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デジタル資本主義がもたらす3つの変化

アナリティクス事業部長 石綿 昌平

#イノベーション

#DX

2018/09/11

長く続いた産業資本主義に代わり、これからは「デジタル資本主義」の時代になると言われています。従来と根本的に何が変わり、企業や働く人たちにどんな意識転換が迫られるのか。その具体的な内容は「NRI未来創発フォーラム2018」のパネルディスカッション「デジタルトランスフォーメーション時代に日本企業がとるべき事業戦略とは」で討論される予定です。ここではパネリストの一人である野村総合研究所(NRI)の石綿昌平が、デジタル資本主義がもたらす大きな変化を3つ紹介します。

所有から利用、そして効用へ

デジタル化の進展によって、資本主義のあり方が大きく変わろうとしています。産業革命以来続いてきた産業資本主義から、今後は「デジタル資本主義」に移っていく、その変化に合わせて、社会やビジネスのあり方を変える「デジタルトランスフォーメーション」が求められているとNRIはとらえています。

そもそもデジタル資本主義とは何なのでしょうか。ICT分野のコンサルタントであり、多様な産業のデジタル変革を支援しているNRIの石綿昌平は、デジタル資本主義の本質を「モノからコトへの変化、所有から利用そして効用へ」としたうえで、次のように説明します。

「モノをたくさん作って消費者にたくさん売って所有してもらうために、企業は生産や販売をいかに効率化するか。この考え方で成り立っていたのが産業資本主義でした。これに対して、モノをいかに消費者に心地よく利用して、満足し価値を感じてもらうか、そのための効率的な環境づくりを目指すことがデジタル資本主義だととらえています」

具体的にはどういうことでしょうか。産業資本主義の象徴的なモノである自動車を例にとってみましょう。

「消費者が自動車を所有する大きな目的は、移動のためです。自分が好きな時に好きな場所に好きな目的で移動するためです。これまではマイカーが最も利便性の高い移動手段だったのですが、移動することだけを考えればマイカーでなくとも、タクシーやレンタカー、最近ならカーシェアリングやUberなど、さまざま選択肢があります。この先、EVが進化してくれば、パーソナルモビリティなどさらに利便性の高い選択肢は増えるでしょう。そうなると消費者にとっては、マイカーを所有することよりも、移動する際に早く行けるのかとか楽しく行けるのか、といったその時々のニーズが満たされることの方が重要になります。こうなると、モノは心地よい体験を売るためのパーツでしかなくなり、企業にとっては消費者にコトを提供することの方がより重要なビジネスになるのです」

サブスクリプションという新しいプラットフォームの形

デジタル資本主義の時代には、企業のビジネスの仕方が随分と変わっていくことになりそうです。やはり自動車を例に、石綿は考え方のポイントを次のように話します。

「企業は、お客さまに自動車というモノを売るのではなく、移動によって、もしくは、移動の中で消費者がどのような価値を得たいかを考えた上で最適な手段を最適なタイミングで提供しなくてはなりません。突然の雨にぬれないように移動したいのか、家族の思い出を作りたいのか、それらを充足するのは本当に今の自動車なのか。所有から利用そして効用への変化によって、従来のモノを売ってきたビジネスを見直し、お客さまのどんな課題に何を提供するのか、再定義していく。そのサイクルを常に繰り返すことが、これからの企業には必要になると思います」

「一方で、消費者はあふれる情報と移ろうニーズから、何が最適な移動の組み合わせかの判断は困難になります。今後、企業はこれらをカスタマイズするプラットフォームとなると同時に、消費者に常に接し続けられるビジネスモデルが求められる。その答えのひとつが、現在様々な分野で登場しているサブスクリプションモデルでしょう」

働く人は専門能力ではなく「常に変わり続けられるか」が重要

デジタル資本主義の特徴は「変化し続けるように変化する」ことです。そもそもデジタル技術の本質は、いろいろなものを簡単に組み合わせたり、素早く調整したりできることにあります。「サービスもビジネスも、どんどん変えられるし変わっていく。社会は変わり続けることが常態になる」と石綿は述べます。

そのような社会では、私たちにも大きな意識変革が求められます。デジタル資本主義の時代の働く人の心構えについて、最後に石綿は付け加えます。

「従来は、学校で専門知識や技術を学び、就職したら専門性を生かして働き、定年でリタイアする、という3つステージがありました。しかし、デジタル資本主義になると、あまりに変化が早いため、常に学び続けなければなりません。専門性がすぐに役立たなくなってしまうからです」

企業の雇用も専門性や能力を見込んだ採用から、その会社のビジョンに合わせて「変わり続けられる人材」を求める形に変わっていくと予想されます。

デジタル資本主義の時代に企業やビジネスはどのように変化すればよいのか、ビジネスの主役となるプラットフォームとはどのようなものか、具体的な内容は「NRI未来創発フォーラム2018」のパネルディスカッション「デジタルトランスフォーメーション時代に日本企業がとるべき事業戦略とは」で討論される予定です。

パネルディスカッションのモデレーターを務める小谷真生子氏からのメッセージ

小谷真生子氏

私たちの日々の生活に欠かせないものとなったデジタル。進化するデジタル技術は私たちの生活はもちろん、企業の経済活動をも大きく変えています。「NRI未来創発フォーラム」では、2017年から3カ年シリーズで、「デジタルが拓く近未来」をテーマに、進化を加速するデジタルが近い将来のビジネスをいかに変えるか、その近未来像を紹介しています。昨年の「デジタルで変える日本の未来」に続き、今年は「デジタルが変える産業の未来」を掲げています。私がモデレーターを務めるパネルディスカッションでは、「アナリティクス」、「運輸業」、「製造業」、「不動産業」等を専門とするNRIさんの4人のコンサルタントとともに、現在デジタルがビジネスをどう変えているのか、そして、近い未来にデジタルは世界のビジネスをどう変えて行くのか、その姿を紹介します。「えっ?この分野で、こんなことが起きるの?」と、とても刺激的な内容で、私も今から楽しみにしています。

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お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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