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触らない「空中ディスプレイ」に何ができるか――日本サッカーミュージアムに設置された空中ディスプレイから見る未来

IT基盤事業推進部 濱辺 徹

#イノベーション

2018/06/15

日本のサッカー文化発展と選手育成を目指して活動を続ける日本サッカー協会(以下、JFA)。野村総合研究所(NRI)は以前より、情報システムを通じてJFAを支援してきました。その一つに、2018年3月に日本サッカーミュージアムに設置された空中ディスプレイシステムがあります。VR技術の先端でもある空中ディスプレイは一体何ができ、これからどう進化していくのか、3D技術の専門家であるNRIの濱辺徹に聞きました。

 

映画の世界が現実に

 

すっと手を上げると、空間にいくつもの画面が現れ、それらに手をかざしてササっと操作する。そのような光景を、SF映画では何度か目にしているかと思います。こうした映画の世界を体験できる場所が実際にあります。そうした場所の一つが、東京都・文京区にある日本サッカーミュージアムです。

入口を入ると、あたかも空中に浮いているかのようなディスプレイが表示され、閲覧者がそこに手をかざして動かすと、ミュージアム内の展示の一部をさまざまな方向から見ることができます。

 

この仕組みを開発し提供しているのがNRIです。担当の濱辺徹は、3D技術や仮想環境の表現について、30年にわたり研究を続けてきた専門家です。

「2016年は『VR元年』とも言われ、世の中ではVirtual Reality(VR)やAugmented Reality (AR)が話題になりましたが、空中ディスプレイはようやく実用化が始まってきたところです。いち早く先進的な空中ディスプレイを設置することで、日本サッカーミュージアムへの注目を集め、より認知を高める一助になればと思いました。多くの人に日本サッカーミュージアムで実際に空中ディスプレイを体験いただきたいですね」

 

NRIは、JFAが実施している「夢の教室」に対してITによる支援を行っています。また、2015年には、JFAのID統合管理基盤「JFA ID」システムと、選手・審判・指導者などの資格情報を管理する「KICKOFF」システムを開発。「JFA ID」はプロの選手だけでなく、サッカークラブの子どもやファンも登録でき、サッカーに関わる全ての人をつなげることができます。

 

 

スマートフォンもゴーグルも不要の空中ディスプレイ

 

空中ディスプレイは、最近世の中で話題のVRやARを表現するデバイスの一つです。

VRとは、コンピュータ上に作られた3次元の仮想空間のことです。専用のゴーグルを通して見ることで、仮想空間の世界を、あたかも現実であるかのように体感できます。ゲームやアトラクション、トレーニングシミュレーターなどで使われています。

ARは、実在する風景にバーチャルな視覚情報を重ねて表示することです。スマートフォンを路上にかざすとゲームのキャラクターが現れる、室内にかざすと家具を置いたイメージを見ることができる、などがよく知られている例です。

 

「専用ゴーグルを使ったVRは、ゴーグルを通した空間しか見られません。ですが空中ディスプレイは、ある程度の装置が置ける場所があれば、どこにでも置くことができます。これからの時代に広く活用されるものになるはずです。だからこそNRIは、空中ディスプレイの実用に向けた実験的な試みを続けています」と濱辺は言います。

 

駅の掲示板や美術館の展示など、用途はさまざま

 

何もない空間上に立体物を表示させる空中ディスプレイは、VRやARはもちろん、センシング技術など多様な技術を必要とします。現在世界中で研究開発が進められており、レーザーを使う、煙に映し出すなど、方法もさまざまです。

「NRIが取り組んでいるのは、反射ミラーが埋め込まれたガラス板に画像を透過させて映し出す方法です。この方法は、他の手法より安価に実現することができます」

 

ただし、空中ディスプレイは開発しようと思ってもすぐにできるものではない、と濱辺は話します。

「センサーのコントロールが非常に難しいからです。手を動かし、指が入り、その指が抜ける瞬間に反応する、など、ディスプレイを操作する動作は細かく分けられます。センサーから得られる情報を計測・数値化するセンシングのアルゴリズムによって空中ディスプレイは実現しているのですが、それには膨大の経験値が必要なのです」

 

すでにNRI社内では、講演会などで使われるプロンプターや、データセンターの入退館操作に空中ディスプレイが活用されています。

「空中ディスプレイのメリットは、物理的にモニターが存在しないため障害物になりません。また、タッチパネルのように人が直接触れる必要がないため、接触による機械の故障も避けられます。手で触らないので衛生的で、指紋を取られることもありません。いずれは、病院など衛生面で気をつかう施設での案内板や、美術館、博物館などにおける展示物を邪魔しない説明パネル、会議室のモニター、電車内の広告、駅の掲示板など、多様な用途に活用できると考えています」

 

次の時代に来る新しいものを、先進的な技術を使って実現することで、子どもたちに関心を持ってもらえたら――。そんな想いが日本サッカーミュージアムの空中ディスプレイシステムには込められています。

 

 

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