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IoTの3つの本質

研究理事 コンサルティング事業本部副本部長 未来創発センター長 桑津 浩太郎

2016/12/29

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IoTという言葉が広まっています。ITが、携帯電話やインターネットによる人とのコミュニケーションだったとすれば、IoTは、電力メーターや自動車などのモノとのつながり。IoTを理解するには、3つの本質を踏まえる必要がありそうです。

世界規模の人口減少社会を見越して

IoT(Internet of Things)という言葉が広まっています。

「この言葉がブームになり始めたのは2012年頃です。ITが、携帯電話やインターネットによる人とのコミュニケーションだったとすれば、IoTは、電力メーターや自動車などのモノとのつながりです。今では、人間以外の森羅万象を含む、定義の広い言葉になりました」

ITの分野を見続けてきたNRIのコンサルタント・桑津浩太郎は、この言葉がブームになり始めたのは2012年頃としたうえで、その背景を次のように見ています。

「社会の高齢化や人口減少が、現在は世界規模で進んでいます。いずれ私たちは、人に頼らずに、社会の生産性を上げる方法を見つけなければならない。その解決策として、AI(人工知能)、ロボット、そしてIoTが注目されています。このうち、技術的に先行していて、もっとも早くサービスが始まると期待されているのがIoTです。それが注目を集める理由だと思います」

IoTは、これまでのビジネスのあり方や人間の生活スタイルを根本的に変える仕組みだと、桑津は指摘します。IoTを理解するには、3つの本質を踏まえる必要がありそうです。

ユーザーが増えても儲からない

第一の本質として、従来発想のビジネスモデルをIoTに当てはめても利益は出ない、と桑津は言います。新しい技術や仕組みが生まれ、便利で快適なサービスが立ち上がり、マーケットが広がる――というのが従来の流れとすれば、この構造でIoTを捉えると見誤るというのです。

「人以外の森羅万象すべてを対象とするIoTなら巨大なマーケットが生まれると期待されています。しかし、これには疑問です。例えば、ITの代表格である携帯電話では、一人当たりおよそ5000円の月額料金が発生します。ところがIoTでつながる電力メーターや自動車では、センサーに月額5000円もの支払いは生じません」

IoTなら、つながるモノの数だけ多様なサービスも生まれるでしょう。例えば、スプーンにIoT機能を入れて手ぶれを測ったり、トイレで血糖値や尿分を測定したり……。しかし、こうした個々のサービスが確実に利益を生むわけではないと桑津は言います。

「携帯電話やインターネットなどが主流だったITのビジネスモデルは、例えれば牧場です。飼育するのは牛か豚か羊で。牧羊犬が一律に面倒を見ていればよかった。ところがIoTのビジネスモデルは動物園なのです。象やライオン、ペンギンやヘビなど飼育する動物は多種多様で、管理の仕方もそれぞれ異なる。ITは効率的な仕組みだったのに対し、IoTは雑多で分散しています。だからこそ、従来発想のビジネスモデルを当てはめることはできない。それでは儲からない、というのがIoTの本質だと思っています」

バリューチェーンは多様で複雑化

二つ目に、バリューチェーンの変化を桑津は挙げます。その例を、自動車を通じて説明します。

「現在、ある程度のグレード以上の自動車なら、走行距離や走行時間帯、急発進・急ブレーキの頻度などのデータから、どんな乗り方がされているか、自動車メーカーは把握できます。ところで、今後は中古車についても、バッテリーの使用具合などから、どのように利用されていたかがわかるようになります。つまり、中古で売り払われた車でも、IoTによって自動車メーカーとはずっとつながっている。そうなると、従来のバリューチェーンをもとに組み立てられてきたビジネスモデルは適応しなくなるのです」

どのメーカーも、材料を調達し・商品を組み立て・販売する、という流れを基本に、商品・サービスを提供しています。ところが、IoTによっていつまでも商品とつながることでバリューチェーンが多様化する。新しいバリューチェーンに合わせた商売の仕組みを立て直す必要が出てくるのです。

「メーカーだけに限った話ではありません。例えばシステムベンダーも、ネットワークを用意しました、通信サービスを提供します、という単純なサービスでは完結しません。その背景にある変化に着目し、発想を転換していかないと、IoTのビジネスモデルをなかなか組み立てられないと思います」

わくわく感はないが、社会のためにはなる

三つ目のIoTの本質として、サービスの主流は「社会全体には良くなるけれど、私はあまりやりたくないもの」と、桑津は指摘します。

「例えば、健康管理のために体重を測定する、保険とセットになったサービスが検討されています。体重の測定値によって、健康管理をしている人の保険料は下がり、していない人の保険料は上がるという仕組みです。誰も、体重計に乗ること自体を楽しいとは思わない。嫌ならサービスを受けなければよいのですが、そうなると保険料はとても上がり、年金を食い尽くすことにもなりかねません。個々が健康管理をすることは、個人にとっても、また社会全体にとっても良いことではあるけれど、個人の気持ちとしては、常に体重計に乗ってデータを取られることに違和感がある。こんなふうに、個人としては楽しくないし、抵抗もあるけれど、社会全体を考えればやったほうがよいとういサービスがIoTには多い。だから、人々の違和感をいかにクリアしていくかが、IoT普及の鍵になります」

仕組みとしては地味で、人にわくわく感はもたらさない。けれど、人口減少社会に頼らざるを得ないIoT。

「IoTは、社会の舞台裏を支える大切な仕組みです。違和感はあっても、今後の社会が受け入れていかざるを得ない。だからこそ、IoTの本質を社会に伝え、取り入れる方向性を示していく。それが、私たちNRIの役割だと思っています」

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