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2つのクラウド ~知的資産創造 9月号巻頭言~

執行役員 立松 博史

2017/11/06

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IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)の普及により、インターネットは社会、産業界に革命的な変化をもたらしている。リアルの世界のあらゆるモノがインターネットにつながって情報がオンラインでやり取りされるようになる。その結果として、デジタルではない製品や身体も対象として、企業や人間のさまざまな経験が「コト」となって、インターネットにつながり、情報がやり取りされるようになってきている。

 

モノのサービス化による新しい価値の提供

 

第四次産業革命といわれる現在、特に注目しなければならないのは、IoTの普及により、単なる情報のやり取りにとどまらず、あらゆるモノがインターネットにつながり、モノとコトが連携して新しい価値を生み出し始めたという点である。

ユーザー情報が無意識のうちに各種デバイス(モノ)から吸い上げられ、AI(人工知能)などによって分析された結果が再びモノの側に戻り、ユーザーに新しい経験(コト)を提供することが可能となってきている。これによって、さまざまな産業でモノのサービス化が進展してきている。建設機械メーカーのコマツが、自社の建設機械のセンサー情報を基に、機械の稼働状況のデータを蓄積・分析することで予防保全やメンテナンスサービスを提供して、顧客のライフサイクルコストを削減させている例がよく知られているように、BtoB、BtoCそれぞれの領域でモノのサービス化による新しい価値の提供が始まっている。

 

IoTの普及で注目される2つのクラウド

 

このような環境変化に対して、2つのクラウドに注目する必要がある。2つのクラウドとは、「クラウド・コンピューティング」と「クラウド・ファンディング」である。クラウド・コンピューティングとはITインフラのCloud(雲)化であり、モノのサービス化を促進している。インターネットに接続できるブラウザさえあれば、すべてのコンピュータ機能を利用可能とする環境が整い始めている。ユーザーは自前でITインフラを構築する必要がなく、ネットワーク上に存在するサーバーが提供するサービスを、使いたい時に使いたい分だけ利用料を支払って調達するだけで、その環境を実現することが可能となっている。IoTを活用して、どんな製品やサービスを提供するかなどビジネスの発想力さえあれば事業の創造が容易となり、さまざまなモノのサービス化が進展する。

 

クラウド・ファンディングとは、企業や個人がインターネットを通じて、不特定多数の人々や組織(Crowd:群衆)から資金を調達する手法である。クラウド・ファンディングの発祥の地は米国であるが、2012年に米国でJOBS(Jump start Out Business Startups)法(新規事業活性化法)が成立して以後、投資資金のインターネット上での調達が容易となったため、急速に市場拡大している。主にスタートアップ企業や中小事業者に対して、個人および機関投資家から多くの投資資金が流れ込み始めている。

 

日本でも、11年の東日本大震災を契機に寄付を募るプロジェクトから、クラウド・ファンディングの形態への認知が進んできた。15年から段階的に法改正が進められ、新規・成長企業の非上場株式や、不動産などの実物資産に対してインターネットを通じて投資マネーを集めることが容易になってきている。中でも注目しているのは、17年5月末に不動産特定共同事業法の改正案が国会で可決され、20年までに不動産投資市場を倍増させるべく、インターネットを通じた不動産金融商品の投資型クラウド・ファン ディングが解禁されたことである。

 

これまで不動産投資といえば、REITなどの上場されている不動産金融商品に限定されていたが、クラウド・ファンディングの利用解禁により、高い成長性や事業の継続性を前提としない不動産に対して投資資金の流入を可能とするパスができることとなる。具体的には、古民家再生や新規のスタジアム建設などの短期プロジェクトで、地域活性化のために地域で新たな産業創出するようなケースや、美術館・博物館、学校などの公共的資産を、地域における重要性を維持しながら次世代への継承を目的とするケースに対して、投資家の資金投下が可能になることである。

 

デジタル革命の時代を生き抜くために

 

経営の三要素である「ヒト・モノ・カネ」がクラウド・コンピューティングとクラウド・ファンディングという2つのクラウドで代替できるようになり、すべて自前で持つ必要がなくなってきた。デジタル革命による「モノのサービス化」が進展する事業環境を理解した上で、卓越したアイデアを生み出せるかどうかが極めて重要になってきている。2つのクラウドが拡大していく中でビジネス創出のあり方が変わってきた。多くの大企業においても、傑出したアイデアを生み出せる個人と同じ土俵で戦っていかなければならない。デジタルが生み出すモノのサービス化の考え方の枠組みを見直さなければならない時代がすぐそこまできている。

 

ナレッジ・インサイト 知的資産創造

特集:第四次産業革命の最新動向と日系製造業のIoT対応の課題

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