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CX(顧客経験価値)の施策を成功させる鍵

コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパル 十文字 考志

2018/04/11

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「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」が企業の注目を集め、多くの業界で顧客戦略・顧客接点の大改革への挑戦が始まっています。CXとは、商品やサービスを通じて顧客が経験する心理的・感情的な価値を指します。従来のCS(顧客満足度)やCRM(顧客関係マネジメント)の施策を土台としながら、CX推進活動では、潜在的意識も含めた顧客の満足度を高めることを目指していきます。CX施策のポイントについて、入社以来、マーケティング関連の仕事に携わってきた野村総合研究所(NRI)の十文字考志は、「徹底的なお客さま目線でデザインし、合理的な満足度の向上だけではなく『ファン』をつくることが大事」と語ります。

CX重視の背景にある3つのトレンド

――CXの定義と、それが重視されている背景について教えてください

CXとは、「商品やサービスの物理的価値(機能や性能など)だけではなく、(商品やサービスの)消費や使用を通じた経験価値を訴求する」というマーケティングコンセプトです。徹底的に顧客目線での提供価値を行うことであり、日本風に言えば「おもてなし」です。それが今、注目されている理由は3つあると思います。

第1に、商品やサービスがコモディティ化し物理的価値で差がつけにくくなったこと。第2に、例えば製造業がサービスにも力を入れ、モノの販売後のサービスでも稼ぐことに挑戦しているように、今までよりも長い期間、顧客と寄り添うようになってきたこと。第3に、スマホなどデバイスの普及とビッグデータやAI(人工知能)など技術発展により、今までは提供できなかったサービスが可能になってきたこと。その結果、何をすれば顧客が満足して継続利用し、ほかの人にも紹介してもらえるのか、本格的に考えようとする企業が増えているのです。

顧客を観察し、掘り下げて考える

――従来の顧客関係の施策との違いは?

CX推進活動は、顧客が気付いていない領域も含めた経験を提供することを目指します。米国の金融業の利用客が「街中にあるATMを検索するサービスが使いににくい」という不満をCXで解決した例で説明してみましょう。
従来のCS向上策であれば、その検索サービスを向上させ、ATMの場所を探しやすくします。
そこからもう一段顧客の観察とそれに基づく考察を深めていくと、利用客がATMの場所を探すという行動は、そもそもATMに行くことが目的ではなく、送金がしたい、決済がしたいなどの本来の目的があるわけです。それならば、検索サービスの改善よりも、ATMに行かなくてもよくなるサービスを考えたほうがいい。そこで、スマホ決済などの新サービスの解決策に発展させました。そこまで考えるのがCXで、顧客の顕在的な声に対応するだけでなく、潜在的な声、そもそもの本当の目的、を顧客の観察等も通じて把握する。声を伝えた顧客自身も気付かなかった真のニーズに刺さる解決策の提供を目指します。

顧客の潜在的なニーズの探索に役立つのが「STPD」というフレームワークです。まず顧客を徹底的に観察し(See)、熟考する(Think)。その後で、計画(Plan)や行動(Do)に移ります。一般的なPDCAのプロセスの「Plan」の前に「S」「T」が入ります。顧客の期待を知り、期待を応える/超える体験を提供してこそ、感動を与えられるのです。

自社のカスタマーエクスペリエンスの定義はあるか?概念ベースで広がるカスタマーエクスペリエンス(CX)。自社の定義、顧客のゴール、そのために誰が何をするか、明確にすることが必要。

顧客定義と実行面に難しさがある

――CX推進のプロジェクトでは、どのようなハードルに直面しますか。

多くの企業が最初につまずくのが、「See」と「Think」のアクションです。まず、価値を提供する顧客の定義が難しい。対象を全員とするのか、セグメント分けをするのか、分ける場合も目に見えない属性も含め、どのような単位で捉えるか等、考える要素が多くあります。顧客接点を担う社員1人1人にCXの考え方や各人が何をすべきかを理解してもらい、日々の業務の中で実践するという意識を持ってもらうところも大変です。意識づけが終了し、いざ実践となっても、CX向上のためのどこまで社員にサービス提供の自由度を許すのか、つまり、どこまでがマニュアル通りで、どこからは臨機応変にやるのかという線引きが難しいのです。権限、評価制度、KPI(Key performance Indicator:重要業績評価指標)なども含めた戦略の設計が求められるのです。

「Plan」「Do」の部分はITの仕組みに落ちることが多いのですが、顧客を徹底的に観察して考えたとしても施策の効果に対する不確実性が残るため、社内の大規模な情報システムの改変に踏み切れないこともよくあります。企業としては、「顧客満足を多少犠牲にしてでも、目先の収益の方が大切だ」とする考えが根強くある中で、どこまでCX重視に舵を切れるかが問われるのです。

CXは全社レベルで取り組むもの

――そうした困難を打破するために、コンサルティング時には何か工夫をしていますか。

恐らく、ほとんどの企業が何かしらの形でCX活動の推進、STPDの要素に含まれる活動を行っています。企業の様々な部門で、様々な形で取り組みがされている。それらを土台としながら、様々な関係者が共通の戦略・目標に基づき、一貫して顧客に経験を提供することを目指します。現状取り組まれている活動の洗い出しも行いながら、関係者が集まって考え、議論する場を必ずつくります。また、企業の1人1人が日々の業務で実践することも必要になるため、「CXとは何か」「その企業における定義」「自分が何をすべきか」「どうやれば顧客の期待を超えられるか」を学ぶ研修等も行ったりします。情報システムによる解決策を提供する場合、PoC(Proof of Concept: 概念実証)やアジャイル型開発などの手法も取り入れています。スマホのアプリなどで簡単な顧客インターフェースをつくって、実際に試しながら発展させていくのですが、大掛かりなシステムに手をつけずに、実務に活かせるヒントが得られるのでお勧めです。顧客理解からシステム構築まで幅広い知見が必要になるため、コンサルティングやソリューション、IT基盤系の本部で混成チームをつくって、NRIの総合力を駆使することも増えています。

――最後に、CXプロジェクトの肝はどこにあるとお考えですか。

CX推進活動は、一部の業界や部門だけの話でも、理論を学んでカスタマージャーニー・マップ※1を描くという部分的な活動でもありません。顧客に何を提供し、どのような状態になってもらいたいのか。そのために各担当者が何をするのか。どこを変えていくのか。社員が共通の認識を持った上で、全社が一丸となって自社のCXを定義し、企業全体で進めていくことが重要です。

STPDのプロセスを関係者全員が共有・実践し、組織運営にCX推進を連動させる。誰もがCXを意識することが当たり前になっている。そんな状態になってほしいと思っています。

  • 1 カスタマージャーニー・マップ: 企画や事業などを立ち上げる際に、あらかじめ設定した想定顧客の動きを1枚で可視化したもの

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。
新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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