アナリティクスを企業の競争優位性の源泉に――成果を出す2つのポイント――
#経営
2018/02/28
「アナリティクス」というキーワードが、企業の注目を集めています。かつては「ビッグデータ」というキーワードに代表されるように、世の中に活用可能な大量データが存在すること自体に注目が集まりました。現在では、企業の関心は、そうした大量データを「経営にどう役立てるか」という点に移っています。野村総合研究所(NRI)で、アナリティクスを活用した企業の競争力強化を推進する名取滋樹に、成果を導き出すためのポイントを聞きました。
データを基に意思決定の質を高める
「アナリティクス」は、様々なデータを用いることで、企業の経営、事業、業務など、幅広い領域で行われる意思決定の質を高める取り組みです。
例えば、あるインフラ産業の会社では、設備のセンサーデータを活用することで、従来以上に、実際の稼働状態に適した設備投資の判断を行えるようになりました。この意思決定の高度化は、お客様への安定したサービス提供と、コストの適正化の両面に貢献しています。また、ある消費者向けサービスの会社では、膨大なデータを活用することで、お店に来店したお客様に、最適な商品・サービスをお薦めするだけでなく、お客様が抱えるお悩みに対して先回りの提案を行い、不満の解消と満足度の向上を実現しています。
アナリティクスは、他にも業務の生産性向上、人材の適正配置、リスクの予測など、様々な目的で用いることが可能です。
「まずはやってみよう」が可能に
アナリティクスへの注目度が高まっている背景の1つとして、アナリティクスが多くの企業にとって取り組みやすいものになったことが挙げられます。
企業が活用できるデータの選択肢は、飛躍的に増えましたし、分析ツールについては、RやPythonなどオープンソースの科学計算言語を用いることで、コストをかけずに最新のアルゴリズムを活用することも可能になりました。分析基盤については、従量課金制のクラウドサービスを活用することで、初期投資を抑えながら、大量データの処理が可能な分析環境を準備することもできます。
テクノロジーの進歩に伴って「まずはやってみよう」が現実的に可能になったことが、最近の大きな変化だと思います。
成果を上げるためには① ~活用シナリオの具体化~
アナリティクスは、正しく実行することで企業の競争力を高めることができますが、進め方を誤ると、失敗が起きやすい特性も持っています。あるアンケート調査の結果では、データ活用に取り組んだ企業の約4割が、期待した効果は得られなかったと回答しました。
アナリティクスで成果を挙げるためのポイントは、2つあります。1つは、データ活用のシナリオを具体的に描くことです。最近では、企業が活用できるデータの選択肢が拡がったため、それらを整理・統合するところから検討を始めるケースが多いですが、最終的に重要なことは、それを使って何を実現するかです。経営の課題から紐解いて、データ活用の目的とシナリオを、検討の早いタイミングから具体的にしておくことが重要です。
成果を上げるためには② ~中核人材の育成~
もう1つのポイントは、自社のアナリティクスを担う中核人材の育成を、検討の初期段階から計画的に進めていくことです。
一般的に、アナリティクスには、ビジネス、データサイエンス、エンジニアリングという3つのスキルセットが必要と言われています。これらを全て兼ね備える人材は、非常に稀有なのですが、中核人材にはそれが必要です。
個別のスキルに優れた人材の調達は、比較的容易に行えますが、自社のビジネスにまで精通した人材を獲得することは簡単ではありません。過去の経験から、お薦めしやすい進め方は、アナリティクスに関するPoC(Proof of Concept:概念検証)を始める際に、ビジネスに関する視野が広く、数字や統計に苦手意識のない中核人材の候補を参画させ、実際の活動を通じて専門性を伸ばしていく方法です。
検討チームの組成に関しては、アナリティクスは、幅広い専門性が求められるため、過度な自前主義も丸投げも好ましくありません。1つ1つのステップを進めながら、データ活用に関するノウハウや風土を組織として蓄積、浸透させていくことが、将来の競争力の源泉につながっていくと思います。
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