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NRI トップ NRI JOURNAL Web3を活用した安心・安全なデジタル経済圏を目指して

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クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

Web3を活用した安心・安全なデジタル経済圏を目指して

KDDI株式会社 廣田 勲(左)
KDDIデジタルデザイン株式会社 播磨 寛(中央)
野村総合研究所 河津 功典(右)

#DX

2023/12/04

KDDIが2023年3月にローンチした「αU wallet(アルファユーウォレット)」は、Web3のテクノロジーを活用した、NFT(非代替性トークン)や暗号資産の管理などができるWeb3ウォレットです。KDDIの廣田勲さん、NRIの河津功典、両社の合弁会社KDDIデジタルデザインの播磨寛さんに、新サービスの開発にかけた想いを聞きました。

*偽造や改ざんが難しく、代替不可能な鑑定書や所有証明書付きのデジタルデータ

 

「自己主権型ID」への挑戦

――なぜ新しいウォレット・サービスを立ち上げたのでしょうか。

廣田 サービス立ち上げの1年以上前から、播磨さんや河津さんなどと企業横断で「次世代IDサービスはどうあるべきか」について勉強会を重ねていました。そのときに注目したのが、企業が顧客IDを管理するのではなく、ユーザー自身で管理する「自己主権型ID」の仕組みでした。そのタイミングで、KDDI社内で「自己主権型ID」と同じコンセプトであるWeb3の新サービスを立ち上げる計画が始まりました。この新サービスはWeb3のマスアダプションのために、ユーザーがWeb3であることを極力意識することなく、安心して利用できる環境を提供したいという目的があります。私たちもそこに参加し、ウォレット機能の企画・開発を担当することになりました。

河津 デジタルIDはこれまでサービスを提供する事業者が管理するのが一般的でしたが、近年では、本人が予期しないレベルでの個人情報の収集・分析や、プラットフォーマーによる情報寡占などが問題視されています。一方、Web3のテクノロジーを活用すれば、ユーザーが自身のデータを管理 できます。つまり、企業の都合でアカウントが削除されサービスが利用できないといった状況がなくなるのです。データ主権の変化によって、どのような新しい体験が生まれるのかは未知数ですが、Web3の領域は今後発展すると確信しています 。

安心・安全をベースにしたユーザーインターフェース

――サービス開発は順調に進みましたか。

廣田 暗号資産やNFTの購入管理などのサービスは既に存在しますが、パスワードを紛失して暗号資産を見失うなど、一般の人には扱いにくいものでした。そこで、誰もが安心安全に使えるサービスを目指しました。しかし、まだ世の中にないサービスです。KDDIとして提供できるレベルになるよう、具体的なイメージを固める作業で難航しましたが、NRIさん・KDIさんと議論を重ねて「バックアップ」の仕組みを実装しました。設定は任意ですが、バックアップを設定すると、秘密鍵の紛失や盗難の心配がなくなり、多くのお客さまに安心してウォレットを利用してもらえます。

播磨 新しいデジタルウォレットの開発でKDDIが非常に重視したのがスピード感です。通常は半年かかるプロジェクトを3~4カ月で進めることになりました。幸い、NRIが独自開発したデジタルウォレット開発キット「Walletech(ウォレテック)」は、自己主導型ID、NFT、暗号資産、バックアップの機能が利用できます。これを使えば、いち早く世の中に出せると思い、活用を提案しました。Walletechをベースに安心安全のコア機能を開発し、その上に、KDDIの想いを表現する新しいUI(ユーザーインターフェース)を作り込んでいきました。

河津 昨今は、暗号資産の窃盗など悪いニュースが報道されることも増え、一般の消費者には不安感が先行しているように感じていました。私たちのサービスでは「とにかく安心安全を守ること」が関係者全員の共通の課題だったので、様々な検討を行う上でのベースができたため、プロジェクトを進めやすかったです。プロジェクトの進め方も、仕様通りにつくる受託型ではなく、勉強会から始まった座組を活かし、構想段階から密に連携しながら取り組めたので、非常にやりがいがありました。

両社が連携し、Web3のさらなる発展に貢献

――新サービスの手応えはいかがですか。また、今後の展望をお聞かせください。

廣田 利用者の数はまだ少ないのですが、Web3関連のスタートアップからの反響の大きさに驚いています。αU walletはまずはエンタメでの利用を中心に展開していますが、今回開発した認証の仕組みは企業向けDXソリューション、地域の活性化などにも役立ちます。たとえば、既存サービスと連携して付加価値をつくる、NFTを使った街おこしの実装を迅速かつ簡単に行うなど、さまざまな貢献ができるはずです。今後は全方位的に活用の場を つくっていきたいと考えています。

播磨 今回のαU wallet やWalletechが先行的にサービスを展開することで、Web3サービスに関心を持つ企業からの問い合わせが増えました。KDDIデジタルデザインでは、Walletechをさまざまな企業に展開し、さらに機能を拡充して、αU walletだけでなく、様々なサービスに還元したいと考えています。それによって、αU walletの利用者や利用量の拡大にもつながり、KDDIとNRIの双方に有益な形をつくっていくつもりです。

河津 Web3サービスのマスアダプションや、Web3テクノロジーを社会のあらゆるサービスに組み込んで付加価値をつけていくことは、私たち3社共通の 使命だと考えています。NRIは、安心安全な社会を目指すために必要な技術だと信じて開発したWalletechを活用しながら、各社がめざすつながる世界の実現に向けてコンサルティングおよびシステム開発を行います。また、利活用に関しては、NRI、KDDIデジタルデザイン、KDDIが更なる協力をして Web3全体を盛り上げていきたいと思っています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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