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“非市場戦略”巧者が生き残る時代 ~事業環境を変える新発想が海外展開の鍵に~

社会システムコンサルティング部 水之浦 啓介 駒村 和彦

2018/12/12

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国連が「持続可能な開発目標(Sustainable Strategic Goals:SDGs)」などの社会課題解決に向けた目標の合意を設定するなど、企業は利益追求だけでなく社会問題の解決にも取り組むべきだという考え方が世界的潮流となる中で、政府や市民に働きかける「非市場戦略(Nonmarket Strategy)」の重要性が増しています。米国の公共政策大学院や経営大学院では重要度を増しつつあるテーマなのですが、日本でも真剣に検討をするタイミングであると、野村総合研究所(NRI)の水之浦啓介と駒村和彦は指摘します。

 

自ら有利な環境に作り変えていく

――非市場戦略は、市場戦略とどのように違うのですか。

水之浦:企業が市場戦略を立てる際には、事業環境を分析したうえで、いかに競合に打ち勝って、自社のよりよい商品やサービスを顧客に提供するかを考えます。これに対し、戦略的意図を持って周囲に働きかけて、自社ビジネスに有利な法律やルールなどの事業環境を創り出そうというのが、非市場戦略です。

水之浦さん

駒村:従来の市場戦略では、自社を取り巻くステークホルダーとして主に顧客、競合他社、取引先(サプライヤー)などについて考えましたが、非市場戦略で働きかける対象は、政府・政治から、メディア、一般市民、NGO/NPOなどの活動団体に至る幅広いステークホルダーです。非市場戦略には、法制度、ルール、仕組みを創る、変える、味方やファンをつくるなど、自社に有利な状況をつくる「攻め」と、問題を未然に防止したり、問題が発生した時のビジネスへの影響を最小化したりする「守り」の2つの側面があるのも特徴です。

――非市場対応が不十分であると、どのような問題が起こりうるのでしょうか。

水之浦:日本企業は“真面目”なので、展開したい事業に関する法規制が未整備・曖昧だからという理由で、未開拓市場への進出を躊躇している間に、欧米や中国、韓国の企業に先を越され、競争に負けてしまうことがあります。事業展開に法整備が必要であれば、その国の政府にルールづくりを働きかけたり、JICA(国際協力機構)や経済産業省、競合他社などを巻き込んで、“技術協力”の体裁をとって日本流の仕組みを売り込むことが重要になります。環境整備は国や業界団体の領分だと考えがちですが、個社でもいろいろな働きかけが可能です。

4つの“I”を分析し、働きかける

 

駒村さん

駒村:非市場戦略をうまく実践している一例として、ネスレやスターバックスがあります。例えば、第三者機関の認証を受けて、児童労働問題に配慮しながら、カカオ豆やコーヒー豆の生産から輸入まで積極的に支援していることをアピールしていますが、こうした活動はCSR(企業の社会的責任)や広報活動の一環ではなく、経営戦略の根幹となる要素だと経営層が捉えています。その結果、調達の仕組みやプライシング(価格設定)を変える、サプライチェーン全体を巻き込むといった、より踏み込んだ動きがとれるのです。結果的に、自社のファンを増やし、ブランド力も向上し、自社商品を中長期的に差別化できる環境を整えています。

――非市場戦略の検討はどのように始めればいいのでしょうか。

駒村:市場の分析では「3C」(消費者、競合、自社)が有名ですが、非市場戦略では自社を取り巻く環境について「4I」の視点で分析すると、具体的なアクションが検討しやすくなります。最初のステップは、社会の中で自社はどういう存在であるべきかという観点で、地球温暖化、増税、賃金など自社に関係しそうな課題(Issue)を棚卸しすること。洗い出した課題を時間軸に沿って並べ、自社にとっての優先度やインパクトの大きさを分析します。次に、各課題に影響力を持つ法制度や機関(Institution)を調べます。さらに、その課題をめぐって利害関係のあるプレーヤー(Interest)を整理したうえで、影響を及ぼす対象者がどのような情報(Information)に注目するのかを検討します。以上の整理をベースに、誰と、誰に、どう働きかけるかを決めていくのです。

 

会社の中長期経営計画体系

部分的活動ではなく、全社を挙げて戦略的に取り組む

――企業は今後、どのような姿勢で非市場戦略に取り組んでいくといいと思いますか。

水之浦:SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目される中で、非市場戦略的な活動がより重視される環境が整いつつありますが、そのためにゼロから新しいことを始めなければならないわけでもありません。従来行ってきた単発のロビー活動や海外拠点での個別的、属人的な官民連携した活動、標準づくりを、企業全体として結び付け、よりインパクトの出せる働きかけにすることが求められているのです。

したがって、経営課題だという認識を持ったうえで、全体を統括する部署を決め、戦略性と目的を持って、非市場戦略の策定や推進を進めるといいでしょう。また、コンプライアンスの重視は大切ですが、グローバル環境では、状況に応じてルールや規制・仕組みを自ら作り変えていこうという「攻め」の発想を持つ必要があります。

駒村:日本は歴史的に見ても、企業の経営者が「我が国の発展に寄与する」という経営理念や社是を掲げ、それに共感する従業員が存在するなど、社会性を意識する文化が強い国だと思います。企業の継続的な成長には社会における存在意義が不可欠だとする考え方は、日本企業にはフィットしやすく、得意分野と言えます。対外的な見せ方や戦略をしっかり練り上げていくことが、成長や成功の大事なステップになります。NRIは、コンサルティング業務を通じて、企業のグローバル展開を非市場戦略の面でも支援していきたいと考えています。

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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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