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NRI トップ サステナビリティ 有識者ダイアログ 2019年度 CSRダイアログ

サステナビリティマネジメント

2019年度 CSRダイアログ

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2019年9月2日に、サステナブルファイナンスの分野において世界をリードする金融機関BNPパリバグループの資産運用部門BNP Paribas Asset Management(以下、BNP Paribas AM)、ならびに国際的なESG評価機関であるVigeo Eirisを訪問して、NRIで3回目となる海外でのステークホルダー・ダイアログをフランスのパリで開催しました。
当該ダイアログでは、各企業の有識者とNRI常務執行役員の横山賢次および社員等数名が、「国際的なサステナブルファイナンスの潮流」や「SDGsに対する企業の取組みに対する評価」などについて、意見を交わしました。

出席者

(所属、役職は2019年9月時点)

写真:Sheila ter Laag氏

Sheila ter Laag氏

BNP Paribas Asset Management Head of ESG Specialists, Sustainability Centre

専門組織であるサステナビリティ・センターのESGスペシャリストのグローバル責任者で、センターの研究、政策、投資管理等について、顧客とのコミュニケーションを担当。また、ESGファクターのレポーティングにおいて投資チームをサポート。転換社債と欧州株式の投資スペシャリスト、オランダとベルギーにおける顧客開拓の経験も持つ。

写真:Emile Beral氏

Emile Beral氏

Vigeo Eiris Chief Operating Officer

ESG業界で15年の経験を持つ。Bureau Veritas社のコンサルタントを経て、2005年に環境および産業部門のESGアナリストとしてVigeo Eirisに入社。その後、エネルギーおよび公益事業部門の管理を担当。Vigeo Eiris実行委員会、Vigeo Rating Research Directorとして、9年間活動の管理を担当し、ESGアナリストチームの拡大、新しい研究部門の発足、Eirisとのチーム統合を監督。2020年より同社取締役として企業格付けに関する各社の事業活動の支援を担当。

写真:Elise Attal氏

Elise Attal氏

Vigeo Eiris  Institutional Affairs Manager

Vigeo EirisのInstitutional Affairs Manager(顧客対応責任者)。英国のフランス大使館における政策アナリスト、環境に特化したシンクタンクにおける政策研究者としての経験を経て、2016年9月にVigeo Eirisに入社。規制対応および広報活動を担当。Vigeo Eiris科学委員会事務局および学術パートナーシッププログラムの責任者も務める。

写真:Nicolas Moriceau-Gomez氏

Nicolas Moriceau-Gomez氏

Vigeo Eiris Head of Sustainability Rating

金融関連のコンサルティング会社における15年の経験、BNPパリバにおける資産管理および投資銀行業務を経て、2019年7月にVigeo Eirisに入社。現在、営業担当として、格付け対象企業の開拓を担当。

写真:Paul Courtoisier氏

Paul Courtoisier氏

Vigeo Eiris Head of Sustainability bonds & Loans

公共機関、民間企業両方での勤務経験を持ち、サステナビリティ債券(特にセカンド・パーティー・オピニオン)の分野で豊富な経験を持つ。
環境、ステークホルダーとの対話、CSR方針の策定等に関するスペシャリストで、農業、食品、金融機関、行政など幅広い分野でプロジェクトを牽引。

写真:Julie Quiedeville氏

Julie Quiedeville氏

Vigeo Eiris ESG Analyst, VE Connect Manager

2013年にVigeo Eirisに入社。石油、ガスなどのエネルギーセクターおよび廃棄事業者、水道事業者などの公益事業セクターのESG評価分析におけるスペシャリスト。
Vigeo Eirisのアナリストと評価企業間の対話ツール”VE Connectプラットフォーム”の立ち上げなどを主導。2019年以降、企業のSDGsへ貢献度評価に関する研究を担当し、プロダクトマネージャーとしてSDGs投資のクライアント顧問を務める。

写真:横山賢次

横山賢次

野村総合研究所 常務執行役員

サステナビリティ、コーポレートコミュニケーション、総務、業務、調達管理、経理財務を担当。中長期の視点に立って、事業を通じた社会課題の解決やサステナビリティ活動推進の先頭に立つ。

他の野村総合研究所(NRI)からの出席者

本田健司 サステナビリティ推進室長
藤澤茂  サステナビリティ推進室上級

ファシリテーター

石田寛氏 経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会 専務理事事務局長

CSRダイアログ with BNP Paribas Asset Management

BNP Paribas AMが考えるサステナビリティ経営またはサステナビリティ戦略とはどのようなものですか?

