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日本の物流はどうなる?

グローバルインフラコンサルティング部 コンサルタント 村岡 洋成 小林 一幸

2017/07/24

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安全・確実に、どこへでも、素早くモノを運んでくれる日本の物流サービス。ところが人手不足の深刻化が進み、私たちが当たり前のように受けてきたこのサービスの維持が、困難な状況に直面しています。日本の物流はどうなってしまうのでしょうか。

 

課題は取引件数の増加

 

今年4月、ヤマト運輸は宅配料金の値上げと、アマゾンの当日配送サービス受託からの撤退を表明しました。ドライバー不足が深刻化する宅配業界の切羽詰まった状況を象徴する出来事です。国土交通省によると、2000年にはおよそ25億個だった宅配取り扱い個数は、2016年には38億個を超えました。ネット通販の急拡大による配送件数の急増が、従来サービスを維持できるレベルを超えたとの見方もあります。

 

実はこの人手不足の問題は宅配業界に限らず、日本の物流業界すべてに共通しています。地方では特に深刻で、店舗に商品が届けられない、農産物が引き取られないといった事態が目前に迫ってきています。

 

長らく物流業界に携わってきたNRIの村岡洋成と小林一幸はこの状況について「ECの貨物いわゆるBtoCの貨物が増えて取引件数が増加したことが主たる原因だ」と指摘します。

「取引件数が増えても、宅配業者は従来どおりのボリュームディスカウントを提供し、一方で時間指定・再配達などの過剰ともいえるサービスを、荷主と消費者から求められてきました。そのため、見過ごすことができない水準まで宅配業者の負担は増え、利益率が低下することになったのです」

 

シェアリングエコノミーを取り込む

 

このように厳しい状況に直面している日本の物流業界ですが、村岡は「イノベーションによって改善できることはたくさんある」と言います。イノベーションというと、物流業界ではロボット導入や自動運転による業務の省力化が注目されがちですが、「サービスの見直しや、輸送の仕組みを変えるなど、できることはたくさんあります」と村岡と小林は指摘します。

 

「例えば、荷物の受け取り方法を多様化することも一つです。宅配業者はすべての荷物を直接届けるサービスを基本としてきました。しかし、受け手のニーズは変わってきており、直接、手渡しされることを必ずしも良しとしないケースも増えています。宅配ボックスやコンビニでの受け取りは、こうしたニーズに対応した先駆的なサービスといえます。

また、時間指定のサービスも、ホテルや航空機のように枠を設け、予約した人が優先的に利用できるサービスへ移行できれば(例えば、この時間帯は先着○人までなど)、需要をキャパシティー内に収めることができるので、ドライバーの負担の軽減にもつながります。こうした仕組みは、インターネット上で十分効率的に対応できますし、ビッグデータを活用すれば、稼働が少ない時間帯の料金を、あらかじめ安くすることも可能になります。これら以外でも、ユーザーニーズの変化を読み解き、デジタル化を進めることで、サービスの内容や価格を多様化することは十分に可能と思っています」

 

写真左から村岡洋成、小林一幸

 

輸送の仕組みを変える

 

輸送の仕組みを変えることで、無駄を省く試みも始まっています。

「例えば、これまでメーカーは自社の商品だけを運ぶ物流網を構築していましたが、最近では、複数のライバル社が共同で商品を運ぶ動きも始まっています。また、以前は東京から大阪までの荷物を1人のドライバーで運んでいた輸送ルートを、静岡に中継拠点を設けることで、東京と静岡、静岡と大阪の2人のドライバーで連携をして、輸送を分ける工夫をしている会社もあります。これによりドライバーが日帰りできるようになり、生産性の向上が期待されています」

 

「物流全体としては、まだまだ無駄があります。それを効率化していけば、伸びしろは十分にあると見ています。規模は小さいですが、スタートアップ企業が、個人のトラック事業者を対象に、空いているトラックと荷物をマッチングするオンラインのプラットフォームなどを提供していますし、海外では、こういったサービスの普及が進んでいます。こうした企業が伸びていけば、物流の仕組みは大きく変わっていくのではないでしょうか」

 

物流ビジネスの将来シナリオ

 

値上げや時間指定配送サービスの見直しなど、昨今、物流業界をめぐる話題がメディアで大きく取り上げられるようになっています。この点について村岡は、「物流サービスのあり方を大きく変革するチャンスと捉えるべきであり、業界はこれを機に、多様なサービスを提供しつつ、確固たる利益を確保できるように変わっていくことが求められていくと思います」と、業界の変革に期待を寄せます。

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