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DX成功のカギは経営者の目線の高さ

常務執行役員 システムコンサルティング事業本部長 嵯峨野 文彦

2018/07/02

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デジタルトランスフォーメーション(DX:デジタル技術を活用したビジネスモデル変革)への期待が高まっている。実際に、ビジネスモデル変革のためのアクションを起こした企業も多い。DXの中身も、経営管理や調達・生産・物流といった業務プロセスの変革のみならず、デジタル技術を活用して販売・マーケティング活動や商品・サービスそのものを変革する領域に進化しつつある。

PoC疲れを克服し、DX達成目標の目線を引き上げる

野村総合研究所(NRI)が実施した「ユーザー企業のIT活用実態調査(2017年)」(以後、「IT活用実態調査」)によると、商品・サービスや販売・マーケティング領域までDXをうまく活用している企業ほど、業績(当期利益率)が良いとの結果が出ている。
しかし、実際に各企業でDXを推進しようとすると、そこには技術、人材、社内協業体制、意思決定スピードや挑戦することに対する企業文化といった多くの壁が存在することに気付かされる。中でも最も打破しにくい壁が「組織改革に向けてのベクトル作り」ではないかと思う。とりわけ、一定の成果を上げている主力事業体から見ると、組織改革というのは短期的な収益を犠牲にしたり過去の事業の否定につながったりするため、反対意見が出やすい。また本格的なDXであるほど中長期的な改革となるため、単年度での成果が実感されにくい。そこで改革を進めるために「小さく始める」ことや「利用者(社内ユーザー)にメリットが感じられる工夫をする」ことが必要になるのだが、その結果が「いろいろやったがまとまった成果にならない」「評価されにくい」「社内調整負荷が高い」といった「PoC(Proof ofConcept:コンセプトの検証)疲れ」になっている点も否めない。
こうした課題を克服して、成果が現れるDXを推進するためのポイントは、DXの目指す姿を部門の目標達成にとどまらせるのではなく、社会的な課題の解決など目線を大きく上に引き上げることである。少なくとも、自社のDXを通じて得られた成果を享受するのは、「お客様」にすべきである。「社会全体」であれば、なお良い。このようにDX達成目標の目線を引き上げ、会社のビジョン・方向性とのベクトル合わせを行うのは、まさにCEOの役割にほかならない。
一方で、目線を上げるとともに、DX推進の機軸をブレイクダウンする必要がある。たとえば、当社にとってのデジタルとは「顧客との距離を縮めること」など。このキーワードをうまく作ることができれば、現場の活動がまとまりやすくなる。こうしたキーワード作りを担うのが、CDO(Chief Digital Officer)やCTO(ChiefTechnology Officer)、CIO(Chief InformationOfficer)である。

経営者自らがデジタルに十分な時間を割き、DX投資の眼力を磨く

冒頭でも述べたように、デジタル化の時代には、従来の情報化に比べて商品・サービスの付加価値向上など事業の根幹にかかわるテーマを扱うため、これまで以上に経営者のリーダーシップが問われる。しかし日本の経営者は、依然としてIT活用について提案を決済するというかかわり方が多く、自らIT活用の戦略を指示する経営者は少数派にとどまる。DXに関する投資は未知の領域に踏み込むことなので、机上で悩んでいても解は見えてこないことが多い。その意味で、システム更改にまつわるような通常のIT投資ではなく、DX投資をむしろ新規事業投資に近いものとして検討すべきであると考える。適切な事業規模や事業方針を決めた上で、まずは実行しなくてはならない。そして、失敗と成功を積み重ねてゴールに向かうことだ。まさにDXの推進には、経営者のリーダーシップが必要になるということのゆえんである。そのためには、経営者がDXのことを吟味する時間を十分にとらなくてはならない。

しかし、日本の経営者は欧米の経営者に比べて、デジタルに費やす時間が少ないとの調査結果も上がっている。マサチューセッツ工科大学(MIT)が2015年に欧米を中心とした有力企業に対して実施した調査(“CIO Digital Disruption Survey”)によると、経営会議(Executive Committee)がデジタルに時間を割く割合は28%であったのに対し、日本の売上高上位企業を対象としたNRIの「IT活用実態調査」では、日本企業の経営会議がデジタルに時間を割く割合は5%に過ぎなかった。この差は非常に大きいと思われる。

日本の経営者も、自社の常識だけにとらわれず、見る目を肥やすためアンテナを高く張る必要がある。そのためにも、今以上にデジタルを考えることに費やす時間を増やさなくてはならないだろう。
今の時代、経営者のビジョンを実現するためのキーワードとして位置づけられるのがDXである。カイゼンや技術発ではない、経営ビジョンを実現する「デジタル戦略」としてのDXが必要なのだ。経営トップの眼力と胆力が試されているのである。 (さがのふみひこ)

(知的資産創造5月号 MESSAGE)

ナレッジ・インサイト 知的資産創造

特集:デジタル時代に向けた企業マネジメント

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