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デジタルワークプレイスが拓く未来の働き方

デジタル基盤イノベーション本部 デジタルワークプレイス事業統括部長 柿木 彰

#経営

#働き方改革

#HRM戦略策定

#デジタルワークプレイス

2018/11/15

企業文化、IT、オフィス空間など物理的環境という3つの要素を組み合わせて、従業員の経験価値(Employee Experience:EX)の向上を目指す「デジタルワークプレイス(DWP)」。その実現には、働き方に対する価値観を変えて、改善サイクルを回していく必要があると、デジタルワークプレイスづくりに携わってきた野村総合研究所(NRI)の柿木彰は言います。

ピラミッド構造が成り立たない時代に

――デジタルワークプレイスという新たな場が、なぜ必要になるのでしょうか。

1つには、少子高齢化という背景があります。これまでの組織は、品質の良いものを大量に継続的に作るのに最適なピラミッド構造になっていました。トップの指示に大勢の部下が従う、トップダウンで動く組織です。ところが人口分布が変わり、人口減少と高齢化が進む今では、従来の組織は成長戦略の線上にはありません。

また、新興国が世界の工場となって安くモノをつくるようになり、先進国は差別化のためイノベーションを追求せざるを得ない状況になっています。加えて、モノがない時代からモノが溢れる時代になり、「モノからコト」へと消費者の価値観も変わってきました。

こうした変化の中で組織に求められるのは、上司が具体的な指示を出すことよりも、「新しい体験を提供するサービスはなにか」を話し合いながらアイデアをまとめ上げることに変化しています。ピラミッド構造と違い、協業し、互いに刺激し合いながら、イノベーションを生み出せる場が必要になっているのです。

最初の一歩は、働く場所と時間を自由にすること

――デジタルワークプレイスを実現するには、何から着手すべきでしょうか。

まず、働き方に対する価値観を変えることが大切です。これまでの働き方は、長時間通勤をしながら、都市部の会社に定時に出社し、決められた席に座わり、指示されたことをきっちりやる、というトップダウン方式でした。しかし、自らアイデアを出してイノベーションを起こすには、時間の余裕をつくり、いろいろなものに触れ、多様な人とのコラボレーションできる環境が必要です。

そこで、働く場所と時間を自由にすることが第1ステップとなります。たとえば、場所が離れていても、テレビ会議や大きなディスプレイで資料を共有しながら音声でやり取りすれば、打ち合わせの目的は十分に達成できます。このようにITに支えられた環境を用意すると、働く場所は社内のフリースペースでも、自宅でも、他社の人とも交流できるコワーキングスペースでも構いません。テレワークが可能になると、地方や海外でも場所を選ばずに働けるようになります。

――政府が打ち出している「地方創生」にもつながる話ですね。

そうです。テレワークの普及の先には地方のサテライトオフィスの活用が見えてきます。地方のオフィスでリラックスして新しい発想を生む機会を作れるようになる。それは地方に雇用と産業を根付かせる「地方創生」につながります。
また、移動時間が減り、新たな刺激を受け、アイデアを共有することで、新しい発想が生まれる機会が広がります。その結果、従来の同業他社や新興国企業との価格競争から抜け出し、顧客に新しい体験を提供するサービスなど、新しい価値提供のできる企業へと変革できるはずです。

最近、あちこちで再開発が進んでいますが、本社移転はデジタルワークプレイス導入の大きなチャンスです。NRIでも2年前に、横浜と東京のオフィスを一新した際に、「オープンエア」をコンセプトとしてオフィス環境やIT環境を整え、制度改革を進めてきました。まだ試行錯誤の最中ですが、実際にやってみると気付きがあり、改善策を考え始めることができます。

デジタルワークプレイスのイノベーションのサイクル

デジタルワークプレイスは1日にして成らず――改善サイクルを継続させる

――自由な働き方になると、従業員経験価値(EX)向上には良いとしても、労働時間で管理するやり方が通用しなくなりますね。

そこで重要になるのが、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定することです。各自の取り組みが成果につながっているかをチェックする。そして、問題点があれば、改善を続けるのです。たとえば、テレワークを試してみたけれども、実はペーパーレス化が遅れていて、必要な資料が入手できないなど、改善課題は必ず出てきます。デジタルワークプレイスは一度に完成するものではなく、改善サイクルを回していく必要があります。

――デジタルワークプレイスをつくる際に、多くの企業が難しさを感じるのはどんなところでしょうか。

多くの場合、組織の壁に直面します。というのは、オフィス空間や什器は総務部、ITは情報システム部、テレワークやサテライトオフィスでの勤務形態や諸制度の設定は人事部が管轄しています。各部門が個別に意思決定するので、全体の整合性がとりにくく、調整に手間がかかります。このため、従業員経験価値(EX)の向上という共通目標を中心に置き、組織間の壁を乗り越えなくてはなりません。

働く時間に余裕ができ、ワークライフバランスが向上し、従業員の満足度が向上すれば、優秀な人材が集まり、より魅力的な新サービスを創造・提供できるようになります。そのためにも、私たちはIT、オフィス環境、コンサルティングなど多様な切り口から多くの企業を支援していきたいと思っています。

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お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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