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企業経営の新潮流、CSRからCSVへ

経営コンサルティング部 伊吹英子

2017/03/15

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「企業の社会的責任」を意味するCSRに対し、CSVという新しい概念が登場しています。CSRと何が異なるのか、また企業にとってはどんな意味があるのでしょうか。

 

世の中の社会課題を本業で解決するCSV

 

企業は法令を順守し社会の一員として責任を果たすべき、との考えから、日本企業でCSR(Corporate Social Responsibility)の推進が始まったのは2003年の前後。今では大手企業のほとんどがCSR担当セクションを設置し、定期的に活動報告書などを発行してCSRに取り組んでいます。ところで最近、企業の社会的責任のあり方として、新たにCSV(Creating Shared Value)という概念が広まっています。CSRとCSV。この違いは何でしょうか。

 

経営戦略の観点で企業のCSR活動をサポートし続けているNRIの伊吹英子は次のように説明します。

 

「CSVは、世の中の社会課題に目を向け、それを本業で解決することで、事業機会を生み出し、自社の成長につなげていこうという考え方です。ハーバードビジネススクールのマイケル・E・ポーター教授が2011年に提唱しました。一方、CSRは、法令を順守し、人権侵害や環境問題などに配慮する、いわば守りの姿勢も含む概念。両者の最大の違いは、CSVが利益の最大化を図る積極的な動きなのに対して、CSRは持続的成長に向けて経営基盤を強化するといった非財務的な活動を含む点です」

 

取り組む主体も、CSVは会社の各事業部門が中心となるのに対し、CSRは本社の管理部門が中心となる取り組みも多いと、伊吹は指摘します。

 

企業を取り巻く環境変化

 

ところで、なぜ今CSVの考え方が広がっているのでしょうか。伊吹は、企業を取り巻く環境変化の要因を次のように考えています。

 

一つは、国連が2015年9月に、2030年に向けて新たに設定した「持続可能な開発目標」(SDGs)。その前に設定された「ミレニアム開発目標」(MDGs)でと比較してSDGsでは17の社会課題に対し、企業が関与し解決することを期待しています。企業へのインパクトは大きく、企業が社会課題解決に動く機運が世界的に高まっています。

 

もう一つは、「非財務的な取り組みがあってこそ、持続的な財務パフォーマンスが上がる」と投資家が考えるようになった点。ひらたく言えば、一見、儲けには直結しないようにみえる取り組みが実は中長期的には収益向上につながると、投資家も見るようになったことです。

 

CSVは新しい経営戦略

 

さらに、市場が成熟するなかで、新しい市場の開拓には、社会課題と向き合わざるを得ないと、企業が考えるようになったこと。社会課題の解決が、潜在市場を開くチャンスになり得るのです。

 

「誤解しないでほしいのですが、CSVは、従来のCSRの考え方に置き換わるものではないのです。CSVは、新しい経営・事業自体のあり方を問う概念なのです」と伊吹は言います。

 

「CSVが広まるなら、企業経営のあり方そのものも変わっていくことになるのです。CSVは、自社が社会的課題に対して将来的にどう向き合うのか、それに対して今から何をしておくのか、事業部門で働く一人ひとりが主体となって、長期的視野も取り入れつつ動いていく考え方です。現在、日本企業の多くは、どの現場も短期財務思考に陥りがちで、業績評価の方法も短期に設定されていることが多いのが実情です。CSVを実践していくなら、将来的には経営管理の方法自体を変えていかなければなりません」

 

誰もが社会に貢献したい

 

経営を、より中長期的な視点で考え、社会課題を起点にビジネスを広げていく。古くから日本企業に育まれてきた“三方よし”の精神。CSVは、この本質的な姿に立ち返る動きなのかもしれません。

 

「CSVを実践するには、まず現場の人たちそれぞれが、将来がどうなっているのか、どんな社会課題が起きていて、それに対して自分たちはどんな解決ができるのかを考えるのがよいと思います。例えば高齢化の問題に、自分たちの事業では何ができるのか。5~10年の視野で考えることから始めてみる。現在、あるメーカーのCSV推進をサポートしていますが、現場の方々にこうした問いかけをすると、それぞれいろいろと考えて、ああ、自分は本来こういうことで社会に役立ちたかったのだ、と語ってくれます。もともと人は、社会に貢献したい気持ちを持っているもの。CSVによって、その気持ちが活かせる経営に変われば、社会課題の解決にもつながっていくと思います」

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