ビジネスのわかるデータサイエンティストを目指せ!
#AI
2017/06/27
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を導入したけれども、ビッグデータの分析や活用で苦労したり、投資からのリターンが十分ではないと感じたりする企業が増えています。本当に事業に役立つデータ活用がますます求められている中で、鍵となるのが「データサイエンティスト」です。彼らは具体的にどのような役割を果たすのでしょうか。
NRIシステムデザインコンサルティング部で、多数のデータサイエンティストを擁する「アナリティクスデザイングループ」を率いる沼澤に、データサイエンティストの仕事の現在と将来について聞きました。
活躍の場が広がっている
――IoTを導入する企業が増えていますが、データサイエンティストはどのような仕事をするのでしょうか。
たとえばコマツは、自社が製造した建設機械全部にセンサーを装備し、取得したデータを使って予知保全していることで有名です。というのも、建設現場における機械の故障はそのまま作業遅れにつながるため、これが頻発すると莫大な損失が出るからです。過去のデータから「この箇所がこんな状態になると、機械が動かなくなる」という法則を導き出すことができれば、故障発生後ではなく事前に適切な対応ができ、故障をゼロにすることも可能になります。
こうした場面で、必要なデータを収集・分析し、問題解決に向けた手法やロジックを組み立てるのがデータサイエンティストの主な仕事です。インターネットが普及し、センサーも安価になり、ECやウェブ関連事業だけでなく、工場や店舗などでもさまざまなデータを入手できるようになりました。そのため、一般企業でもデータサイエンティストが求められています。
多様な手法やツールで最適な解決策を設計
――NRIのようなコンサルティング会社では、データサイエンティストはどのような活躍をしていますか。
NRIのコンサルティングは、お客様と一緒にあるべき業務を明確にしたうえで、それを実現するために必要な組織や業務ルール、情報システムなどを設計しますが、最近ではこれらの設計を行う際にもデータ分析が欠かせません。お客様はあらゆる産業が対象です。私自身も製造業や小売、金融、不動産など多くの分野の仕事をしてきましたが、ウェブ上ですべて完結する世界もあれば、製造工場に足を運ぶこともあり、刺激的な経験ができます。
「パソコンと向き合って細かいデータの分析を行うばかりではなく、常に業務やビジネスを中心におき、お客様と一緒にデータの使い方を議論するところが新鮮で、やりがいがある」というのが、転職してきたデータサイエンティストたちの感想です。
――毎回、お客様のニーズはかなり異なりそうですね。
そういう多様なニーズに柔軟に対応するため、データ分析の手法やツールを固定していないところはNRIの特徴だと思います。
たとえば、車両用エンジンの異常が起こる原因を突き止めるというテーマに取り組んだのですが、お客様からはディープラーニングを使ってみたいとの依頼を受けました。ところが、NRIのデータサイエンティストはディープラーニング以外にも利用可能な手法でシミュレーションを行ったうえで、最も正答率が高く、因果関係も検証されたランダムフォレストが最適だと推奨したのです。このときはお客様のご依頼とは異なるアプローチを選択したわけですが、お客様に分析結果をご満足いただき、現場での業務活用につながりました。こうした提案が可能なのは、常にお客様の課題の本質に答える提案を行うために、日頃から最新の技術情報をウォッチし、さまざまな手法やツールを利用できるよう準備しているからです。
三位一体のチームで課題に挑む
――お客様の業務を理解していないと、最適な提案はできませんね。
お客様によっては、AIやIoTを使って何を実現するかという構想をうまく描けていないこともあります。そのなかで、ただ過去のコンサルティング事例や先進事例を見て、当てはまりそうなツールを提案するだけでは不十分です。現場に入り込んで、お客様の課題を理解し、データを調べて、結果が出ない理由を突き止める。そのうえで、やるべきことを客観的に評価・提案し、実現するまで並走する。そういうサービスを大切にしています。
これら全てを1人の担当者で対応することは難しいので、通常はチームを組んで対応します。課題分析や問題定義、解決策に向けたシナリオ作成などは業務コンサルタント。ツール選定やロジックづくりはデータサイエンティスト。データ処理の簡素化や自動化などはデータエンジニアが担当します。とはいえ常にチームの中核にあるのは、ビジネス・コンサルティングのスキルです。
――最後に、この仕事の魅力について教えてください。
多様な課題に触れて、自分のデータサイエンス力をビジネスに活用し、お客様の業務変革や未来をつくるお手伝いをする。それで、どのくらい業務効率が向上したか、利益が出たかがダイレクトにわかる――アウトプットに責任を持つのは大変ですが、そういうヒリヒリした感情に巡りあえるのも、この仕事の面白さだと思います。
- NRIジャーナルの更新情報はFacebookページでもお知らせしています
-