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木内登英の経済の潮流――国際貿易体制の展望と日本の役割

金融ITイノベーション事業本部  エグゼクティブ・エコノミスト  木内 登英

2018/10/12

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18年9月に開かれた日米首脳会談では、両国が関税率の変更を含む貿易協議を正式に始めることで合意しました。米国政府が長らく要求してきた2国間の貿易交渉を、日本政府はいよいよ拒否することができなくなったのです。

日米貿易交渉の焦点は自動車と農産物

日米貿易交渉で米国政府は、輸入牛肉や農産物の関税率引き下げと、自動車の対米輸出の削減を日本に強く求めてくると予想されます。政治的にセンシティブな農産物の関税率大幅な引き下げを回避するために、日本政府は自動車で米国側に譲歩することを余儀なくされる可能性があります。
米国政府は、日本の対米自動車輸出削減をするために、現地生産の拡大や輸出数量の自主規制を日本に求めてくる可能性があります。その結果、仮に日本からの対米自動車輸出が半減することになれば、日本のGDPを直接的に0.5%押し下げると試算されます。波及効果も考慮に入れれば、日本経済にはかなりの逆風となります。

懸念される国際貿易体制の弱体化

米国政府は自国第一主義を標榜して、貿易政策ではこのように2国間交渉の枠組みのもと相手国に強硬姿勢で臨んでいます。世界経済がひとたび悪化に転じれば、こうした内向き姿勢は他の国々にも広がる可能性があるでしょう。保護主義傾向を強めた大国が、2国間交渉を通じて自国に都合の良い条件を相手国に押し付けていくような流れが広まれば、第2次世界大戦後の貿易自由化の流れは根本から崩れてしまうでしょう。戦前のように再びブロック経済化が生じ、それが世界の貿易と経済活動に甚大な悪影響を与える可能性もあります。
このように世界の自由貿易体制は、今まさに岐路に立たされています。こうした時期にこそ、世界は、再び自由貿易体制の重要性、世界経済全体にとってのメリットを再確認する必要があります。その際に、日本が果たすべき役割は小さくありません。

日本にはTPP拡大を推進する役割

日本に期待される重要な役割は、日本が主導しているTPP(環太平洋パートナーシップ)協定を一段と拡大させ、それを軸として自由貿易体制を再構築していくことではないでしょうか。英国、タイ、インドネシア、コロンビアなど、TPPの新規加盟に前向きな国が増えています。巨大地域統合であるTPPの加盟国がさらに増加していけば、それは世界でブロック経済化を食い止める防波堤ともなるでしょう。
また、TPPの加盟国数が増えるほど、そこに加盟しない国が加盟国向けに輸出をする際の競争条件が悪化することから、それが新規の加盟国をさらに増やすという効果も期待できます。さらに、米国にとってもTPPに加盟しないことのデメリットが着実に大きくなっていくことから、米国を再びTPPに加盟させ、多国間での自由貿易体制へと呼び戻すことも、将来的には可能となるかもしれません。
米国の保護貿易主義は、現在、世界の自由貿易体制にとって大きな脅威となっていますが、そうした逆境を撥ねつける形で、日本がTPPの拡大に向けてコーディネーターとしての力量を発揮していけば、大幅に後退してしまった戦後の自由貿易体制の理念を、再び取り戻すことも可能となるのではないでしょうか。
当面の対米交渉では防戦を余儀なくされそうですが、そうした強い気概を持って、日本政府には今後、中長期の視点から様々な貿易交渉に取り組んでいってほしいと思います。

木内登英の近著

トランプ貿易戦争 日本を揺るがす米中衝突

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妥協なき報復合戦が自由貿易体制を突き崩す

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