に反映されているESG情報を分けて扱うことが課題である。毎年3月には、評価項目の変更について日本でも説明会を開催している。

ESG情報の開示については、企業に対してどのような形を求めていますか?

マンジット・ジャス氏:

情報開示の方法は、ESGに焦点をあてたデータブックや統合レポートによるデータ開示等、形式にはこだわっていない。
我々にとっては、その情報が監査を受けているか、容易にアクセスできるか、そして財務的な重要性について説明されているかという点が重要である。
投資家にとっては、社会に及ぼす負の影響(インパクト)による潜在的なリスク課題が、万一、顕在化した際に、それが事業戦略上どれくらいの影響を及ぼすのかについて、分かり易く工夫して情報を開示することが重要である。そして企業は、抽出した課題の解決プロセスを明示し見える化した形で説明責任を果たすことで、信頼性を担保することができる。

ESGを重視する投資家が、企業に期待していることは何でしょうか?

ジバン・ガフリ氏:

ESG投資家は、企業が単により良い社会作りに貢献(寄付やボランティア活動)するのではなく、経済的・社会的価値を高めるために様々なステークホルダーを巻き込んだビジネスモデルを構築し、価値を創造することができるかどうかに期待を寄せている。価値を創造する過程においては、まず自社のビジネスが海外のサプライチェーンを含めたグループ全体で、社会にどのような負の影響を及ぼしているのかを把握し、情報開示をすることが求められている。特に最近、グローバル企業に対しては、環境やガバナンスよりも社会、とりわけ人権(職場環境・差別問題などや地域社会で生活して人々の生きる権利の侵害)に関するデューデリジェンスを行い、社会に及ぼす大きな負の影響として潜在的なリスク項目を抽出し、今後の対処方法についてKPI(重要評価指標)を設定することを強く期待している。

エドアルド・ガイ氏:

今後、企業の経営戦略においては、経営意思決定プロセスの中で、不測の事態が生じてもリスクを最小限に止めていくために、常時リスクマネジメント体制を構築しているかどうかが問われている。そのためには、社会変化の兆しを的確に捉えるため、ダイバーシティやインクルージョン(包摂性)等の観点で、多様な価値観を包含できるマネジメント体制が機能していることが期待されている。

マンジット・ジャス氏:

今日、投資家はESGのリスクと機会を管理するだけでなく、SDGへの積極的な貢献を期待している。 したがって、単にデータを開示するよりも、自社のビジネスが社会にもたらす正や負の影響(インパクト)を測定し、その情報を開示することを期待したい。

ジバン・ガフリ氏:

ICT業界には、イノベーションを生み出し、社会の効率を高める役割が大きく期待されている。こうした変革は、テクノロジーが進化することで人間が職を失うことに対して、代替する職業を創造すること(雇用の創出)ができるのかについて、注意深く監視しながら進められなければならない。バランスをとることは困難だが、ICT業界はこれまでも社会との「つながり」を実証してきたのであり、全ての関係者の利益が最大になるような形で、この困難な課題を克服することができると信じている。

横山:

貴重なご意見を頂き、大変ありがとうございます。ESG投資家が、企業に対して、事業戦略の中にサステナブルな社会づくりを組み込むと同時に、それによる影響を開示していくことを求めていることを実感しました。また、ICT業界に対しては、テクノロジーの進化によるネガティブな面の懸念がある一方、それ以上にポジティブな面での大きな期待もあることが分かりました。ESG投資家の期待に添えるICT企業として、発展を目指していきたいと思います。

(2019年1月11日公開)

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