Sheila ter Laag氏:

BNP Paribas AMグループでは、2002年からサステナビリティ分野での取り組みにコミットしており、昨年3月にトップ・マネジメントの力強い支援を受けて、2020年末までに管理する全ての資産を持続可能なものとするためのロードマップを定めた、グローバルサステナビリティ戦略を立ち上げた。
この戦略は、サステナブル投資(Sustainable Investment)を通じて顧客に長期的投資収益を実現することを目的としている。企業が提供するビジネスが地球上の資源を奪うことなく、未来をより良い方向で変えていくよう挑戦し続ける企業に投資したいと考えている。BNP Paribas AMグループは、この戦略を遵守するため、投資に関わっていないスタッフを含む全ての従業員の教育に力を入れると共に、顧客ともサステナブル投資(Sustainable Investment)に関するコミュニケーションを図っている。

BNP Paribas AMのサステナビリティ戦略を実行するための組織は、どのようなものですか?

Sheila ter Laag氏:

BNP Paribas AMグループでは、2019年6月30日現在、サステナブル投資(Sustainable Investment)に427百万ユーロの資産を運用することを決めている。サステナビリティ戦略を実行する上で、2017年にBNP Paribas AMグループに設置されたサステナビリティ・センターの役割が重要になっている。
サステナビリティ・センターは、現在24名のESG専門家を擁し、それぞれ平均10年超のサステナビリティに関するバックグラウンドがある。また、コンサルティング、政策提言、NGO、国際機関、ビジネス経験者などの多様な業界経験者をメンバーに揃えている。
サステナビリティ・センターの主な役割は、今後BNP Paribas AMグループがESGの関連銘柄に投資ができるようにするための環境整備に主眼を置いており、CEOが議長を務めるサステナビリティ委員会(Sustainability Committee)の直下で、このサステナビリティ・センターがグローバルを統括し、並列して投資チーム(Investment teams)及びコミュニケーション・マーケティング(Communications and Marketing)のビジネス部門を配置する体制としている。サステナビリティ委員会の意思決定に基づき、社員一人ひとりがサステナブル投資(Sustainable Investment)を自覚して業務に従事できるように教育プログラムを用意し、周知徹底させている。
今後の展望としては、BNP Paribas AMグループの投資事業を本格的にESG投資に舵を切るため、グローバル企業約14,000社のESG評価を行うことを目標にしている。この目標を達成するために、多数のESG分析チームが必要となるため、投資チームのサステナビリティ分野を強化している。BNP Paribas AMグループでは、新興分野において専門知識を持つ25の大学で構成される、国際的な連携団体GRASFI(Global Research Alliance for Sustainable Finance and Investment)への援助を通じて、学界に協力している。

BNP Paribas AMのサステナブル投資における企業のESG評価のフレームワークやプロセスは、どのようなものですか?

Sheila ter Laag氏:

グローバルサステナビリティ戦略で説明している通り、BNP Paribas AMグループは、全ての投資にサステナブル投資(Sustainable Investment)の要素を取り入れる方針で、そのアプローチには、以下の4本の柱がある。

  1. 運用プロセスへのESG統合(ESG Integration across all investments)
    全ての投資対象企業を分析・評価し、投資判断の意思決定を行う
  2. 企業価値を保護するための、スチュワードシップ活動(Stewardship(Voting, Engagement))
    健全な規制に影響を与える、社会的かつ環境的成果の促進する
  3. 企業の資産リスク回避
    責任ある企業行動指針の遵守及び一部運用商品の投資対象からの除外(Responsible business conduct expectations & product-based exclusions)
  4. 将来を見据えた(フォワード・ルッキング)観点:「3つのE」(Forward-looking Perspective:The “3Es”)
    BNP Paribas AMグループでは、投資先企業の将来動向を「3つのE」(エネルギーの転換(Energy Transition)、環境の持続可能性(Environmental Sustainability)、平等と包摂的な成長(Equality and Inclusive Growth))の観点で長期的な市場価値をモニタリング

横山:

貴重なご意見を頂き、大変ありがとうございます。サステナブルファイナンスの分野で世界をリードする金融機関の本気のサステナブル戦略や投資対象企業に対する見方について理解することができました。また、役職員に対する教育や啓蒙についても大変参考になりました。NRIも役職員への意識付けを継続して実施していくとともに、CSV(Creating Shared Value)の取組みをより力強く進め、NRIのサービスで社会課題を解決する挑戦をしていきたいと思います。

CSRダイアログ with Vitgeo Eiris

ESGの評価機関として、今後、ICT業界のどのような情報に注目していますか?

