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働き方改革とデジタルワークプレイス

NRI コーポレートイノベーション部 プリンシパル 黒崎浩

#経営

#働き方改革

#HRM戦略策定

#デジタルワークプレイス

2018/10/26

働き方改革は、労働時間(残業時間)の短縮、労働生産性の向上など企業目線で語られることが多く、「働かせ方改革だ」といった皮肉な意見まであります。それよりも「従業員の経験価値(Employee Experience)」を中心に置いた職場環境を目指すべきだと、野村総合研究所(NRI)は考えます。企業の経営管理制度の構築や「働き方改革」の設計・運用を支援する黒崎浩に、今後の改革で重視すべき点について聞きました。

 

効率性を追求する改革が踊り場に

――「働き方改革」に取り組んできた企業は今、どのような課題を抱えていますか。

黒崎浩

改革は当初、「早く帰宅せよ」と号令をかけ、残業時間を減らす取り組みから始まりました。さらに、無駄な仕事の削減や、ロボットを使った自動化などに着手し、それなりに成果が出始めています。ところが、ここにきて「業務の効率化が果たして改革のゴールなのか」「削減した分の時間でより創造的な仕事をしようと口先では言うが具体性が伴っていない」という声が聞かれるようになりました。今後の働き方改革をどう進めるかを考え直す段階にあると思います。

そこで提案したいのが、働き方改革の目標を、「従業員経験価値(Employee Experience:EX)」の向上、つまり従業員が会社・仕事を通じて体験する価値の向上に置いて職場環境を整備することです。人事の領域ではここ数年、EXが高い職場には優秀な人材が集まり、高いパフォーマンスを発揮し、長く働き続けるとして、EXに着目する動きがありました。一方、従来の働き方改革では、個々人の時間管理を強化して生産性を高めようとする中で、従業員満足や経験価値が犠牲になることもあったのです。

デジタルを活用し、新しい働き方の舞台をつくる

――相反する側面がある中で、なぜ従業員経験価値(EX)と「働き方改革」を結び付けようと思ったのですか。

働き方改革に取り組む企業の中には、生産性や効率性だけではなく、もう少し社員のモチベーションなども考慮すべきだという考え方があること。それから、アメリカなどで最近よく聞かれるようになった「デジタルワークプレイス」という概念でも、EXが中心に置かれています。新しい働き方を考えていく際に、このデジタルワークプレイスの概念を取り入れられないかと思ったのです。

――デジタルワークプレイスと言うと、便利なIT機器を揃えてコミュニケーションの協働を促すスペースづくりというイメージがありますが。

そうした物理的なアイテムばかりが注目されますが、デジタルワークプレイスはもっと広い概念です。ITだけでなく、従業員の成功・達成を支援するパフォーマンス・マネジメント、常に業務を変革していくことをめでる価値観、カルチャーを醸成・変革する施策もデジタルワークプレイスを構成すると考えることが大切です。従業員が良い経験価値を得ながら働ける「舞台」としてデジタルワークプレイスを捉えれば、働き方改革の文脈で、さまざまな施策を総合的に展開できるのではないかと考えています。

従業員経験価値(EX)と効率性を両立させるストーリー

――デジタルワークプレイスの中心に来るEXを最終目標に設定した場合、これまでの施策と何が変わりますか。

一言で言うと、施策の広がりが違ってきます。たとえば、生産性向上だけを目標に置く場合、付加価値の低い仕事をなくして、ロボットに置き換えればいいのですが、EXを高めようとすると、それだけでは終わりません。従業員により挑戦的な仕事を与えて、達成感や成長実感が得られるようにするには、管理職(マネジャー)の役割が重要になり、大勢の部下を抱えるマネジャーほど仕事の負荷が増えます。労働時間を短縮しようと考えているならば、マネジャーの時間を大幅に減らし、その空いた時間を部下の育成や支援に充当できたほうがいい。そのように、「誰」の仕事を効率化して時間を減らすかを考え直さなくてはなりません。

それから、通勤時間の削減のため、会社に来なくてもいい。会議は電話やテレビで行うとなると、プロセスや業績の管理方法も変更する必要があります。自由な働き方を突き詰めていくと、成果主義に近づいていきますが、そこに社員を放り込み自己責任を求めるだけではEXが損なわれる可能性があります。自分たちの目指すゴールを意識しながら、働き方改革で生まれた時間をEX施策に使うというように、ストーリーを明確にすることも大切です。

――従業員経験価値(EX)と言うと主観的で捉えどころがありません。何をもってEX向上に有効な施策と言えるのでしょうか。

それについては、各社それぞれで定義していく必要があります。たとえばNRIでは、写真やキーワードを用いてアイデアを触発しながら、自分たちにとって「実現したい場面」を語り合うワークショップを社内で試行してみました。参加者にはチームで強敵(=難しい課題)に立ち向かい、打ち勝つことに喜びを感じる傾向が見られたので、彼らのEXを実現するためには、多様な人との協業やナレッジ共有を促す仕組みがあると良いなど、今後検討すべき施策のヒントが得られました。このように社内でも実験や学習を重ねながら、デジタルワークプレイスをトータルで設計・実装してEXを高める「働き方改革」を広く提案していきたいと思っています。

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。

新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。

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お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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