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NRI トップ NRI JOURNAL 安心・安全なモビリティ社会に必要な情報セキュリティ ~進化する自動車の品質を支えるNDIAS~

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安心・安全なモビリティ社会に必要な情報セキュリティ ~進化する自動車の品質を支えるNDIAS~

NDIAS社長 橋本 幸典、副社長 松浦 雄一郎

#DX

#サイバーセキュリティ

2019/04/10

デジタル技術が進化し、多様なモノがインターネットにつながるようになった今、どの企業にとっても情報セキュリティの確保は重要事項となっています。グローバル自動車部品メーカーのデンソーと情報セキュリティを専門とするNRIセキュアの合弁会社、NDIASの橋本幸典社長と松浦雄一郎副社長に、モビリティ社会における情報セキュリティ対策の現状や新会社の目指す姿について聞きました。

必要性は理解されても、進みが遅い情報セキュリティ対策

――デジタル変革やデータ活用がよく話題になりますが、企業の情報セキュリティ対策も同時並行で検討されているのでしょうか。

橋本:情報システムの活用が進んでいる業界では、以前から「情報セキュリティは重要」と言われてきましたが、安定したシステム構築・運用が最優先で、情報セキュリティ対策はその次、という扱いになりがちでした。多くの業界に共通して情報セキュリティ対策は、情報漏洩のような問題が起こったり、新しい法規制が制定され、必要に迫られて対応するケースが多い印象です。自動車産業では、2015年の米国で発生した自動車システムへのハッキング事件を機に、一気に情報セキュリティへの関心が高まったように感じます。

松浦:自動車のセキュリティというと、これまでは事故に対する安全性の確保や車両盗難に関する対策が中心でした。しかし、カーナビゲーションや自動運転のような高度なシステムが開発され、車両に搭載されたソフトウェアがネットワークを介してアップデートされるなど、サービスの提供方法も変わる中で、遠隔による外部の攻撃から守る必要が生じています。

車のライフサイクルを通じたセキュリティ対策

――情報セキュリティ対策において、自動車特有の難しさはありますか。

松浦:例えば、金融業界であれば高性能なサーバー、高速ネットワークを用意し、強固な情報セキュリティ対策を施すことができますが、自動車は車両一台の空間内に大半の機能を搭載しなくてはなりません。それは、高速走行する中で、情報セキュリティ機能と走行制御をリアルタイムに両立させる必要があるからです。また、自動車は一度販売するとハードウエアの交換が簡単にできないので、販売前に車のライフサイクル全体を通していかに安全や品質を担保するかも問われます。私たちがNDIASを設立したのも、自動車業界向けにセキュリティの専門性を発揮する役割が必要だと考えたことが背景にあります。

橋本:デンソーとNRIセキュアは2015年度から人材交流をはじめ信頼関係を深めてきました。自動車業界は品質基準が厳しいことで有名ですが、NRIセキュアも金融業界などの厳しい要請に応えてきました。文化や価値観の面でも相性が良かったことが、NDIASの設立を後押ししました。

――NDIASではどのようなサービスを提供していますか。

橋本:現在は、車両に搭載するカーナビゲーション・システムなどに代表される、車載電子ユニット全般のセキュリティに関する脆弱性の評価診断サービスや、第三者の観点からセキュリティ対策の開発設計の妥当性を検証するセキュリティ評価業務などを行っています。情報セキュリティを企画・設計段階から確保するための方策を「セキュリティ・バイ・デザイン」と言いますが、販売後に情報セキュリティ対策を行いにくい自動車は開発段階から特に意識しなくてはなりません。

松浦:自動車の開発現場の人たちは、情報セキュリティ分野での経験がまだ浅く、どう対策を取ったらよいか戸惑いを感じています。NDIASには情報セキュリティと自動車、両分野の知見があるので、現場で困っていることを聞き出し、対応することができます。自動車のライフサイクル、独特の産業構造、サプライチェーンなど全体を俯瞰して理解したうえで適切な情報セキュリティ・サービスを提供できることは、私たちの強みになっています。

情報セキュリティはこれからの自動車の品質を支える

――NDIASの今後の展望をお聞かせください。

橋本:もともと情報セキュリティ人材は少ないのですが、自動車分野の知見を持つ人材はさらに希少なため、まずは人材育成に力を入れていきたいと思っています。エンジニア一人ひとりがモビリティ社会を支えるという自覚と、グローバルでトップクラスの自動車セキュリティ技術を持つ集団になることを目指します。

――最後に、企業は情報セキュリティ対策とどう向き合っていけばいいでしょうか。

橋本:最近は情報セキュリティに関する事故が起きたときに、大きなダメージを受けるリスクが増大しています。そのようなマイナス面への備えや保険という扱いだけではなく、消費者に安全・安心という「プラスの価値」を届ける活動として、情報セキュリティ投資を捉えていただくといいと思います。

松浦:情報セキュリティは品質の一環です。日本経済が発展してきたのも、モノづくりの品質に支えられてきたからです。今後はそれに加えて、情報への品質も求められるようになっています。企業がブランドを維持し、引き続きグローバルで戦っていくためにも、情報セキュリティは備えるべきツールであり、私たちもその支援をしていきたいと思っています。

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