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ロイヤリティ・マーケティングの実践

ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン Vice President 中根 理史

2018/08/02

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日本では、多様な業界の企業がポイントプログラムを使ったマーケティング活動を展開しています。しかし、ポイントを付与しても、継続的にリピートし、ブランドに愛着をもってくれるロイヤルカスタマー化につながらないという課題も見えてきました。顧客のロイヤリティ向上について、どのような考え方をすればいいのか。日本で初めて、ロイヤリティ・マーケティングに特化した事業を展開するブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパンの中根理史に聞きました。

 

日本でポイントプログラムが普及した背景

日本では、100円購入したら誰にでも一律・平等に1ポイント付与するタイプのポイントプログラムが多用されてきましたが、そこには2つの要因があると思います。

1つ目は、文化的背景です。多民族国家であるアメリカでは、人はそれぞれ違うことが当たり前だと考えるのに対し、単一民族の日本では、みんな平等に扱われるべきだという意識が根強くあります。それでも、一部の百貨店や老舗専門店などでは、従来からお得意さまを区別して優遇し「囲い込み」を行っていましたが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの大手チェーンストアオペレーション企業がリーダーシップを発揮するようになって以降、業界全体でみると、全般的な傾向として、お客様を平等に扱うようになりました。

2つ目は、時代背景です。日本でポイントプログラムが本格的に普及し始めたのは1990年代以降。ちょうどバブル崩壊の時期と重なります。景気が低迷し、消費者の購買意欲が低下するなかで、「ポイント=値引き」という見せ方でお得感を演出し、継続利用を促す目的で導入されました。それで一定の効果が出たことから、顧客囲い込みの定番施策として広く普及したのです。

ロイヤリティプログラムの本質は「カスタマーエクスペリエンスの向上」

一方、ロイヤリティ・マーケティングとは、自社に愛着を抱き、かつ、利益貢献してくれるロイヤルカスタマーを育成し維持するための活動です。その活動の中心であるロイヤリティプログラムでは、ポイントはあくまでも顧客の“自発性” ――「より良い体験ができるなら、継続的に利用しよう!」という思いを引き出すツールとして利用します。単に1ポイント=1円として値引きを提供していくのではなく、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客経験価値)の向上を念頭に置き、値引き以外の方法も駆使しながら、顧客との関係を深めていきます。ロイヤリティプログラムは、一律の値引きではなく「ロイヤルカスタマーへのお礼」として、ロイヤルカスタマーにはより良いCXを提供するという考え方なのです。

たとえば、アメリカのレンタカー大手のHertzでは、会員顧客が事前に車の予約をしておけば、空港にあるカウンターの行列に並んで手続きをする必要がなくなります。そのままパーキングエリアに進み、用意されている車に荷物を積んで、すぐに出発をすることができます。Hertzの顧客の多くは、ビジネス目的でレンタカーを利用しており、特に時間を重視しています。そのため、Hertzは値引きよりもレンタル手続きの待ち時間を取り除く形で、CXの向上を図ったのです。それに満足した会員顧客は、Hertzを選び続けるようになるというわけです。

ロイヤリティプログラムの要諦

具体的にプログラムを検討する時には、顧客視点が最も重要ですが、事業視点で考えることも大切です。顧客が求めているからといって、ブランドの意義に合わないものや高コストの特典をむやみに提供すれば、マーケティングROI(投資利益率)は低下してしまいます。そのため、コストを極力抑えながら、ロイヤルカスタマーが望むCXを提供するように設計することや、カスタマージャーニー(顧客が製品を購入するまでの過程)の中で、顧客の行動を望ましい形に変容させていくように設計することが重要なのです。

会員がカウンターに並ばずに利用できるというHertzの優遇策には、追加コストはかかりません。他にも、ホテルの客室アップグレードや、航空会社の特典航空券なども、空いている資産をうまく活用し、コストをかけずにCXを向上しています。

また、アメリカのゲーム専門小売のGameStopでは、ゲーム愛好家が喜ぶ特製フィギュアや限定グッズなど、愛好家にとっては、1ポイント=1円換算をした際に、それ以上の価値になるモノを特典として用意し、CXを向上しています。さらに、特筆されるのが、自社にとって利益率の高い中古品ビジネスに顧客を誘導していくために、顧客がGameStopで中古品を売買することに対してインセンティブを提供しており、それによりカスタマージャーニーの中で顧客の行動変容を促すことに成功しています。

エクスペリエンスの質で顧客の心を捉える

最近は、複数企業にまたがって使える「共通ポイント」を取り入れる企業が増えています。企業によっては独自ポイントに加えて共通ポイントも付与するなど、値引き競争の様相が強くなってきました。もちろん、それには一定の集客効果はあると思います。しかし、お客様は本当の意味で自社に愛着を持って利用してくれていると言えるでしょうか。

大切なのは、ポイントや値引きが目当てではなく、望ましい体験ができるから自社の商品やサービスを利用したいと思う顧客を増やすことです。カスタマージャーニー全体を通じて、いかに「エクスペリエンス」の質を高めるかが、ロイヤリティ・マーケティングの本質です。そのためには、自社にとってのロイヤルカスタマー像を見極め、お客様が何を自社に求めているのかを心理面まで含めて理解し、適切なエクスペリエンスを提供することが欠かせません。そうしたマーケティングに軸足を移そうとする企業を、私たちはご支援していきたいと思っています。

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