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人材流動化時代にHRテックで変わる人事戦略

コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパル 内藤 琢磨

#経営

#HRM戦略策定

2018/11/28

少子化による人手不足や高齢化が進む中で、各従業員の生産性をいかに高めるかは、多くの企業にとって人事上の重要課題となっています。「今後は人材流動化を前提に、人事戦略を見直す必要がある」と野村総合研究所(NRI)の内藤琢磨は指摘します。今後、企業は、人的資源(Human Resource:以下HR)管理や人材活用をどう変えていけばいいのでしょうか。

 

予測不能な変化に備える

――企業が重視すべきHR課題について教えてください。

少子高齢化がもたらす人材不足への対応や従業員の生産性向上などは既に言い尽くされてきた課題ですが、それ以外にも、デジタル化を中心とするテクノロジーの進展、新たなビジネスモデルの台頭それに伴う国内外の人材流動化の加速など、予測しにくい変化への対応が重要になります。

たとえば、人事領域でもテクノロジー活用(HRテック)が進み、新卒一括採用を行っている企業では、業務を効率化しようと書類審査などにAI(人工知能)を導入するところも増えています。加えて今後は、人材流動化を意識したHRテック活用を検討すべきかもしれません。海外には、人事関連のビッグデータを解析し、退職確率や予兆を突き止め、離職防止策を打っている企業などもあります。

――なぜ人材流動化が加速するのでしょうか。

ひとつには、グローバル化の影響を免れません。海外に進出すれば、現地の人材確保が必須となりますが、海外では社員が転職しながらステップアップしていくのが当たり前となっています。さらに、国内でも外資系企業が流動性の高い人材市場を前提としたグローバル基準を持ち込んでくる可能性があります。実際に、中国通信機器メーカーのHUAWEI(ファーウェイ)が以前、日本国内で新卒を含めて破格の初任給で人材募集をかけたことが話題となりました。

また、テクノロジーの進化によって、中途採用、フリーランス、アウトソーサーなど様々な外部リソースの探索や活用が容易になってきました。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)情報などを使った人材発掘、企業文化との相性を加味した求人求職マッチングなどが可能となり、精度も向上しています。

人材の外部調達コストと内部育成コストが逆転する

――そうなると、新卒者を一括採用・育成し、長く働き続けてもらう従来のHRマネジメントモデルは転換を余儀なくされますね。

実は、人材流動化が進むにつれて、適切な人材を外部から調達するコストは下がるのですが、人材の定着率が下がるため内部育成コストは上昇していきます。つまり、ある一点を超えると、外部調達と内部育成のどちらがコスト的に有利かという関係が逆転するのです。

人材市場流動化と人材調達コスト

――その結果、どんな課題が生じるのでしょうか。

たとえば、10人を採用して教育しても、会社に残るのが1人だった場合、辞めていった9人分の教育投資をどう考えればいいのか。無駄が大きいとして採用や教育方針を見直すのか、それとも、辞めていった人たちが在籍中に教育投資に見合った成果を出し、事業成長に貢献したならば、意味があったと受け止めるのか。
一方、調達コストが安いからと、外部人材のみを集めてスキル面で最適なチームを作ったとしても、そのチームが自社内で活躍するとは限りません。経済合理性やスキルの適合性だけで片付かないのが、HRマネジメントの難しさです。

ただし、業種業界によって流動化の進み具合は異なります。製薬、金融(法人向けのホールセール部門)、ITなどの業界は既に流動化がかなり進み、コストが逆転していますが、業界によっては、まだ内部育成コストのほうが低いところもあります。そうした業界では、外部人材を機動的に確保するメリットを認識しにくいのですが、遅かれ早かれ、流動化の大波は来るはずです。

グローバルに合わせたHRマネジメントへの転換が急務

――企業にはどんな変革が求められますか。

ハイポテンシャルな人材を採用し、その人材の付加価値を高めるベースとなるのが、使い古された言葉かもしれませんが「年齢や属性にとらわれない、真の実力や成果に応じた処遇を実現すること」です。必要な人材スペックに合致する人を社内外からタイムリーに調達できる体制を整備したり、人事データ、生体データ等を最大活用して組織や人材の状況を把握し、必要な施策を展開できるようにしたり、年功や保有能力で処遇するのではなく、「グローバル基準である職務・役割の大きさに応じて賃金を支払う処遇体系」に転換する必要があります。

現在の人事制度がしっかりと確立していればいるほど、こうした転換は難しいのですが、経営層や人事部門が現実に向き合い、取り組んでいかなくてはなりません。たとえば、海外の現地法人などでグローバルな経営やモノの考え方、多様性に触れさせ、変革の必要性を心から理解し実践できる人材を増やしていくことが、その一歩になるでしょう。また、働き方を大きく進化させるHRテックをうまく組み合わせれば、企業や人材の付加価値を維持・向上させ、事業競争力を強化できるはずです。私たちも従来モデルを見直し、「新しい企業と人材の関係作り」を構築するための支援をしていきたいと思っています。

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。

新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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