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大企業とベンチャー企業とのオープンイノベーションに向けて、クリアすべき3つの壁

コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパル 徳重 剛

#イノベーション

2016/12/22

大企業とベンチャー企業によるイノベーションの創出。最近、盛んにいわれていますが、成功例はまだ乏しいのが現状です。何をクリアすれば、実現できるのでしょうか。

マッチングブームではあるけれど……

閉塞感が漂う昨今、多くの大企業はベンチャー企業に熱い視線を向けています。自社にないリソースや自社では開発困難な機能を持つベンチャー企業と組むことで、イノベーションの実現を期待しているからです。
両者を引き合わせる大規模イベントなども、ここ数年で数多く開催されるようになりました。今や大企業とベンチャー企業の、ちょっとしたマッチングブームが起きています。

連携に立ちはだかる3つの壁

しかし、現実的にはなかなか難しく、成功事例はまだ少ないのが現状です。なぜ、うまくいかないのでしょうか。大企業向けに、ベンチャー企業との連携をサポートしているNRIの徳重剛(とくしげ ごう)は、大企業がベンチャー企業と連携を進めるには、3つの壁をクリアする必要があると言います。

「最初の壁は、(1)そもそもなぜベンチャー企業と連携するのか、ということ。社内で突き詰め、理解と合意を得ておくことが必要です。次に来る壁は、(2)どんなベンチャーと組むのか。言い換えると、自社が目指す方向にふさわしいベンチャー企業をどうやって見つけるかということです。そして3つ目が、(3)連携における実務的な壁。知的財産権の取り扱いやシステム連携をどうするかといった問題です」

「何をしたいか」「何が必要か」突き詰める

とても大切なのに、多くの大企業がスルーしがちなのが(1)だと徳重は言います。
「大企業とベンチャー企業の連携がうまくいかない理由として、昔から両者のスピード感や規模感の違いは言われてきました。しかし、最近のマッチングブームもあって、これらについてはある程度理解が浸透しています。
根本的な問題は、なぜベンチャー企業と組むのか、どんな企業と連携すべきかを、大企業側が突き詰めずに動くことだと思っています」

よくありがちなのが、新しく立ち上がった新規事業開発室などの担当者がマッチングイベントに参加し、数多くのベンチャー企業を回り、話は盛り上がったけれどそれで終わり、というもの。

「10年後、自分たちの事業領域でこんな世界を創りたい。そのためにどんなリソースや機能、データが必要なのか。それらは自社内にあるのか、自分たちで開発できるのか。そんなふうに整理し、この部分は自社では無理なので、Aというベンチャー企業と協業すべきだね、と落としていく。経営者や役員が議論に加わるか、少なくとも、その大企業の中期経営計画と整合性をとりながら、突き詰める必要があるのです」

「価値発見型人材」が必要

ベンチャー企業との協業によるイノベーション実現には、今後、適切な人材のアサインも不可欠だと、徳重は言います。

「ある大企業からご相談を受けて、とても先鋭的な取り組みをしているベンチャー企業を紹介したことがあります。きっと心が躍ってくれるだろうと思って引き合わせてみたら、反応は『で、我々はどうやってこのベンチャーを評価すればよいの?』という言葉でした。
そこで理解したのは、大企業の中では、新しさや先鋭的な動きを感じる感性すら失っている人がいるということでした。イノベーションの推進には、ある程度、向き・不向きがあると思います。私はベンチャー企業との協業には大企業社内の『価値発見型人材』と呼ばれる人の存在が必要不可欠だと思っています。人材に対する視点も、これからは重要だと考えています」

徳重は、大企業での新規事業立ち上げや、自身が会社を辞めてベンチャーを興した経験があります。ベンチャー企業・大企業双方を知る立場を活かし、6年ほど前から、大企業とベンチャー企業とのマッチング・協業支援に関わるようになりました。

「大企業の立場も、ベンチャー企業の気持ちも理解しているからこそ、公平な立場で両者を引き合わせていきたい。両者が力を出し合えるお膳立てをすることが、日本社会の活力になればと個人的にも思っています」

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