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日本の地方都市が「ローカルハブ」として世界と結びつくには

社会システムコンサルティング部 小林 庸至、グローバルインフラコンサルティング部 波利摩 星也

2017/08/30

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加速度的に進む人口減少下にあっても経済活力を維持していくためには、大都市圏でも地方圏でも、生産性の向上が急務です。さらに、従来のような国内中心の経済活動ではなく、世界中から人や資本、ノウハウを集めて新たな産業を創出し、それをてこに都市が発展していくことが求められています。

そこで、NRIでは、「産業創発力」という切り口で国内100都市を対象に研究調査を行い、「成長可能性都市ランキング」を作成しました。

この研究に携わったNRI社会システムコンサルティング部の小林庸至とグローバルインフラコンサルティング部の波利摩星也に、これからの地方都市のあるべき姿や調査結果について聞きました。(TOP写真、左から社会システムコンサルティング部小林庸至とグローバルインフラコンサルティング部波利摩星也 所属は撮影当時)

 

大都市に依存しない「ローカルハブ」

 

現在、人口減少や東京一極集中などの問題を背景に、全国で地方創生の取り組みが進んでいます。日本では、人口1人当たり付加価値額が高いのは、東京や一部の企業城下町(特定の企業やその関連会社・取引先が産業の大部分を占める都市)に限られます。大都市に人材を供給し、大都市から財政支援を受ける「大都市依存型」が地方都市の典型的な構造でした。

 

一方、海外に目を向けると、ドイツには、1人当たりGRP(域内総生産)で大都市を凌駕する地方都市が多数あります。代表例としては、レーゲンスブルク市、エアランゲン市などが有名です。これらの都市は、大企業が拠点を構えるとともに、地元の中小企業と連携し、大学や研究機関の良質な人材や先端的な研究開発成果を活用しながら、世界に向けてビジネスを行い、外貨を獲得しているのです。

 

「大都市から自立し、地域で人材や企業を育成し、大都市と互角に競い、差別化しながら世界と結びつく“ローカルハブ”――これが日本の地方都市の1つの理想像です」と小林は言います。

 

産業を創発する風土・基盤・環境

 

ローカルハブになるには、さまざまなビジネスやスタートアップを生み出す基盤となる大手企業の存在、優秀な人材を輩出する大学・研究機関の存在、そして、地方公共団体による創業やイノベーションを促す取り組みが必要であると、小林は見ています。

さらに、優秀な人材をひきつけ、つなぎとめておくためには、多様性を受け入れる寛容な風土や、魅力的で暮らしやすい都市環境が欠かせません。

これらの条件を満たした都市では、優秀な人材がメガリージョン(大都市圏域)に流出することなく地元に残り、新たなビジネスやスタートアップ企業の創出の可能性が高まります。人に選ばれるまちが企業をもひきつけ、新たな産業を生み出すローカルハブとなって経済的にも発展していくのです。

 

 

「そこで『成長可能性都市ランキング』の作成時には、統計データを収集・分析するとともに、各都市の住民を対象にウェブアンケートを行い、統計では把握できない情緒的な要素も指標化するよう工夫しました。この研究調査では、人口規模などから100都市を選定し、次の3区分、6つの視点で131の指標を設け、産業創発力を評価しました」と波利摩は言います。

 

 

日本の多くの地方都市が高いポテンシャルを秘めている

 

この指標群を使って、総合的な産業創発力をはじめ、産業創発力の視点別、ライフスタイル別など12種類のランキングを作成したところ、三大都市圏以外にも、「ローカルハブ」となる可能性を秘めた都市が多数浮かび上がってきました。特に、将来の伸びしろを評価した「ポテンシャルランキング」で上位に挙がったのは、福岡市、鹿児島市、つくば市、松山市、久留米市です。

「ポテンシャルランキング」で1位となった福岡市は、ビジネス環境が整っているだけでなく、多様性に対する住民の寛容度の高さ、新しいことに挑戦する気質、産学連携の研究活動など創業に必要な条件がそろっています。従来、支店経済のまちと言われ、大企業が少ない点が弱みとなってきましたが、今後、ビジネス環境の魅力を発信し、域外からの企業誘致、域内からのビジネス創発を支援することで、「ローカルハブ」となることが期待されます。

 

各種ランキングで10位以内に入った都市は、全国で40都市にのぼりました。移住者にやさしく都市の利便性と自然が両立する環境で働くなら鹿児島市、起業するならつくば市、子育てをしながら働くなら松本市、というように、都市の個性も浮かび上りました。「今回の調査で地方都市の力を可視化したところ、一見、産業創発というイメージが希薄な都市でも高いポテンシャルを持っていることがわかりました。この結果を産業振興につなげてほしいと思います」と波利摩は語ります。

 

さらに、小林は次のように提案します。「個々の強みを活かして多様な『ローカルハブ』を育てていけば、地方再生だけでなく、日本全体の成長につながります。国は、都市の強みや成長可能性を踏まえ、”選択と集中”の視点を持ちながら、効果的・効率的に投資を行っていくことが必要です」

 

■メディアフォーラム講演資料

2017年7月5日発表 NRIメディアフォーラム「ランキングによる都市の持つ「成長可能性」の可視化」

 

■書籍

地方創生2.0 与えられる地方創生から独立経済の構築へ

  • 「ローカルハブ」について提言した書籍です。ランキングは掲載されていません。
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