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サービス産業生産性アップのためのチャレンジ ~知的資産創造 8月号巻頭言~

相談役 藤沼 彰久

2017/10/02

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日本のサービス産業(第三次産業)は、既にGDP、雇用で 7 割のシェアを占めるまでの存在になっている。特に医療・介護、教育などの分野は需要の伸びが大きく、慢性的な人手不足がいわれている。

 

人手不足を生産性改革の好機ととらえる

 

最近では少子高齢化や景気回復の影響を受けて、日本全体で人手不足が騒がれ始めた。それでなくても人手不足気味であったサービス産業の逼迫感は一層強まっている。しかし見方を変えれば、人手不足は構造改革のチャンスであり、付加価値アップの追い風となる。

サービス産業の労働生産性は製造業を大きく下回っており、また米国との同業比較でも下回っている。卸・小売、飲食・宿泊などの業種の労働生産性は米国の半分以下、ビジネスサービスに至っては米国の 4 割以下である。

 

生産性を上げるには、次の 3 つの方法がある。①既存の事業の中で改善する、個々の企業が改善する、②新規参入や退出をやりやすくして、企業の新陳代謝を図り、改善する、③規制を緩和して、新しいビジネスモデルが産まれやすくして改善する。

産業全体として抜本的に生産性を上げるためには、②の企業の新陳代謝を起こりやすくしたり、③の規制緩和によりビジネス形態を変えたりしていくことがあるが、①の既存事業の改善や個別企業の改善でも相当のことができるであろう。

日本(人)は物事を大きく変えることが苦手だが、地道な改革は得意である。この得意分野で勝負すれば大きな力を発揮できると思う。

実際問題として、サービス産業全体では依然として低い生産性であるものの、個別には優れた生産性を上げている企業も多い。サービス産業生産性協議会が優秀な企業を選ぶ「日本のハイ・サービス300選」の「科学的・工学的アプローチ」や「サービスプロセスの改善」で高得点を取った企業は、企業規模にかかわらず高い生産性を上げている。こうした企業に学んで、そのベスト・プラクティスを取り入れるだけでも、日本のサービス産業の生産性向上に大きな成果が期待される。

 

事業拡大に直接貢献する攻めのIT投資が鍵

 

最近、将来的にAI(人工知能)に代替され得る職業が話題になっている。野村総合研究所(NRI)もオックスフォード大学との共同研究で、「10〜20年後には労働人口の49%がAIやロボットに代替可能」という試算を発表した。これは日本の601の職業に対して職務構造を分析し、それぞれの職務のAI代替可能性を計算し、従事する人の作業すべてを高い確率(66%以上)でコンピュータに置き換えられるかを試算したものである。社会的影響や価格など考えず技術的側面からのみの分析なのであるが、約半分の仕事がコンピュータで代替可能ということは、生産性アップの大きな可能性を秘めているといえるのではないだろうか。

 

タクシー業界の台風の目といえばUber(ウーバー)であるが、日本ではまだそよ風程度の影響しかない。ウーバーは、①専任でないドライバーを使うことと、②システム化によりタクシーの魅力と稼働率を上げること、具体的にはスマートフォンとGPSとクレジットカードを駆使して利便性を高め、実車率を上げることにビジネスモデル上の特徴がある。日本での実用を考えた場合、①はタクシー業界のあり方の問題になり調整が難しいが、②のシステムを有効活用することだけでも実車率のアップが期待できる。

流通業界では自動認識技術のRFID(Radio Frequency IDentifier)が普及目前である。以前に比べて安くなったとはいえ、タグ 1 つが10 円前後かかるため、使える範囲は限られるが、アパレル業界の先進的な企業ではすべての商品にRFIDをつけて、品物の受発注・在庫管理を行っている。

RFIDは無線での読み取りができるので、検品などが瞬時にできることで大幅な生産性アップを実現している。

 

これらのことを実現するためのシステム化は、攻めのIT投資(売上アップ、業務改革) が必要である。日本企業においては、守りの IT投資(コスト削減)は行われているものの、 攻めのIT投資が少ないというのが現状である。既存システムの維持に人と予算をとられ、ビジネスとITの両方を理解している人材の不足や、システムが試行錯誤的であるため経営の支援を受けづらいなどのボトルネックにより、投資が進まない。ビジネス支援サービスが充実している米国などを見ると、企業は守りの投資は外部に委託して、攻めの投資に重点を置いていることが分かる。

 

これからのサービス産業は、①ノンコアの事業は外に委託して、②ベスト・プラクティスに学び、③攻めのIT投資に重点を置く、ことが必要である。人材の不足やミスマッチの解消は、チャレンジと失敗を教育と考えた上での人材育成を行っていくことにあると思う、この頃である。

 

ナレッジ・インサイト 知的資産創造

特集:日本の電機産業復活に向けて

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