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国民参加による地方鉄道の維持・再生の可能性

NRI社会情報システム 社長 高田 伸朗

2018/03/14

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全国各地に存在する地方鉄道や第三セクター鉄道の多くは、沿線人口の減少に伴い通勤・通学輸送需要だけでは事業を維持していけず、存亡の危機に直面しています。沿線外からの観光客の輸送で生き残りを目指す事業者もありますが、全ての鉄道会社が観光鉄道を目指すわけにはいきません。また地方鉄道の多くは、かつては大手民鉄の系列下で様々な支援を受けていましたが、今日でその系列を離れ、独自で事業を維持していかねばならない状況に直面しています。

 

特色を出し、生き残りを図る地方鉄道・第三セクター鉄道

 

このような中、沿線自治体や公営企業・第三セクター企業などが土地や施設などの資産を保有し、それを民間会社や第三セクターが借り受けるなどして運行・運営を行う上下分離方式を導入する事例が増えてきています。

上下分離方式の多くは自治体等が税金を投入して鉄道の維持を図っていますが、鉄道の維持に強い関心を持つ鉄道ファンや市民が参画する事例も見られます。

 

いすみ鉄道

 

千葉県の房総半島の中央部を走るいすみ鉄道(大原・上総中野間26.8km)は、旧国鉄木原線を国鉄分割民営化の際に第三セクター化した路線。第三セクターとして出発したものの、赤字経営が続いていたため、社長が一般公募され、2009年に就任した鳥塚社長のもと、事業再建が進められています。

2010年には、JR西日本で使用していた国鉄型ディーゼルカーのキハ52-125を購入し、2011年4月から観光急行列車として運転を開始。「いすみ鉄道沿線の里山の中で昭和の国鉄時代のシーンを再現し、観光資源として地域の活性化に貢献し、また鉄道文化遺産として後世に伝えていきたい」という思いが込められています。春には菜の花や桜が咲くのどかな里山風景を背景に走る旧国鉄車両は いわゆる「乗り鉄」「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンを数多く集めることに成功しました。

また、いすみ鉄道では、「昭和の国鉄形気動車オーナー・サポーター」制度を開始しています。これは、年間5千円、5万円、50万円を寄付することによりオーナー・サポーターとなり、それぞれ特典を受けることができる制度です。鉄道ファンをつなぎ留め、リピーターを増やす効果が見込まれます。

 

しかし、いすみ鉄道の取り組みにもさまざまな課題が残ります。旧国鉄型気動車は老朽化が進んでおり、いつまで維持していけるかが予想できません。また沿線に集まる「撮り鉄」は、必ずしも同社の売上収入に繋がらない。今後は、地元自治体等と連携し、地域活性化にどのように繋げていくかも重要になってくると考えられます。

 

 

大井川鐡道

 

静岡県の中部、東海道本線の金谷駅から大井川に沿って北上し、井川駅までの65.0kmを結ぶ大井川鐡道は、もともとは大井川のダム建設の資材運搬用に建設された路線です。ダム建設が終了し、貨物輸送がなくなった同社では、1976年(昭和51年)からSL(蒸気機関車)の動態保存を開始し、現在、4輌(りょう)のSLが稼働しています。

今日では全国各地にSL列車を運行する鉄道が存在しますが、大井川鐡道はその草分けであるとともに、SLが牽引する客車がかつて国鉄で使用されていた旧型客車であることが特徴です。そして、SLや旧型客車の一部は、公益財団法人日本ナショナルトラストが保有していることも特徴のひとつです。

 

公益財団法人日本ナショナルトラストは、国民的財産である美しい自然景観や貴重な文化財・歴史的環境を国民自身が寄付や贈与で保全、利活用しながら後世に継承していくことを目的として1968年に設立。白川郷の合掌造り民家や、旧安田楠雄邸庭園や駒井家住宅などの歴史的建造物も所有し、公開している。同財団のホームページでは、「日本初、市民参加によって保存されたSL列車と歴史的客車」と謳っています。

 

大井川に沿った山間を走る同鉄道は、地域住民の通勤・通学需要は極めて少なく、SL列車という観光資源を創出し、鉄道事業を維持してきました。SL列車の人気は維持しているようですが、車齢90年近くになることから、いつまで継続できるかが大きな課題です。またSLや旧型客車以外にも、大手私鉄から譲渡された旧型電車など産業遺産として価値を有する車両も存在しますが、いずれも寿命を迎えつつあります。旧型車両の魅力で観光客を集め、鉄道事業を維持していくという事業モデルを今後も継続していけるかどうかが課題と考えられます。

 

 

「昭和レトロ」を一過性のブームではなく、国民参加型の「産業文化財」に

 

来年予定されている皇太子殿下即位に伴う改元により「平成」の時代が終了するため、その前の時代である「昭和」は遠い過去になりつつあります。しかし一方で、「昭和レトロ」がブームのひとつになってきています。今回紹介した2社は、昭和レトロを追求し、集客に成功しました。鉄道車両の寿命は一般に30年から40年と言われていますが、国鉄の分割民営化から30年を経た現在、旧国鉄時代に運転されていた車両はほぼ姿を消しています。時間的も金銭的にも余裕が出てきた中高年の鉄道ファンにとって、残された昭和テイストの車両や駅舎、沿線風景等に強い関心を持つ者は少なくないはずです。

鉄道に限らず、日本の経済発展を支えてきた産業文化遺産が数多く存在します。しかし、今、その多くは、保存されることなく消えつつあります。人口減少に向かう中、社会コストを下げて貴重な産業文化遺産を保存・維持していくためにも、税金投入にゆだねるだけではなく、国民がさまざまな形で関わっていくことが重要です。そのためには、国民が積極的に参加できるような仕組みづくりが必要であると考えられます。

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