Elise Attal氏:

Vigeo Eirisがレイティングフレームワークで注目しているのは、人権(Human Rights)、人的資源(Human Resource)、企業行動(Business Behavior)、コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)、環境(Environment)、地域活動の参加(Community Involvement)の6つの領域である。各領域は複数のレイティングの評価項目に振り分け、最終的に38の評価基準を用いている。
特にICT業界については、上記6つの領域やレイティング評価項目の全てに該当するわけではなく、主に以下の評価項目に強い関心を寄せている。

  1. プライバシー問題
  2. AIの出現に伴う雇用の減少(失業といったネガティブな要素だけではなく、新たな雇用の創出といったポジティブな要素も注視している)

Nicolas Moriceau-Gomez氏:

各レイティング評価項目の管理方法は、以下の3つのコンポーネントから構成されている。

  1. リーダーシップ:企業がどのように経営層も包含したエンゲージしているのか。
  2. インプリメンテーション:実際に取り組みを行う際には、その領域のどこまでをカバーし、スコープ(ビジネス領域)までを対象に盛り込んでいるのか。
  3. 結果:インプリメンテーションで抽出した領域課題のKPIを設定し、それをステークホルダーにフィードバックすることで負の側面を対処する。そしてこの負の側面を対処していくことで、やがてステークホルダーからの信頼を勝ち得てビジネス機会を得ることもできる。

Vigeo Eiris は、どのような手法で評価対象企業のCSV(Creating Shared Value)活動の評価を行っているのか?

Elise Attal氏:

Vigeo Eirisでは、CSVの観点で企業を評価する際に、その企業の商品やサービスがどのSDGsのゴールに該当しているのか9つの事業領域にマトリックスで分類している。このリサーチ手法を「Sustainable Goods & Services(SGS)」リサーチと呼んでいる。
SGSリサーチでは、実際の企業の行動が商品やサービスを通じ社会にどのように影響を与えているという観点を最も重視し、調査を行っている。

企業は、どのようにSDGsを捉えていくべきでしょうか?

Elise Attal氏:

Vigeo Eirisは、SDGsのフレームワークに基づいて、企業がアクションする際には、まず4つに分類(Practices, Prosperity, People, Planet)した上で、8つのテーマ(企業倫理(Business Ethics)、ガバナンス(Governance)、健康な生活(Healthy Lives)、開発ツール(Development Tools)、社会福祉(Social Welfare)、人的資本(Human Capital)、気候変動(Climate Change)、自然資本(Natural Capital))を設定する。
つまり、企業の行動、商品やサービスがこの8つのテーマに貢献しているかを整理することで、SDGsが掲げている社会的課題がよりビジネス領域に特化した形になる。

Julie Quiedeville氏:

Vigeo Eirisは、企業のSDGsへの貢献度を計るために3つのアプローチを用いている。

  1. 責任ある行動(Acting Responsibly)
    企業がビジネスを遂行する過程において、社会に及ぼす負と正の影響を的確に特定する。特に負の側面については、予防や最小限に留めるための最善策を講じることを求めている。また、コンプライアンスを遵守し、誠実な態度をとる企業文化を醸成する。
  2. 社会に及ぼす害の軽減と改善・救済(Mitigation and Remediating Harm)
    ステークホルダーとの争いを避けるためにも、自社の商品やサービスがステークホルダーに害を及ぼすことを把握していながら非公表としていないか、スクリーニングをすることが重要である。
  3. ビジネス機会の模索(Finding Opportunity)
    企業の商品とサービスがSDGsで求められている社会的課題を解決するために一役を担うものである。

横山:

貴重なご意見を頂き、大変ありがとうございます。ICT企業はCSVやSDGsを正しく理解し、サステナビリティ経営に統合していく事が求められていることを改めて実感しました。また、ICT業界特有のプライバシーや人権に関する課題についてはきちんと方針を定めたうえで対応し、ポジティブな面での機会については、NRIらしい社会課題解決を図るストーリーや重点項目を定めたうえで、取り組んでいきたいと思います。

(2020年3月25日公開)




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