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NRI トップ NRI JOURNAL 成果を出すためのオープンイノベーションとは?

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成果を出すためのオープンイノベーションとは?

コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパル 徳重 剛

#経営

#イノベーション

2018/07/23

IoT、AIなどデジタル技術の進化が著しいなか、新たな競争力を得るために、大企業とベンチャー企業が手を組む「オープンイノベーション」が活発化しています。しかし、シナジーを生み出し、ビジネスで成功する例は多くありません。さまざまな企業の連携プロジェクトを支援してきた野村総合研究所(NRI)の徳重剛が、オープンイノベーションの課題と解決策を紹介します。

 

オープンイノベーションの成功に立ちはだかる壁

 

最近、デジタル分野における大企業とベンチャー企業の連携が急増しています。デジタル技術の進化が激しいなか、新たなビジネスを立ち上げたり自社の業務高度化を図るためには、自社開発が難しい機能を、スピード感をもって実現させることが重要になってきているためです。ただし、連携を進めるプロセスには、7つの壁があると感じています(下図参照)。図の上部は経営層の役割とそれに立ちはだかる壁を記載しており、一番大きな課題は「①ベンチャー企業との連携の必要性を理解していない」ことです。経営層が十分に納得していないと、いざ連携を進めるときに頓挫する原因となります。私がお客さまのプロジェクトにかかわる際には、まず経営層にこれらの役割を理解していただくよう、働きかけることがよくあります。現場に対し、企業としての目指す姿をトップ自らの言葉で伝えて、初めてプロジェクトを進める体制が整うのです。

下図の④~⑦はプロジェクトを実際に推進する現場が苦労する壁になります。そのなかで「⑤連携先との契約、知的財産権の交渉」においては様々な問題が発生しやすいポイントです。例えば、ベンチャー企業が持っているAIに大企業の持つ膨大なデータで学習させ、優秀なAIができたとします。その際に、「この優秀なAIは誰のものか」という知的財産権の争いが起こることがあります。この壁を乗り越えるためには、協業検討の初期段階からきちんとした交渉や契約を行う必要があります。このような多くの壁を乗り越え、事業シナジーを生み出している成功事例はまだ多くはありません。

 

 

シリコンバレーの形だけの模倣から脱却を

 

日本でも、シリコンバレーのようにベンチャー企業から提案を募るアクセラレーション・プログラムが開催されていますが、成功例が少ないのが現状です。その原因はどこにあるのでしょうか。

 

プレゼンテーションの場を見てみると、「服装はカジュアルで」「交流しながらピザを食べる」といったシリコンバレーのお作法を模倣しているものの、結果として事業化はおろか、PoC(実証実験)にすらたどり着かずに終わってしまうことがよくあります。これは大企業側が「今回はマッチングがうまくいかなかった」と終わらせてしまいがちだからです。本気で取り組みたいテーマなら、今回だめでも次に何を行えばよいか、と考えるはずです。また、実際に連携を進める際にも、「何を実現させたいのか」「どういったプロセスが必要なのか」という戦略が足りていないことがあります。私たち日本人はWHYよりHOWから考える癖がついているため、シリコンバレーに学ぶ際にも、細かな方法論にばかり目が行きがちです。もっとWHYから発想する必要があります。

 

演繹(えんえき)・帰納の両アプローチを組み合わせる

 

プロセスを推進する際には、演繹(えんえき)的アプローチと帰納的アプローチが考えられます。市場ニーズを確認し、潜在マーケットと課題を見極め、実現可能なビジネスモデルを考えるという三段論法的な方法をとるのが演繹的アプローチ。これに対して、たとえば、「地域支援サービスをわが社と一緒にできるベンチャー企業、集まれ」と多数のアイデアを集め、そのなかから1つの結論を導くのが帰納的アプローチです。

 

シリコンバレーでは帰納的アプローチが多く使われ、次々と斬新なアイデアが生み出されます。これに対し、多くの日本の大企業は「確からしさ」がないと物事を進めにくいのが実情です。それゆえ、シリコンバレーばりの帰納的アプローチだけでなく、演繹法的アプローチも組み合わせていくことが大切です。

 

付随的なリソースが用意できないことがボトルネックにも

 

大企業がビッグデータを、ベンチャー企業がAIを提供するという仕組みができ、それらを合わせたユーザーテストを行う段階において、インターフェース設計やシステム・インテグレーションが手軽にできない、といった問題がよく起こります。こうした付随的なリソースが用意できない問題は、大企業とベンチャー企業が連携を進めるうえで、盲点となりがちなボトルネックといえます。それが原因で、プロジェクトが頓挫してしまうのはとても残念なことです。

 

この種の問題解決はNRIが得意とするところであり、お手伝いできることが多いのではないかと考えています。大企業とベンチャー企業の協業案ができたところで、例えばインターフェース設計やシステム・インテグレーションを手軽に実装可能なプレーヤーを巻き込みながら、高速PoC(実証実験)を回していく。これはコンサルティング・ファームでありながら、システム・インテグレータでもあるNRIだからこそ実現できるイノベーション推進なのです。特にデジタル分野でこのようなイノベーション推進の実績を積み重ねています。

 

大企業とベンチャー企業によるオープンイノベーションは、結果を出すまであと少しのところまで来ているという実感があります。今後も多数の成功事例が出てくるように全力で支援したいと思っています。

 

 

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。

新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。

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